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第六十四話 報告

「お冬かなり剣呑な話だけど、筋は確かなの?」

半信半疑だという調子のお高に

「間違いありません。以前忍び込んで斬り合いを見た時から気になっていてずっと追っておりました。」

「ずっと?」

「はい。平戸屋の事を探る過程で。お頭には真偽がはっきりするまでは黙っておりましたが、ある程度の確証も掴めたので。」

お冬は確信に満ちた表情できっぱりと答えた。

「あの日も何かを呼び出す儀式を行うために動いていたようで、平戸屋が儀式に必要な何かを別の場所へ取りに行ったのは間違いありません。」

「あの日連中が奪われた物からもそれは確かだな。」

御前はそう言って頷いた。

「はい。で、その人形(ひとがた)の件も気にはなったのですが、それ以上に平戸屋の動きが気になったので調べておりました。」

「平戸屋って確かあの日は何かを取りに行ったっきり朝まで返って来なかったんだっけ?」

「はい、あの晩は確かに烏小僧も現れてバタついては居ましたし、閉められている木戸もありましたが、天王寺からそんなに時が必要とは思えません。」

「確かに・・・。じゃあ何が起こっていたのかしら?」お高が首をかしげた

「そこで想定出来る天王寺から平戸屋の別邸までの道筋を洗ってみました。」

お冬はその時調べ上げた事を説明し始めた。

お冬は当日平戸屋を乗せた駕籠かきを探り当てていて、駕籠かきから当夜の不可解な平戸屋の動きの一端を知る事が出来たのだ。

駕籠かきは平戸屋を天王寺の荒れ寺まで運ぶと、平戸屋から門前で待つように言われたので休息がてら煙管に火を入れようとしたら休む暇も無く直ぐに寺から平戸屋が出てきて、急いで立つように言うものだから、きっと剣呑な用向きで急いでいるのかと思い、足代も弾んでも貰えるだらろうからと、張り切って帰路を急いでいると、途中で道を代えるよう言いつけられた。急ぎの筈なので正直不思議に思ったらしいが、とりあえず言うとおりにして従い街道を外れていくと程なく人寂しい場所にポツンと立つ民家へたどり着いた。気味の悪い場所にも拘わらず平戸屋はそこで駕籠を降りると、明けの少し前に迎えに来るよう言い渡してきて駕籠かきは返されたというのだ。

「その様な事があったのか。で、その駕籠かき達は?」

「気味が悪いとは思ったものの良い稼ぎにはなるので、約束通り迎えに行ったそうです。」

「で、翌朝帰ってみればと言う事なのね?」

お高の言葉に頷くとお冬は続けて

「で、ここで不思議なのは何故、あの夜平戸屋は直ぐに別邸に戻らなかったのかという事です。」

「別邸が襲われた事を知って敢えて避けたのではないのか?」

「御前の仰る事も一理ありますが、その報を知る機会は少なくともあの時の平戸屋にはありません。」

「それだと始めからその場所へ行くつもりだったということになるわね。」

「はい、なので件の民家の界隈を少し探ってみました。」

そこでお冬は、あの界隈で頭からすっぽりとかぶり物をした怪しげな連中を時々見掛けるという話耳にしたので聞き込んでいくと、姿を見掛けるようになったのはここ数ヶ月の事らしく、初めのうちは夜鷹でも買いに来ているのかと思ったらしいが肝心の女性の姿を見る事も無く、さりとて衆道と言う事でも無さそうなので、まさか切支丹では無いかと役人が乗り込んできた事もあったらしいが、変わった形の燭台の他はそれらしい物は見あたらず、神道の一派であると言う説明と平戸屋の関係者という事もあってそれ以上追求される事も無かったらしい。

「一体何者達であろうな?」

「かぶり物をした中には異人では無いかという様子の者も居たとか。」

「その事については長崎へ探索に行った者より、正規の方法で無いやり方で入ってきた異国の民がいるとの報告が上がっています。平戸屋の絡みで。」お壱が落ち着いた様子で報告を入れると

「これは捨て置く訳にはいかんな。肥前守はそこにも関与しておるのか?」

御前も困惑した様子だった。

四人の話をおりょうは聞かされていたが、理解が全く追いついてはいなかった。ただ、とてつもない何かが起きつつある事だけは何となくわかるのだった。

「お冬にはその連中の事をもう少し探ってもらうのが良さそうね。」

「御意!」

お高の言葉にお冬は短く答えると直ぐに姿を消した。

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