幻想的で仄暗くて、お伽話のように残酷な異世界恋愛が書きたいです(所信表明)
初めまして、初春餅と申します。
タイトルで9割くらい語り終えましたが、本文でももうちょっと語ろうと思います。
幻想的で仄暗くて、お伽話のように残酷な異世界恋愛――言い換えれば、ランキングどころかなろうとの相性すら普通に悪そうな物語を、私は何故書きたいのか。
①幻想的でダークな物語がそもそも好き
そこはかとなく不穏で、破滅的で、美しい。そんな物語が大好きです。
タニス・リー「闇の公子」とか、辻邦生「黄昏の古都物語」とか。
「闇の公子」は、あらすじによりますと、絶大な魔力と美貌を誇る妖魔の王が夜ごと人界に遊び、無垢なものたちを誘惑して愉しむ話だそうです。
完璧ですね。あらすじの時点でもう面白いです。
行っちゃいかん方に明らかに向かってるストーリー、分かっちゃいるのに味わっちゃうハラハラ感。残酷な物語を彩る語り口は、乾いていながら蠱惑的で美しい。
「黄昏の古都物語」はパリ、ミラノ、ウィーン、ブダペスト、バルセロナを回り、行く先々で「私」が物語の「一部」となる仕掛け(最後だけ違う。そこがまた憎い)。各都市で繰り広げられる物語がそれぞれ「あ~、っぽいな~」っていう納得感があり、ダークではあるのですが、同時にポップでロックな狂気も感じます。
お値段のせいか、翻訳版は遂に2巻までしか出なかったクライヴ・バーカーの「アバラット」もいいですよね。あの美麗挿絵と本文は必ずセットでなくてはならなかったから、仕方がなかったんだと思いますが。
個性豊かで不思議な島々の設定にまず瞠目。ピンチにつぐピンチで、主人公を全然休ませてやらない容赦のなさもいい。英国人作家らしい意識的な意地の悪さが随所に光ります(ルイス・キャロル以来の伝統感)。
泉鏡花「朱日記」も妖しく美しい。和ものは独特の情緒があって良い……。小川未明も好きです。「赤い蝋燭と人魚」は必須として、「砂漠の町とサフラン酒」とか、修正の効かない因果応報感、痺れます。
きりがないのでこの辺にしておきますが、一口に「幻想的でダーク」と申しましても、ことほど左様に千差万別で色とりどりで豊かな世界が広がっているわけです。
そこにダイブしたいというのは人間の自然な欲求なのかもしれません。
私はそこに切ない恋愛をガンガン絡めていきたいです。
②幻想文学の挿絵画家たちが好き
うっとりしますよね……。
最推しはカイ・ニールセンで、「おしろいとスカート」でつかまれて以来、折に触れて愛でてます。体の線がキレイなんですよね。背景や細部に至るまで、ちょいと遊びがあるところも好きです。
他を知らないので何とも言えませんが、幻想文学の挿絵画家って層が厚いと思います。
綺羅星のようなエロール・ル・カイン、エドマンド・デュラック、アーサー・ラッカム。
皆キレイなんですけど、どことなくもの悲しさがあって、それぞれに好き。
私がちょいアラビアンナイト風の短編、「王女様に捧げる俺のすべて」を投稿した時、偶然でしょうが、感想でエロールを引き合いに出していただいて、本当にめっちゃめっちゃ嬉しかったです。
この話はあんま読まれなかったのですが、閲覧人数のうち評価をくださった方の割合が自分の中では突出して高くて、これはこれで幸せな作品だな……と思っています。
ヒロインがおめかしする時の装いは、小花模様みたいな感覚でちっちゃい星の模様が散ってるアラブ風の薄物なんですが、これはギュスターヴ・モローの「ペリ」がそういうの着てた気がして。
後で見たらペリちゃん全然そんなの着てなかった。星は普通に頭上の星だった。私はふわっとした記憶でよくこういういい加減なことをやるのですが、誰に迷惑をかけてるってこともないので、まあいいでしょう。
ちょっと話がそれましたが、この世は美しい挿絵に満ちている。
そんなめくるめく挿絵たちが私の想像力を刺激して止まないから、書くね。
③でも最後はハピエン!!!!
これは「何故書くか」というより「どういうものを書きたいのか」という話になりますが。
やっぱりラストはハピエンと思う。
ダークとハピエンって、テンプレ外作品となろう以上に相性悪そうですが、ここは譲れません。
いろいろと容赦ない目に遭わせたりはしますが、その分、最後は幸せにならなきゃ嘘だろう、と。
例:以前書いた「極甘」という中華ものでは美形公子様の首が飛びますが(死後の死体損壊なので大丈夫。痛くない)、最後は大団円。
この話は中華幻想奇譚っぽいまったり感と、二人のもだもだワチャワチャを書きたかったので、ダークは多分そこまで激しく主張してません。なろう初投稿作品ということもあり、私もまだ大人しいものです。幽界に迎えにきたヒロインが「乗せてるだけなのか⁉(※首)」ってなるシーンもやりたかったし、やれて満足。
まとめますと。
ダークは好きだけど、救いも欲しい。←欲張りセットかな?
素人は好きなものを好きに書いていいので、私はこのスタンスでいきたいと思います。
※ここから雑談です。
私は「新しい婚約破棄」とか「愛されることはないようなので軌道修正しますね」とか「多分私、婚約破棄される」とかでランキングに載ったことがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
コテコテのテンプレ書きじゃねえか、と。
違うんですよ。
私、祭りとか遊びの要素が好きで、つい血が騒ぐものですから、なろうで流行ってる婚約破棄祭りとか、お前を愛することはない祭りとか、何やら楽しそうな祭りがあったらふらっと参加してしまう。
なので、これはただ単に、テンプレを踏まえて書けば読者はつくしランキングにも載りやすい、っていうことが実証されてるだけですね(悲しい)。
現に、今連載しているダークで悲劇的でちょい耽美な異世界恋愛長編は、婚約破棄も義妹もハイスぺ虐待夫も出てきませんが、ランキングとはふつうに無縁です。
それでももし万が一、テンプレ読みたい勢が間違って読んだら気の毒なので、あらすじで数行にわたって注意喚起している親切な私です。
この話を書くにあたって読んでいる資料の中で見つけたのですが、とあるロシア皇后は「メランコリックな気分に浸りたい時」の為に、ご自分のお庭にフェイクの墓地を作らせたそうですよ。こういうどこからツッコんでいいのか分からないエピソード最高ですね。通常のアタマでは出てこない発想です。
ちょいと押したらギャグにもシュールにもどっちにも転びそうっていうか、こういうギリギリのところで楽しむ綱渡り、私も大好きです。
前述の「王女様に捧げる俺のすべて」だと、女奴隷によるヒロインの育乳マッサージとか、いまいち効果が出ないから、罰として手首を切り落とせだとか。
そういうの。そういうのです(どういうのだよ)。
なろうの片隅でこんなことやってます。
趣味嗜好が合う人に読んでもらえたら嬉しいし、「テンプレじゃないけど書きたいものがある」っていう方には、「一緒に頑張りましょう」と言いたいです。
一緒に頑張りましょう♡