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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
秋葉美月編〜女心と秋の空。幼馴染の心は夢と妄想に移ろう〜
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第37話 くるくる回っている。正せ

 天一を食べ終えて店を出ると行列が出来ていた。流石は総本店×ランチタイム。めちゃくちゃ人気だね。好きな食べ物を他の人も好きっていうのはテンションが上がる。


 行列をなぞるように裏手の駐車場に戻って行き、バイクのヘルメットを美月に渡した。


「お味に違いはありましたか?」

「天一はどこで食ってもめちゃくちゃにうまい。ただここに来るのは聖地巡りみたいなノリだね。また来よっと」


 こちらの語りをまるで子供が嬉しそうに話すのを聞いてあげているお母さんのように聞いてくれると、彼女はヘルメットを被りながら尋ねて来る。


「お次は?」

「そうさな。お次はブログ繋がりでどっか神社か寺にでも足を運ぼうかな」

「京都のことをブログで紹介みたいな感じ?」

「そうそう。でも、京都は逆に国宝が多すぎてどこに行けばわからんよな」

「ここから帰り道に向かって行こうよ」


 そう言ってくるのでスマホの地図アプリを開いて見せてやる。


「帰り方向に行くとしても、銀閣寺(東山慈照寺)、平安神宮、南禅寺、八坂神社、清水寺、伏見稲荷神社があるぞ」

「わぁ。帰り道だけで超有名なヘビーチームだね」

「この中からどこに行く?」

「祇園さんかな」


 祇園さん、八坂神社だな。


「ちなみになんで八坂神社なんだ?」

「なんとなく。どこ行っても混んでるだろうし、頭にパッと浮かんだのが祇園さん」

「インスピレーションというやつですな。流石は文豪美月様。直観力は伊達じゃない」

「しっ、ぴつぅ、するぞぉぉぉ」

「なんでお化けみたいなノリなんだよ」


 あははと笑いながら俺達はバイクに乗って白川通を南下。仁王門通を西へ向かい、東大路通から八坂神社へと向かった。


 いや、やっぱ京都の通多すぎだわ。でも、道は単純なんだけどね。




 ♢




 八坂神社の境内へと入って行く。


 本殿のある前には休日のお昼時ということもあって沢山の人で賑わいを見している。


 八坂神社は古くから祇園社と呼ばれており、美月みたいに祇園さんと呼ぶ人も多い。全国の祇園社の総本社らしい。今日はやけに総本店みたいなのに縁があるな。


 ご利益としては、厄除け・縁結び・学業成就・五穀豊穣・家内安全・商売繁盛・美容祈願と、沢山のご利益を得られるみたい。


 境内の風景をスマホでパシャパシャと撮りながら本殿のお賽銭へと近づいて行く。


 そのままついでにお参りをしようってことで、お賽銭を入れてからお参りを開始。


 姿勢を正して最初に深い礼を二回。


 胸の高さで両手を合わせて拍手を二回。


 そっと両手を合わせて心より願う。


 良い趣味が見つかりますように。


 両手を下ろして、最後に一度だけ深い礼をして終了。


 チラッと隣を見ると美月は一生懸命にお願い事をしている様子だった。


 相方がまだ願ってるが、国宝へと願いを捧げたい人達は大勢いるため、一旦避難だ。


 ササッと本殿より少しばかり離れ、人が少ないところで美月が来るのを待つ。


 ようやくとお願いが終わった美月が、キョロキョロとこちらを探している様子がわかったので手をあげると、軽く手を振り返してくれてこちらへにとてとてと駆け寄ってくれる。


「ごめんなさい。ちょっと長いことお願いしちゃった」

「なにをそんなに願ってたんだ?」


 聞くと人差し指を立てて可愛く言い放つ。


「秘密です」

「そりゃそうか。俺だって言う気ないし」

「とかなんと言って美月にだけはお願いごとを教える世津くんなのでした」

「ナレーション風であおっても言わないぞ」

「ちぇー」


 わざとらしく拗ねた顔なんかして笑い合う。


「せっかくだしおみくじでもやるか」


 視線を社務所(おみくじとかお守り売ってるところ)に向けると美月が、「いいね」と乗ってくれたので俺達は社務所に足を運ぶ。


 巫女さんへおみくじを引きたいことを伝えて2枚のおみくじをもらう。


 人が多いため、社務所から少しばかり離れて人通りの少ないところで立ち止まった。


「いくよ」

「ああ」

「「せーのっ」」


 結果は俺が末吉で美月が大吉だった。


「すげー。大吉じゃん」

「えっへん」


 大きな胸を張って今にもブラウスのボタンがはち切れそうだぞ。なんて神社で言ったらバチ当たりだから言わないでおこう。


「大吉様はなんて書いてあるんだ?」

「うんとね……」


 大体を呼んで美月が笑顔で言って来る。


「全部うまくいくって書いてある」

「そりゃ大吉様だもんな」


 良い事しか書いてないよな。


「末吉くんは?」

「なんか普通にいそうな名前で呼んでくんじゃねーよ」


 言いながら自分のくじの中身を確認する。


「まぁ微妙だ……ん?」


 おみくじを見ていると、ついつい疑問の念が出てしまった。


「どうかした?」

「これ……」


 彼女へおみくじを見せると、覗き込むように一緒におみくじを見る。


「方角のところなんか変だね」

「だろ」


 普通は西だの東だのが吉だの凶だのと書いていると思うんだけど……。


「『くるくる回っている。正せ』ってのはどういう意味だ?」

「あれじゃない。世津くんの頭がくるくるぱーだから、それを正してからまずは歩めって意味」


 この子、俺に対してはまじで容赦ないよね。


 ジト目で美月を見た後に、待人のところを差してやる。


「腐れ縁に注意だとよ」

「あたし達は腐れ縁?」

「見ようによっちゃな」

「なにを世迷い事を。あたし達は仲の良い幼馴染でしょ」

「流石は大吉様。余裕がおありで」

「おみくじはおみくじだよ。ささ、次は絵馬でも書こうよ」

「流石は大吉様。余裕がおありで」

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― 新着の感想 ―
[一言] 回しているのは誰かというと。ね。彼が正せるのかな。 そういえば、夏はそのまま、秋は名月、冬は聖夜、なんですかね。
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