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下北沢にある事故物件の話。

作者: アカバネ2030

 入居者はすぐ決まるのに、半年経たずにみんな退去していく、その物件は業界では有名な事故物件だった。


 何も知らない人達が、毎日のようにその部屋を見たいと会社にやって来た。


 下北沢の駅から徒歩15分、家賃5万、半地下ワンルームのマンション。


 曰く付きじゃ無ければ、僕が住みたい位の物件だ。


「アカバネ、お客さん連れて下北沢の内覧行って来て」


 その物件の案内は必ず僕がやらされた、理由は簡単、一番新人で、一番若かったからだ。


 またかよ……。


 心の中で呟きながら、内覧希望のお客さんを連れて、僕は下北沢の物件に向かう。


 マンションの前でお客さんに鍵を渡し、一人で部屋の内覧をしてもらう、プロの不動産屋としては失格かもしれないが、あの部屋にまた入るのは絶対に嫌だった。


 暫くして、真っ青な顔をしたお客さんが出て来た。


「すいません、少し考えさせてください」


 またか……と思いながら「かしこまりました、人気の物件ですので、お早めにお返事ください」といつもの台詞を告げる。


 どこか足取りの重いお客さんの事を見送りながら、多分もう連絡は来ないだろうなと思う。


 このお客さんが初めてじゃない、いつもそうなのだ、霊感があるとかないとか関係なく、あの部屋は気持ち悪い、どうしようもなく気持ち悪いのだ。


 あの部屋に初めて入った時の事を思い出す。中に入った瞬間、微かに漂う腐卵臭、込み上げる吐き気、次の瞬間全身に鳥肌が立った。


 背後から誰かに見られている感じがしたからだ、振り返って回りを見渡すが誰もいない。


 もっと明るい時間に来ればよかった、そう思った瞬間ユニットバスがあるスペースから、ガタガタと音が聞こえる。


 震えで思うように動かない手を抑え込みながら、ユニットバスの扉を開くが、誰もいない……。


 漂う腐卵臭が一気にきつくなる。


 すると今度は押入れのあたりからガタガタと音が聞こえる。


 誰もいないのに感じ続ける視線。


 天井から、ドアの隙間から、クローゼットの間から、押入れの暗闇から、僕を見ている誰か。


 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、恐怖で思考が塗り潰されていく。


 目に見えない何かが、値踏みするように僕を見つめている。


 まるで動物園の動物を見るように、檻の外側から見られている感覚。


「ああああああああああああっ」


 精神を限界まで汚染された僕は、叫びながらその部屋から逃げ出した。


 世の中には事故物件と呼ばれる物件が沢山ある。


 その中でも下北沢の半地下物件は不動産屋ならだれでも知ってる本当にヤバい物件だ。


 興味本位で近づかない方がいい。


 人の命は1つしかないのだから。


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