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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
夏枝七海編〜サマータイムフェイクラバー〜
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第19話 映えの写真はブレッブレ

 神戸もやっぱり都会だなぁ。


 駅を降りると高いビルに囲まれており、地元と比べると人の数は段違いである。


 だが恐れることはない。大阪で鍛え抜かれたシティボーイ感出していこう。よし。


「なんで引きつった顔してるの?」


 ざわざわとしている都会の街並みを歩いていると夏枝がくすりと笑って聞いてくる。


「シティボーイ感を出してんだよ」

「田舎感丸出しだよ?」

「うそやん」

「ほんま」


 けたけたと笑いながら、三ノ宮駅の目と鼻の先にある私鉄の方の神戸三宮駅前へとやって来る。


「うぉ」


 神戸三宮駅前の風景を見て驚いた声が出てしまった。


「どうかしたの?」


 夏枝が首を傾げてくるので、目の前の風景を指差した。


 彼女は依然としたまま首を傾げている。


「待ち合わせに適した広場だね?」

「パイ山が変わってる」

「は?」


 夏枝がジト目で見てくるのですぐさま説明してのける。


「昔は石で作られたお椀型の山があったことから、パイ山って呼ばれてたんだよ。三宮の待ち合わせといえばここだ。大阪でいうビックマンのノリ」

「ふぅん」


 あ、その目信じてない。


 同じ関西でも知らないことって多いよね。


「いつの間にリニューアルしたんだろ」


 パイ山は円盤を組み合わせたオブジェに変わっており、なんかUFO感が出ている。


「あ、本当にパイ山なんだ」


 この子、スマホで調べてるやん。まじで信じてなかったんだ。


「だったら、また三宮でデートする時はここで待ち合わせも面白いかもね」


 夏枝がスマホをしまいながら自然とそんな言葉を発してくれる。


「夏が過ぎてもデートしてくれるのか?」


 からかいの質問を投げると余裕の笑みで返されてしまう。


「虫除けスプレーお疲れ様と称してデートしてあげよう」


 流石は夏枝七海様。俺のからかいなんて通用もしない。




 ♢




 三ノ宮駅から徒歩15分程歩いて着いた場所は神戸市民憩いの場、メリケンパーク。


 神戸港にある公園で、船にまつわる展示を行う博物館や、日本を代表するホテル、神戸のランドマークである神戸ポートタワーがある。


 入園料は無料。


 様々なモニュメントや建築物を楽しみながらパーク内を南に進んで行く。パーク

内の照明も神戸らしく、めっちゃオシャレである。


 南まで進んで行くとBE KOBEのモニュメントがあった。


 真っ白く自分の身長より大きいBE KOBEの文字は、阪神淡路大震災をきっかけに生まれた、「神戸の魅力は人である」という思いを集約したもの。新しいことに挑戦する人や、気持ちを愛する神戸を誇りに思うメッセージとして広がっている。


 そんなBE KOBEは観光客にも有名な人気スポットで映えスポットのひとつだ。


「ここで写真を撮れば完全に付き合ってる感でるだろ。SNSあげるって言ってたし、ここは最高のシュチュエーションだろ?」

「確かに。ここまですれば完全にわたしは四ツ木の女だね」

「じゃ撮りますか」


 そう言ってスマホを取り出してカメラを起動したのだが、夏枝が動こうとしない。


「モデル様? ここでは不服なのでしょうか?」

「いや、ふたりで映らないと意味ないでしょ」

「……仰る通りで」


 ぷっと夏枝が我慢できずに吹き出した。


「四ツ木って結構天然?」

「待て待て。俺を天然扱いするのはまだ早いぞ」

「言い訳の準備ができた?」

「ああ。聞いてくれ」


 コホンと咳払いをしてから天然じゃない説明を始める。


「自撮り棒みたいなものも三脚みたいなものも持っていないからスマホをインカメにしないといけない。そうなるとせっかくのBE KOBEが入らないじゃないか」

「別に、腕伸ばして四ツ木とわたしが入っていたら十分でしょ」

「いやいや。せっかく来たんだからBE KOBEが入ってないと」

「そんなこだわりはいらないっての。ほらほら、誰もいないうちにさっさと撮るよ」


 夏枝が俺を引っ張って無理くりにBE KOBRのモニュメントの前へと連れて行く。


「さ、カメラマン。最高の一枚をよろしく」

「この三流カメラマン四ツ木にお任せを」


 腕を精一杯伸ばしてインカメでピントを合わせる。


 画面を見ながら夏枝がこっちに寄ってくるもんだから、彼女の香りがしてドキっとしながらシャッターを切った。


 カシャ。


 すぐにスマホの画像フォルダに入っていく写真を開いてみせる。


 そこにはブレブレの写真があった。


「こりゃ三流つうか四流だわ」

「四ツ木なだけに四流?」

「反論の余地なし」

「言い訳の準備は?」

「言い訳の余地のなし」

「潔し。じゃ、カメラマン交代」


 今度は夏枝がスマホを出して腕を伸ばす。


「流石は現役JK。自撮りの小慣れた感がすごい」

「ほらほら四ツ木。もっとこっち寄って、寄って」

「こうか」


 余裕ですよー。みたいな感じを出しつつ、ドキドキで彼女へと近づく。いや、こんな美人に近づく行為をドキドキしない男子はいないわけですよ、はい。


 カシャ。


 夏枝がスマホのシャッターを切って、すぐに写真を見せてくれる。


「……」

「……」


 ブレブレだった。


「言い訳の準備はできたか?」

「わたし撮るより撮られる側だから」

「反論の余地なし」

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