第二章『お前は掃除サボる中学生か。』
一人称(A《裏》)
俺の名前は中島。まぁ、みんな知ってるか。今は友達と図書室で勉強中。
「明人ー、これどういう意味か分かる?」
そう伝え俺の肩を叩くのは高杉。
「Xに代入しろ」
「なるほどなーうん」
そんな易いこといちいち聞くな、と思っても声には出さない。それが大人ってもんだよ諸君。
「世界が終わるんならさ、こんな勉強なんかやる必要なくね?」
「何言ってんだよ中島、世界が終わる確率は0.5%にも満たないんだぞ」
「うーんまぁそうだけどさー、勉強したくねーだろ? 高杉も」
「いやまぁそりゃそうだけど……世界の終焉を免罪符にすんなよ」
「はーくそったくよー」
不毛な議論が続く。永遠と。
◆
同姓のやつと同じクラスになる確率ってどんくらいなんだろ。まぁあれか。姓のマイナー度にも依存するか。渡部とかよくあるやつなら確率も高くなるし沢尻とか広末とかあんまないやつならその確率は零に等しくなってくる、か。まぁ俺は中島なわけで結構メジャー。だからこそ俺のクラスには俺含め中島2人いるしな。
「同姓のやつと同じクラスになる確率ってどんくらいだと思う? 夢斗」
「? そんなん100%に決まってんだろ、何言ってんだおめぇ」
まぁ確かに夢斗と同じ名字のやつもいるけど……100%なんてことあるか? なに言ってんだこいつ。は? は?
「まぁあれだよね、男子校でもないんだから」
「だよなー」
そんなもんなのか……。新しい発見をした、俺は。
◆
図書室を退出して帰り道につく俺たち。
「夢斗って彼女いるのかー?」
俺は夢斗にそう問いかける。奴は少し不機嫌そうな顔をし、
「いるわけねーだろアホか」
などと暴言を吐きかける。
「どうやったら彼女できるのか教えてほしいもんだぜー」
それは俺も知りたい。というかそんなもん健全な男なら皆知りたいと思うだろう。それは言わばテストの答えのようなもんだ。知ってたら100点なんて余裕でとれるというのに……。
交差点を左に曲がり、そのまま進む。ここは日本国の首都、東の京なだけあって人々の活動が盛んだ。行き交う人々の行動を制御するための信号機がそこら中に散りばめられており、赤とか青とかの
光を絶え間なく出し続けている。信号機の役割を考えれば彼らが各々好き勝手に光を出しているというわけではないだろう。周辺の仲間たちと連携をとったうえで輝いているのだ。とはいえ信号機とは利便性が高いといえば高いがそこに絶対的な制御機能が付随しているわけでもない。例えば信号無視なんてよくある話だろう。
「あれって健人?」
俺達の前を歩いている人物を指して高杉が問う。
「ん? お前あいつのこと下の名前で呼んでたっけ?」
「いやほら、明人いるし」
健人といえばあれだ、同じクラスの出席番号10番のやつでみんなと仲が良くかといって女子からめっちゃモテてるってわけでもないまぁいい奴止まりって感じのやつで身長は170センチぐらいで体重はさすがに知らんけどもthe標準体型って感じの──
──車と人がぶつかる音がした。あぁそうか、車と人がぶつかったんだ。
血が出てる。信号機は何やってるんだ、全く。仕事放棄はあかんでしょーが。お前は掃除サボる中学生か。
「おい大丈夫か健人!?」
健人。あいつが轢かれた? うめき声をあげている。すげー苦しそうだ。高杉達が駆け寄る。もう手遅れなんじゃないか? 人のいのちって尊いもんだな。
地球滅亡まであと1日