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第八十一話 脅威

復活を遂げた剛霊武(ゴーレム)は辺りを破壊しながら北上していた。

だが、当初そのまま寺町を北へ向かい大坂城方面へと進むかと思われていたのが、途中やや西に進路を変えたかと思うと、道頓堀を目指して進み始めた。

東町奉行所は目明し達から上がってくる情報を聞いて

「不味いことになるな。何とか阻むか最悪進路をずらさせ無ければ、町が火の海になりかねんぞ!」

前線の指揮を任されている与力の大石平二郎は、苦い顔をして叫んだ。

剛霊武は道頓堀川へ到達し辺りを破壊し始めていた。

辺りには火の手が上がりはしたが、火消しが奮闘してなんとか大火にならずにはいた。

剛霊武は少しずつ動きがなめらかになっており、ぎこちなさも消えてより厄介な存在になりつつあったが、

流石に東町奉行所にその人ありと言われる大石平二郎、相手の癖を読み取って的確に対応する指示を出し、道頓堀川から心斎橋という繁華な場所の破壊を避けることが出来た。

「大石様、何とか堀の東の方へ誘導出来ました!」

「そうか、大義だったな。まだ油断は出来ぬが引き続き監視を頼む。」

「畏まりました!」

報告に来た同心は踵を返して現地へと向かった。


町の東端へ追いやられた剛霊武(ゴーレム)ではあったが、最低限の目的は果たせたようではあって

「こちらの思惑通りにはなかなか行きませんね。まあ剛霊武の力は充分示せましたし、何より『先生』の遺志を守るためにも、一旦隠れるとしましょう。」

剛霊武傍らに侍っていた平戸屋はそうつぶやいた

その後、堀の東の方へ追い出された剛霊武は、程なく平戸屋と共に忽然と姿を消したのだった。


余りに急なことだった為か、東町奉行所の面々は戸惑わずにいられなかった。

「大石様、あの化け物は退治出来たのでしょうか?」

不安げに尋ねる捕り方に対して

「そう都合良くはいくまいよ。何より倒したという手応えが無い。どういうわけかあちらさんが勝手に消えたみたいだしな。鬱陶しいことだよ。」平二郎はそう悔しげに答えた。

「大石殿あれはどうなったの?何でも急に姿を消したって聞いたけど?」

「これは三田様、面目ない話です。この平二郎一生の不覚ですよ。」

「それにしても、あんな図体デカい奴が一体何処に消えたんでしょう?やはり妖術の類いなのでしょうか?とても何かで隠せるようなものでは無いはずですが・・・。」

「進之介のいうとおりだな。うちの連中が大勢いる目の前での出来事だったから、狐にでも化かされたんじゃないかと思ったよ。」

「狐ですか?ありそうな話だけど、道頓堀界隈は焼けたところもあるでしょ?誰か騒ぎに乗じて火でも付け回った可能性は?」

「三田殿の仰ることも最もですが、あの場で火を付け回るものの姿は無かったようで、化け物の傍らに男が一人つかず離れず居ただけだと聞いております。」

「じゃあ何?本当に妖かしって事?だったらもう陰陽師の領分よ?うちらの手に余るわね。」

三田がおどけた様子でそう返すと

「とはいえ実害が出てる以上あくまでも我々の仕事ですよ。それに消えただけで退治した訳じゃありませんし。」平二郎が苦々しげに答えると

「なるほど・・・では大石様はまた現れるかも知れぬと?」

進之介は不安な表情を見せると平二郎は大きく頷いて

「進之介、まだまだ気は抜けぬぞ?我々の月番では無くなるが、何時でも出られるようにな。」

進之介を真っ直ぐに見据えた。


剛霊武の出現の報を東町奉行所から受けた肥前守は満足げだった。

「平戸屋め良くやってくれた。いよいよ次の策が打てるというものだ。」

肥前守は密かに平戸屋へ使いを遣ると、自らお忍びで城を出た。

向かう先は剛霊武が消えた場所にほど近い、人気のない東屋で平戸屋が仲間を潜ませるのに使っていた場所の一つで、以前おりょう達が探索した場所とは別の場所であり、信徒仲間が落ち合う場所でもあったが、肥前守はそこまでは知り得ず平戸屋から示されたので出向いたのだった。


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