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第九十九話 交渉

淀城に着いたおりょう達は早速門番へ取次ぎを頼んだが、当然のように門前払いだった。

ここまでなら進之介が訪れた時と同じ対応ではあったが、その時とは一つ違った事がある。

おりょうがいることだった。

おりょうは腰に差していた十手を門番に向けると

「これに見えるは恩賜の十手、位階は正五位!十手に基づき留守居役への面会を命ずる!」

声高に叫ぶと門番が飛び退くように城内へと下がった。

しばらくすると、血相を変えた留守居役が直々にやって来たのだ。

目の前にいるのは岡っ引きで、しかも女である。

留守居役は一瞬怒鳴り散して追い返そうとしたが、手に持っている十手を見た途端表情を変えてその場に土下座した。

内心たかだか岡っ引きの、しかも小娘に平身低頭するなど我慢しがたいことではあったが、彼女が手にする十手の身分は彼等より遙かに上なのだ。

(なぜ私が岡っ引きの小娘なぞの相手をしなければならぬのだ。)

腑煮えくりかえる思いを抑えつつ留守居役は

「お役目ご苦労様です。此度はいかなるお役目で参られたのでしょうか?」

出来うる限り下手に出て分かりきったことを聞いてくるので

「もう知ってるかと思ったけど、今大坂で暴れた化け物が京に向かって来てるから、丹後守様の助勢を頼みに来たんや。」

おりょうはあえて常の口調で答えると

「左様でございますか、じ、実は先に参った大坂町奉行の者にも申したのですが、ただいま主は江戸にあって城には不在であり、私共の一存で兵を動かすことは叶いませぬ。助勢の議は平にご容赦頂きたい。」

留守居役は木で鼻をくくったような返答を返してきた。

おりょうは内心

(進之介にはまともな返答すらせんかったくせによう言うわ。)と思っていたが

「じゃあ正五位の十手より命じる。今すぐ加勢せよ。」

そう言って十手を突きつけた。 

留守居役の顔は怒りのあまり朱のようになってはいたが

「こ、これはご無体な。主に断り無く左様なことをしては咎められます。」

下を向いたままそう言い返すと、おりょうは思った通りやと内心感じながら

「ではどうしたら加勢を出してくれるんや?江戸に使い出してたら遅すぎるんやけど?」

十手を突きつけたまま問い返した。

「そ、それは・・・帝からの綸旨でも発せられますれば、我々の役目から鑑みて加勢を出すことは、主も許してくはれるかと・・・。」

留守居役はそう答えてほくそ笑んだ。

目の前の十手の権力には屈してはいるものの、岡っ引き風情にどうせ綸旨など頼めまいと高を括っての返答だったが、おりょうはニッコリ微笑むと

「わかったわ。綸旨出してもろたら動くんやね。今から出してもろうて来るから、まああんじょう準備しといてや!」

おりょうはそう言い残して淀城を辞すると

「進之介、悪いけど使いを頼まれてくれへん?」

「え、良いけど何をすれば良い?」

不思議そうな顔をする進之介に対して、その場で書き付けたものを手渡すと、

「じゃあうちは、ひとっ走りして帝に会うてくるわ!」

そう言って京を目指して走り始めた。


進之介は取るものもとりえず、馬で与力の三田のいる陣屋へ飛び込むと

「三田様!おられますか?」

「何?進之介じゃない。うるさいわね。どうしたのよ?」

「おりょうさんから言付けがあって。」

三田は手渡された書き付けに目を通すと

「あのこ一体何考えているのかしら?まあ、意味の無いことをする子じゃないのは分っているから言うとおりにしてあげるけど。」

三田はおりょうの指示通りに、東町奉行と大坂のある書肆へ使いを出した。



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