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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
日常〜いつもの高校生活〜
3/100

第3話 このポジション、自分好きです、はい

「せーつー!」


 体育終わりに教室内で、夏枝、美月、聖羅の美少女三人に囲まれてうはうは状態だってのに、男臭く図太い声が聞こえてきやがる。


「デュクシ」


 キッズ御用達の効果音を放ちながら脇腹をチョップされちゃった。

 くすぐったくて笑ってしまう。


「てめ、このやろ。おれらに体育の片付け押し付けやがって」


 効果音付きで攻撃してきたのは体の大きな短髪の強面、杉並豪気すぎなみごうき

 ヤンキーみたいな見た目だけど、雨の日に捨て猫が捨てられていたら傘を置いて立ち去る系な子。信号で重そうな荷物を抱えたおばあさんがいたら余裕で助ける系な子。つまり良い子。それが杉並豪気だ。


「お前、その顔で効果音付けてくんなや」

「顔は関係ないだろ。おらおら、デュクシ、デュクシ」

「あはは! やめろってのー!」

「世津、豪気。男子2人のイチャイチャは目の毒だからやめとけ」


 ヤンキーチックのただの良い子とイチャついていると、呆れた顔をした爽やか系イケメンの友沢陽介ともざわようすけが、ため息を吐きながらやって来る。


「しっかし世津。オレらに片付け押し付けて女子達とイチャイチャとは随分だな」


 見た目だけではなく、声もイケメンの陽介は女子にモテやがる。


 背の順で、豪気が一番大きく、その次に俺、最後に陽介なんだが、その陽介ですら175センチはある。

 男子3人でつるむ時は陽介がチビポジションなんだけど、女子と並んだ瞬間あら不思議。


「え? 友沢くんって意外と大きい……(意味深)」


 だとよ。

 こんな感じで陽介の被害者がまた1人増えて行く。

 なんとも俺と豪気が当て馬にされたみたいで腹が立つ。

 でもね、イケメンで人をまとめるのが得意なリーダー的な存在ってのはやっぱりモテるんだよな、むかつくけど。


「なんだよ世津。複雑な感情が入り混じったような顔して」

「ハーレム中にヤンキーとイケメンが乱入して来て不愉快な顔だよ」

「誰がヤンキーだよ!」


 豪気の反抗に、スマホのインカメを開いて見せてやった。


「くそヤンキーじゃねぇか! 怖えよ!」


 いつものノリでケタケタ笑っていると、ため息ひとつ吐いた陽介が言ってきやがる。


「世津のお楽しみを邪魔したのは悪かったけど、オレ達への粗相の償いをしてもらわないと。ま、ランチで勘弁してやるさ」


 ヤンキー風の良い子をいじっているところで、爽やかイケメンが顔とは似つかないヤーさん発言してくるんですけど。


「はいはーい。ぼくS定ね」


 元気印の現役アイドル様の聖羅が、陽介の発言にノリノリで乗っかって来やがりましたとさ。


「学食で一番高い定食をなんで聖羅に奢らにゃならん」


 鷹ノ槻高等学校学食名物スペシャル定食。略してS定。ボリュームがスペシャルな代わりに値段もスペシャル。もう全部がスペシャルな定食。


「ぼくで緊張しない四ツ木くんが悪いんだよ。もっと緊張しろー」


 先程の手首の脈の話をしているみたい。あれは夏枝の冗談だろうに本気にしやがって。


「アイドル様が昼飯にS定なんて食べたら太るぞ」

「アイドル様はなにを食べても太らないのだ!」


 Vサインひとつ。うん、アイドルっぽいピースだね。

 彼女の容姿を確認する。

 小柄だ。

 痩せているというよりは、ダンスのレッスンで絞った身体というべきだろう見た目。身体が絞れている分、胸の部分も絞れている。


 スタイル抜群のモデル体型の夏枝を見ると、出るところは出ており、引っ込むところは引っ込んでいるので胸が大きく見える。


 美月へ視線を向けると、そりゃもう男子の夢が詰まったかのような巨乳だ。その胸が強調されて同級生なんかは目のやり場に困るだろう。


 ふたりの神スタイルを見た後、聖羅を再度確認してから肩をポンっと叩いてやる。


「世の中にはロリコンって言葉があるんだ。聖羅にも需要はあるよ」

「おいごら。どこ見て言った? どちくしょうが」

「アイドル様が汚い言葉を使ってはいけません」

「にゃは。そうだにゃ」


 いきなり語尾をコッテコテのぶりっ子キャラに設定しやがると、「みんなー」なんてライブのMCよろしく、周りにいるいつものメンバーに声をかけた。


「今日はこのイケメンのお兄さんがランチをご馳走してくれるみたいだにゃ。感謝して沢山食べようにゃ」


「「「「おおー!!!!」」」」


「おい待てや。なんでそうなんだよ」


 こちらの静止の声は虚しいかな、現場には届かない。


「わたしS定ね」

「あたしもS定」

「おれS定」

「オレもS定」


「全員S定じゃねぇかよ! ランチだけで金がぶっ飛ぶわ、ボケ!」


「S定なんて初めて」

「あたしも」

「高いもんね」

「あんなもん食うやついんの?」

「普通はおらん」


「え? 嘘でしょ? マジで奢る流れ?」


 俺の涙目の質問は、学内に響き渡るチャイムでかき消されてしまった。


 美月以外の4人は、それぞれ自分の席へと戻って行く。


 ちょっと待って。これ、本当に奢る流れなの?


 隣の席にいる美月へとアイコンタクトを送ると、眼鏡美人な柔らかい笑みを披露してくれた。


「ご馳走様です」


 本当に奢る流れみたい。うん。多分、俺の財布、耐えられない。

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