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忘れじの契約  作者: 朝露ココア
4章 咎人綾錦杯
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23. 栄光の玉座

 すべての階級の玉座争奪(バトルロイヤル)が終了し、表彰式が催されることとなった。

 第二拠点(セカンドリージョン)にある巨大な中央闘技場。頭上の夜空には大会の終了を祝う花火が打ちあがり、みな浮足立ったように騒いでいる。


 普段は第二拠点(セカンドリージョン)に入らないアマチュアパフォーマーたちも、表彰式を見届けるべく闘技場の客席へやって来たようだ。

 レヴリッツは憂鬱な心持で、闘技場の席にぼんやりと座っていた。


「あっ、レヴリッツくんだー。お疲れ様です」


 彼の隣にペリシュッシュが座る。


「ペリ先輩、お疲れ様です。どうでしたか?」


「私は雑魚死です。プロ級の人たちはやっぱり強いですね。

 聞いたんですけど、レヴリッツくんも早々に退場したらしいじゃないですか。首は飛ばなかったんですか?」


「ああ、そういえば僕は負けたら首が飛ぶんでした。今回は負けたっていうか……回線落ち中に不意打ちを受けたので負け判定にはならなかったのです。

 まだ常勝無敗の戦績は破られていません。視聴者的には破られたことになってますけど」


「バトロワは奇襲ありとは言え、回線落ち中に不意打ちなんて卑怯ですなあ。こっちの事情も考えて欲しいもんですよ」


「まあ回線落ちした僕が悪いので。そもそも回線落ちに対応できないなら、最初から配信するなって話ですし」


 今日は珍しくレヴリッツがしおらしい。

 レヴリッツとしての気丈も、レヴハルトとしての毒性(どくしょう)も鳴りを潜めている。


「二人とも、ここにいたか」


 ペリが違和感を覚えたその時、リオートがやってきた。彼はレヴリッツの隣、ペリと反対側の席に座ってため息をついた。


「リオートくんもお疲れ様でした。さっき切り抜きで見たんですけど、ケビンと相打ちになるシーンがありましたよね?」


「そうっすね。ケビンが邪魔さえしてこなければ、もう少し順位を上げられたと思うんですけど……これも乱戦の定めってヤツか。

 俺的にはレヴリッツが負けたのが意外だったな」


「みんな僕の敗北に言及するね。それだけの振る舞いを今までしてきたから仕方ないけど」


 レヴリッツ・シルヴァという存在は、ハドリッツ・アルヴァを踏み越えた。

 だから敗北はこれまで以上に許されなくなる。彼はハドリッツに教えを受けたことを誇りに思い、譲り受けた技を信じているから。

 レヴリッツの敗北はハドリッツへの侮辱になり得るのだ。


「そういや、お前を奇襲して沈めた奴って誰なんだ? アマチュアにそんな実力者いたか?」


「秘密だよ。その方がおもしろいだろ?」


「……そうか?」


 事態をうやむやにしたレヴリッツに首を傾げたリオートだったが、彼の疑念はアナウンスによって消し去られる。


「お待たせいたしました。これより各階級の優勝者の表彰式を行います」


 一斉に外野が静まり返る。

 闘技場のフィールドには金銀銅三つの玉座と、CEOのエジェティル・クラーラクトが佇んでいた。

 集まったパフォーマーたちも、自分が手にできなかった栄光の玉座を羨ましそうに眺めている。


「さて、手に汗握る綾錦杯はこれにて閉幕となります。

 数多のパフォーマーを退け、栄誉を手にした三人を紹介しましょう」


 エジェティルはゆっくりと歩幅を進め、ぐるりと客席を見渡した。一瞬レヴリッツと視線が交差したものの、すぐに彼の視線は引き戻される。


「まずはアマチュア級の優勝者の入場です。

 ──ヨミ・シャドヨミ!」


 名を呼ばれた優勝者……ヨミがフィールドの端から中央まで歩いて来る。

 席の人々は彼女へと歓声を飛ばし、もちろん同じチームのOathの面々も賛辞を飛ばす。


 彼女はやや気後れしながら、銅色の玉座の横まで辿り着いた。

 そしてエジェティルが彼女へとマイクを向ける。


「それでは、優勝者のヨミ・シャドヨミよりお言葉をいただきます」


「え、えーっと……正直、私は優勝できるとは思っていませんでした。

 でも優勝できて、すごく嬉しいです! この大会で闘ったすべてのパフォーマーの皆さんの健闘を称えたいです!

