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第九十三話 お志乃の昔語りその仇

お笹が意識を戻した時、そこは暗闇の中だった。

お志乃が側に居たことと、許嫁の生首を見せられて腰を抜かしたことまでは思い出したのだが、その後自分の身に何が起きてどこに居るのか理解出来ずにいた。

身を起こそうとするも手足を縛られているのか自由は利かず、何より自身の姿すら分らない有様で、ただただ不安の中、身を置くしか無かった。

しかしその不安は恐怖へと変わるのに寸時とはかから無かった

縛られた手をそのまま何処かに吊り下げられると、一糸まとわぬ状態にされてしばらく晒されていたのだが、半刻程度晒された頃合いに、突然何かが空気を裂くような音が響いたかと思うと、お笹の裸体に焼けるような痛みが駆け抜けた。

痛みのあまりお笹は叫び声を上げたが、そのことを咎め立てるかのように何度も鞭がうなり、お笹の体を苛んでいく。

「何っ!やめて!!」最初の内は身をよじり声を上げて抵抗したが、鞭は止むことは無く更に下腹部に何かがねじ込まれ、焼き尽くすような激痛が体内を駆け抜ける

陰部に大きな張形(はりがた)がねじ込まれていたのだった。

鞭打たれ、張形をねじ込まれる責め苦が延々と続き、気を失えば冷水を浴びせられた。

途中何か食べ物らしき物が口の中に注ぎ込まれる事もあったが、責め苦は止まなかった。

お笹は心身共に疲弊させられ、声すら上げられずになり、気を失ってしまったようだった。

程なく気がつくといつの間にか床に下ろされ、手の拘束も解かれていた。

お笹がけだるそうに身を起こすと、何やら話し声が聞こえてる

老婆と男のようだったが、何を離しているかまでは良く分らなかった。

しばらくして話し声が途切れたかと思うと、いきなり目の前の戸口が開き、獣のような臭いのする黒い者が覆い被さってきたのだ。

どうも先程の話し声の主らしく、お笹を襲いかかるように陵辱し始めた。

まるで木偶人形のように乱暴に犯されている間、身をよじることくらいしか出来ぬほど心身を削られていたお笹は声すら上げずにいた。

それ程長い時を待たず解放されたお笹は、何とか身を起こして向き直ろうとした刹那、再び戸口が開いて別の男が飛びかかってきたのだ。

先程の男よりは小柄ではあったが、やはり獣のように犯された。

もう抵抗はおろか、身を起こすことすら出来ぬまま、次から次とやって来る男達の慰みものにされ続けていた。

一時、欠け茶碗に粥のような粗末なものが供されていたが、食欲など湧くはずも無く身を横たえていると程なくまた同じ事が始まり、繰返され、三度目の粥が下げられた頃、気がつけば見覚えのある場所。

初めにいた物置小屋に横たわっていた。

すぐ側にはお志乃が佇んでいた。

「ねえ、地獄を味わった気分はどう?」

そう言ってお志乃はニッコリと微笑んで見せた。

が、お笹は何の感情も示さずにいた。

瞳にはもはや生の光は無く、絶望を感じさせる虚ろなまなざしを向けているだけだった。

「もう解放してあげる。」

そう言ってお志乃がお笹の手足の拘束を解いてやると、お笹は身を起こして辺りを見回した。

目に入るのは許婚だった進三郞とその弟分の小四郎の生首と、

輪を作るように垂れ下がる荒縄だった。

翌日、お笹は縊れた姿の変わり果てた見つかった。

足下には遺書と一本の刃のこぼれた刀が残され、遺書には己が許嫁を手にかけたことが記されていた。


「お志乃殿。終わりましたか?」

烏天狗の一人から声を掛けられると

「はい、無事に。」

「それはめでたい。」

「ありがとうございます。これで心置きなく烏小僧になることが出来ます。」

お志乃は手渡された烏の面を被り、父の死の真相追究と父を陥れた者達への復讐へ歩き出したのだった。


おりょうの元を辞して祠へと戻ったお志乃は、烏小僧を名乗った時のことを思い返していた。

「私はもう人としては生きられない。生きる道を捨てた・・・ただ・・・。」

親友にも語れなかった心の闇を、友として以上に愛する人への想いと共にしまい込んだ。



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