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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
夏枝七海編〜サマータイムフェイクラバー〜
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第21話 白馬の馬

 その後はメリケンパークを抜けて行き、ハーバーランドの方へとやってきた。


 メリケンパークとハーバーランドは一緒にされることが多いが、ハーバーランドは商業施設がメインのショッピング特化のエリアだ。


 ハーバーランドのumieへと自然と足を運んだ。umieは3棟の建物から構成されているめっちゃ大きなショッピングモール。


 NOTH MALLとSOUTH MALL。そしてMOSAIC。


 まずMOSAICから入って行く。


 休日の昼間だから人の数が凄い。観光客や家族連れ、カップルが多い。


 メリケンパークから1番近い商業施設ということもあり、観光地風の店も多いのが人気のポイントなのだろう。


 別に買う物なんてないんだけど、こうやって美少女とふらふら港町のショッピングモールを歩くだけでデート気分を味わえる神戸はデートに最適なんだな。


 途中、夏枝が店に展示されている可愛い服に手をかけていて欲しいのかと尋ねると、こっちを悪戯っぽい笑みで見て来て、「こういう可愛い系は好き?」なんて聞いてくるもんだから、もしかしたらカジュアルボーイッシュファッションだけではなく、可愛い系の夏枝も見られるのかと思う全力で頷いておく。すると笑いながら、「趣味じゃないかな」なんて一蹴されちゃった。


 残念。


 ま、ファッションは自分の着たい服を着るのが正解だと思っているから、俺の願望なんて敵わなくても良いか。




 ♢




「今日はありがとね」


 地元の駅まで戻って来たら、すっかり陽は落ちていた。


 随分と長い間夏枝を連れまわしてしまったみたいだ。


 それなのに嫌な顔せずお礼までいう夏枝、最高の女かよ。


「長い間連れまわしちまったな」

「なに言ってんの。そもそもはわたしのわがままなんだし」


 それに、なんてからかうような顔をして言い放ってくる。


「楽しかったし」

「間違いねぇや」


 夏枝の過去も聞けた。もちろん、彼女の昔がどうだったかなんて関係ないが、相手が過去を語ってくれるってことは、同じグループの男子だろうが、偽物の恋人だろうが、少なくとも俺を信用しているってことだろう。


 それが嬉しかった。


「家まで送るよ」


 時刻は21時過ぎ。まだ全然夜も浅い時間だが、デートは送り届けるまでがデートだもんな。


「いいよ。わたしの方まで来たら四ツ木すごい遠回りになっちゃう。それにまだ時間も全然なんだから、大丈夫」

「駅までバイクなんだ。だからそんなに時間はかからないよ」

「ほぅ」


 関心を持ったかのような声を漏らした。


「では遠慮なく」

「乗りたかった?」

「乗りたかった」

「そこは素直だな」

「わたしは素直な性格ですが?」

「そういうことにしとくか」




 ♢




「おおー!」


 バイク置き場にやって来て、俺の忍者250を見るなり夏枝が歓喜の声を出した。


 バイクに跨りエンジンをかけると、「おおー!」と夏枝の歓喜のエンジンもかかる。


「これ、被って」


 夏枝に半ヘルを渡した。


 今日は最終的に送るつもりだったから予備のヘルメットをバイクに装着していた。


 彼女は素直にヘルメットを被ったが、次にどうしたら良いかわからずにこちらに尋ねてくる。


「これってどこに乗るの?」


 その質問に、ポンポンと後部座席を叩いた。


「悪いな。あんまり二人乗りに適してないバイクなんだ。乗り心地は良くないかも」

「そんなの全然気にしないけど……。こ、こう?」


 後ろに跨った夏枝の足元を指差す。


「そこに足乗せるところがあるから、そこに足乗せてな」

「あ、ここか」


 夏枝が足を乗せたところで次の質問が入る。


「手は?」

「俺の腹に回すか?」


 冗談で言ったつもりだったため、すぐに違う指示をしようとしたところで、ガシっと腹回りをホールドされる。


 夏枝の体温が背中全体に感じ取れた。


 あ、ちょっとやばいかも……。


「これでOK?」

「いや、腹に回せって言ったけど……。その……」

「なに? 違うの?」

「……違いませんです、はい」


 今更違うって言って、この役得を解除する意味もなし。それなら、このまま彼女の温もりを感じながら夜のドライブと参ろう。


「ふふ。こんなところ美月に見られたらどうなることやら」

「いや、あいつはふざけて付き合ってるのが耐えられないだけだろ。夜道を夏枝放置の方がよっぽど怒られるわ」

「本気でそう思ってるの?」

「ん?」

「……なんでもない。ほら、いけいけ、ゴーゴー」


 話しを変えるように煽ってくる。


「俺は馬じゃないぞ」

「白馬の馬でしょ」

「ただの重複言葉じゃねーか」

「いっけー」

「ひっひーん!」


 あえて夏枝のノリに付き合って、アクセルを回し、俺達は駅から夏枝の家まで向かって行った。


 正直な話、背中に夏枝の温もりを感じて緊張してしまい、家に帰るまでの記憶がほとんどないのは秘密だ。

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