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第七十九話 聖戦

継信は構えた独鈷杵を『先生』に投げつけると、今度は平戸屋が身を挺して守り、二本目の独鈷杵は命中しなかった。

「うーんこれはしたり、けど呪文を封じるには一本で充分。ならばこれで!」

継信は刀を抜いて飛びかかった

平戸屋仲間が落とした短銃を拾うと狙いも定めず遮二無二撃ち始めた。

出鱈目ではあるが、所構わず短銃を撃つものだから、飛びかかろうとした継信も思わず飛び退いて物陰へ身を隠した。

これには流石のお冬とお澄も辟易として

「何かむかつくわね。ああも滅茶苦茶なら、そうそう中らないとは思うけど、流れ弾に中ったらそれはそれで腹が立つ。」

「確かに。狙うなら弾を撃ち尽くした時ですね。」

確かにと言う表情を浮かべてお冬は懐から小柄を取り出した。

お冬達と継信は殊更示し合わせた訳でも無いのだが、良く連携して儀式を邪魔しようとしていたが、平戸屋が思いの外しぶとくあがきを見せて、辺りに倒れている者の短銃を片っ端からかき集めては乱射しており、あと一歩祭壇には迫りきれずにいた。

「せめておりょう様が加わって下されば。」そう呟くお澄に

「無二の親友の正体がが天下の盗人と知ってしまった上に、その彼女の命がけの行動のおかげで自分は命まで救われたのよ?女目明しと言っても二十歳そこそこの子が、平静にいられる訳無いわね。」

「確かにそうですよね・・・。」

あと一手足りない。この場に居る者達は皆感じていたのだ。

(大介殿は何をしているのだ?せめて与一殿や江三郎殿が駆けつけてくれれば・・・)

継信も平戸屋達の粘りの前に手詰まりとなっていた。

一方の平戸屋も限界が近づきつつあった。自らの気力もさることながら短銃も尽きつつあったのだ。辺りに倒れていた者の短銃はあらかた撃ち尽くしている。

 その様な中で『先生』は一心に何かを書き付けていた。

「平戸屋さん申し訳無いが、あとほんの少しだけ頑張って下さい。間もなく終わりますので。」

『先生』は緊迫感の無いいつもの調子で平戸屋に語りかけたが、平戸屋には頷くことしか出来ないほど疲弊していた。

お互い手詰まりではあったが、局面を打開したのは烏天狗だった。

「継信まだせたのう。」

大介が刀を抜きながら加勢してきたのだ。大介は江三郎と行動を共にしてはいたが、彼等が向かった先は鬼道丸と鬼徹が闘っていたが為手出しが出来ず、そうこうするうちに決着までついて出番が無かったので、江三郎は与一の加勢へと向かい、大介は祠へ一旦戻ろうとしたところで天王寺の荒れ寺の報を受けて継信の援護へとやって来たのだ。

「大介殿助かります!」

継信も力を得たように刀を構えた。

その頃には、始めに伸されていた連中も気がついて再び継信達の前に立ちはだかったが、一度倒されていた上に、人が容易に天狗に抗えようも無く、あっさり倒される者の方が多かった。

とは言え数はいるので継信達も容易には裁断には近づけない。

無論お澄やお冬も、小柄を投げたり短銃による狙撃を邪魔したりして援護はしていたが

「次から次へと湧いてくるよね?何人いるのやら。」

お冬はうんざりした表情で小柄を投げていた。

とは言うものの、おりょうやお冬と違って継信や大介は向かってくる者達を叩き伏せるだけで無く、しっかりと切り捨てていた。

それは、相手に恐怖を与え戦意を削ぐ意味合いもあったのだが

「連中には恐怖心は無いのか?切っても切っても恐れず突き進んでくる。」

「全くだの。どうも昔天草で伴天連が死をも恐れず捨て身で戦っていた事を思い出すのう。」

「確かに、一向宗徒も(たいらの)右大将相手に死に物狂いでしたな。右大将の方も情け容赦は一切ありませんでしたが。」

「どうも此奴らも同じ臭いがするの。死を恐れぬどころか喜びですらある。」

「嫌ですね。時々人のことが解らなくなります。」

「大丈夫だの。人の方もあの連中のことを理解しとりゃせんよ。」

大介はそう言って目の前の相手をまた一人と切り倒していく。

手間はかかっていたが、確実に立ちはだかる者を排除していった。

お冬やお澄達の援護と継信や大介の働きにより、とうとう目の前には平戸屋と『先生』だけとなった。

ついに平戸屋達の計画は潰え、野望は露と消えようとしていた。


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