 あ、ありがとうございました!」


 ヨミ個人としては思うところもある。

 レヴリッツは不意打ちで負けたと言われていたが、ヨミは彼が不意打ちなどで負けないことを知っている。事情を話してくれないレヴリッツに煮えきらない感情を覚えつつ、彼女は優勝の喜びを享受していたのだ。


 だが優勝は優勝。

 Oathの中であまり見せ場のなかった自分を、活躍して魅せられた。それだけで大きな成果だ。


 おまけにアリッサという弟子(?)も出来た。


「ありがとうございます。それでは玉座にお座りください」


 エジェティルに言われるがまま彼女は玉座に腰を下ろす。

 客席には笑顔でヨミの方を見るレヴリッツがいた。


「さて、お次はプロ級の優勝者の入場です。

 ──イルクリス・サウラ!」


 続いて入場してきたのは、プロ級では有名な男。

 黒いフードを目深に被り、時折ブロンドの髪がちらりと見える。いかにも不審者といった雰囲気だが、人気は凄まじい。

 二つ名を【烈機の吸血鬼】


 決して他人の血を吸うわけではないが、体質上日光を浴びると発作を起こすので吸血鬼の名が付いた。

 イルクリスは独壇場(スターステージ)で太陽を抹消し、猛烈な機械魔道具による攻撃で相手を仕留める戦闘スタイルを持つ。敵を一掃する様子は爽快で、視聴者からのパフォーマンス人気も高い。


 歓声の中で闘技場を進むイルクリス。

 彼は銀の玉座の横に立ち、エジェティルに会釈した。


「優勝者のイルクリス・サウラよりお言葉をいただきます」


「……ああ、そうだ。今大会は開催時刻が夜だった。

 だからこそ僕も無理に独壇場(スターステージ)を使わず、柔軟な立ち回りができたと言っていい。視聴者の声援と、闘うに足る好条件。

 あらゆる歯車が噛み合い、玉座へと至った。


 約束しよう。来年の大会も必ず、僕の機構が火を噴くと。

 銀弾を焼き、聖書を破り、太陽に粛清を。

 今回の大会で僕を知った人たちも、必ずチャンネル登録とフォローを頼んだよ」


「ありがとうございます。玉座にお座りください」


 さすがにプロ級なだけあり、ヨミのようにたじたじになることはない。

 彼はすらすらと優勝に対する喜びを語り、ついでに宣伝も済ませて玉座に座った。


「それでは最後にマスター級優勝者の入場です。

 ──レイノルド・アレーヌ!」


 最後の入場者は、仰々しい態度で歩みを進める。

 深緑の髪を揺らすその男は、覇気を纏って行進していた。見守るパフォーマーたちも割れんばかりの歓声を上げて彼を迎えた。


 二つ名を【闘技皇帝】

 バトルパフォーマーの中でも屈指の実力と人気を誇る男である。

 チャンネル登録者は400万人、栄華の道真っただ中を突き進む。


 大きくマントを揺らし、わざとらしく尊大な態度で玉座の横に立つ。


「では、優勝者のレイノルド・アレーヌよりお言葉をいただきます」


「ふむ……まずは参加したすべてのパフォーマー、声援を送った視聴者諸君……大義であった!

