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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
夏枝七海編〜サマータイムフェイクラバー〜
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第13話 ウチのガールフレンド(偽)はやっぱりモテる

 いつメンでランチを終えると夏枝がそそくさとどこかに行ってしまった。


 別に昼休み中ずっと一緒にいなければならない規約なんかない。そもそも、毎度毎度同じメンツで昼を囲っているわけでもなし。それぞれに他の人間関係があったりするもんだから、そっちでご飯を食べる時だってある。


 ま、嫌われ者の俺の居場所ってのはここしかないんだけどね


 今日は学食を出ると自然と解散となった。


 昼休み。手持無沙汰の俺はというと、渡り廊下に設置されてある自販機でコーヒーを買い、自販機の前に設置されてあるベンチに腰かけて食後のコーヒーとしゃれこんだ。


 食後のコーヒーを楽しんだ後、渡り廊下からだと非常階段から上がった方が教室が近いため、自然とそちらから教室へ戻ることにした。


 普通の階段とは違う非常階段。外にむき出しの階段からは外の景色が見える。


 流石は駅前にある学校なだけあり、ここから電車の線路が丸見えだ。


『1年の時から好きでした!』

「お……」


 呑気に電車の線路なんか見ながら階段を上がっていると、非常階段に響き渡る告白の声に足をピタリと止めて、こっそりと上の踊り場の様子を伺う。


 あれは、同じ学年の男子生徒だな。


 相手は……。


「まぁた七海ちゃんが告られてる」

「ひょ……!」


 唐突に耳元に聞こえてきた甘ったるい声に驚いて声を上げそうになったが、なんとか手で口を押さえて声を殺した。


「聖羅、おまっ……」


 唐突に現れた聖羅はケラケラと笑っていた。


「ひょ、だって、ひょ」

「静かにしろっての」


 指を立てて口元に持って行くと、聖羅は空気を読んで俺の真似して指を立てて口元に持っていった。


 告白の様子を改めて伺うと、聖羅の言った通り、見覚えのある男子生徒からの告白を受けているのは夏枝だった。


「あいつ。めっちゃモテるな」

「そりゃあの見た目で女バスのエースなんだから、当然って言えば当然だよね」

「否定はできないな」


 ふたりして視線を告白現場に戻す。


 一生懸命に夏枝へ好きになった理由を述べている男子生徒を優しく見守る夏枝。決して途中で言葉を挟まない。男子が緊張で噛み噛みでも、夏枝は真剣な顔を崩さないまま彼の話しを聞いていた。


「七海ちゃん凄いな。もしぼくだったら途中でごめんなさいしちゃうね」


 夏枝の待ってあげているスタイルに感心する聖羅が本音を漏らす。


「ま、告白なんてされたことないからわかんないけど」

「え? 告白されたことないの?」

「ないでしょ。この見た目だよ」

「そうなんだ。意外だな。聖羅はモテると思ったよ」

「なっ……」


 聖羅は少し照れた様子を見したが、すぐに切り替えて笑いながら言ってくる。


「なになに? いつもロリだのなんだのいじってくるの、本当は好きな女子に対する男子特有のいじりなわけ?」

「いや、聖羅は普通にモテるだろ」

「ちょ、ストレートが過ぎるな、おい」

「客観的思考」

「なんだよ、それ。四ツ木くんの主観的に見た冬根聖羅様はどうなんだよ」

「普通に美少女って感じ?」

「ちょ……」


 素直な意見を言ったつもりだが、聖羅は照れてしまった。もしかしたらこの子は夏枝みたいに容姿にそこまで自信がないのかもしれない。アイドルなのにな。


「ほ、ほらほら。くだらないこと言ってないで。次は七海ちゃんのターンだよ」


 照れながらも告白現場を指差した聖羅の言う通りであった。


 男子のターンは終わりを迎え、夏枝のターンが始まる。


『ごめんなさい。わたしね、実は四ツ木と付き合っているんだ。だからこの告白は受けることはできません』


 ナチュラルに俺と付き合っていることを告げると、男子は立ち尽くしたまま、『そ、そっか、あはは』と乾いた笑いを浮かべていた。


 この場に留まるのも気まずい雰囲気になってしまった夏枝は、そのまま校舎の方へと入っていった。


 ま、それが正解だわな。


 男子生徒はまだ立ち尽くしたままだった。


「このまま上がるのも気まずいし、下から回って戻ろう」


 聖羅に言うと、コクリと頷いて一緒に非常階段を下りた。


 トントントンと気持ち早めに階段を下りて校舎へと入って行く。


「……告白かぁ」


 非常階段から校舎内に入ったところで、聖羅がしみじみと呟いた。


「学生恋愛とか憧れるな」

「アイドルは恋愛禁止なんだからそういうのは無縁じゃないのか?」

「そうだけど、やっぱ憧れはあるよぉ。かっこいい男子に告白とかされたら嬉しいし」

「アイドル様も夢見る少女なのね」


 ニタっとからかうように彼女へ言い放つ。


「告白してやろうか?」

「四ツ木くんかぁ」


 言いながら品定めをするように、まじまじと俺を見てくる。


「四ツ木くんがアイドルよりも楽しいこと教えてくれるならアリかな」

「え……」


 予想外の返事にドキっとしてしまった。こっちの顔を見て、聖羅がクスクスと笑って来る。


「みたか。さっきの仕返しじゃい!」

「んだよ。焦った」

「にゃははー。間抜けな顔だったね」


 満足気に笑い終わったあとに彼女が付け足してくる。


「でも、さっきの言葉本当だよ」

「あん?」


 キーンコーンカーンコーン。


 都合良く昼休み終了を告げるチャイムが鳴り響いた。


「あ、ほらほら。次の授業遅れちゃう。ダッシュ!」

「こらこら。廊下は走るなよ」


 聖羅のいつも通りの姿にさっきのドキドキはどこかに行っちゃった。


 ま、冗談だろうしな。

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