 勝敗にかかわらず、綾錦杯に乗せた想いはみな素晴らしいことだろう。俺が許す、盛大に互いの健闘を讃えよ。


 演説するのは好きだが、今は止めとしておこうか。

 諸君の健闘を称え、これにて結びとする」


「ありがとうございます。それでは玉座にお座りください」


「いや、俺は座らん」


 だがしかし、レイノルドは金の玉座へ腰を下ろさなかった。

 その場の誰もが目を丸くする。彼は玉座の横に立ったまま、マイクを手放さないでいた。


寿(ことぶき)を重ねるべき表彰式で言うことではないと思うが、一つ協会に苦言を呈させてもらおう」


 まさかのクレームだ。

 CEOのエジェティルへ視線を向け、レイノルドは真剣な表情で言葉を紡ぐ。いつも尊大な態度を取り、(やかま)しい彼にしては珍しい態度。


「どうやら今大会は満足のいく出来ではなかったようだ。

 バトロワの混乱に紛れ、パフォーマー諸君の命を狙う不届き者があった。マスター級のユニや、アマチュア級の筆頭格レヴリッツ・シルヴァなどが標的となり、大会を妨害されたことを述べておく。


 万が一にもパフォーマーの命が奪われることなど、あってはならない悲劇だ。今一度協会は警備の体制を見直し、パフォーマーが健全な活動をできるように心がけてもらいたい。


 万全な大会であれば、俺がこの大会で優勝することはなかったかもしれない。だから玉座には座れない。

 弛緩した雰囲気に水を差すようで悪いが、これだけは言わせてくれ」


 名指しされたレヴリッツは眉を潜める。

 レイノルドはなぜ殺し屋の乱入を知っているのだろうか。ハドリッツやカガリとの交戦は他者に見られていないはずだ。

 自分の名前が出されたことよりも、レイノルドがなぜ情報を握っているのかが気がかりだった。


 エジェティルは頷き、レイノルドの誠意ある言葉に答える。


「ああ、こちらでも不審者の侵入は確認して調査を出している。今後はこのような事態が起こらないよう、警備体制をより引き上げる所存だ。

 ……迷惑をかけたパフォーマーの方々には申し訳ない」


 彼は深々と頭を下げる。

 責任者として思うところがあるのだろう。娘のソラフィアートやレヴリッツが動いてくれなければ、犠牲者が出ていたのだから。


「仔細については後々。

 ひとまずは表彰式を続けましょう。それでは……」


 その後もエジェティル主導により表彰式は行われる。

 優勝者への賛辞の中に先程の緊迫した雰囲気は薄れていき……無事に式が終了した。


 *****


 【バトルパフォーマー】BPアマチュア総合スレ Part601【殺人未遂を許すな】


 459:名無しさん ID:ag7uRhaPa

 そもそも不審者が入ってる時点で大問題なんだよね

 協会は揉み消そうとしてるけど普通に死人が出てた案件だし

 大会で盛り上がった後にあんな事実突きつけられても冷めるわ


 460:名無しさん ID:aoC89fZXg

 ほんとに芸人とエビの気持ちを思うとやるせないわ

 普通に優勝できる二人だったのに潰されてたまったもんじゃないだろ


 464:名無しさん ID:V7eTsxmXh

 そもそも証拠ない癖にアレの言葉鵜呑みにするなよ


 477:名無しさん ID:izbJS2xtU

 >>464

 だから天丼が不審者の侵入認めてるだろ痴呆


 511:名無しさん ID:9DYYMc79h

 >>477

 その場凌ぎで言った可能性もあるだろ

 お前高い壺とか買わされてそう(笑)


 528:名無しさん ID:Em6EDUcxR

 今回のは犠牲者の有無じゃなくて不審者が入ったことが問題なんよ

 来年度以降は気軽にバトロワ開けなくなった


 531:名無しさん ID:GHgtrRx3m

 そこらの人間にやられるエビと芸人じゃないから協会からパフォーマンス止められたんだろうな

 回線落ちもわざとだろ

 

 532:名無しさん ID:VdVyLu8P5

 てかアレがエビを認知してるのが意外だった


 540:名無しさん ID:MRzs5vEhD

 >>532

 アレはめちゃくちゃアマチュアのRTしてるぞ

 エビの配信なんてパフォーマンスの度にいいねしてる

 後輩も応援する聖人なんだ


 549:名無しさん ID:CmgjHGok6

 協会はどうにか被害者Pに対する補填を考えないといけないな

 エビは昇格させてやるか


 567:名無しさん ID:VhVyPA7gu

 >>549

 優勝者は昇級内定だしたそと一緒に上げるか

 ついでに玉子も上げてやれ


 571:名無しさん ID:GeEY2H8B3

 昇格内定つってもアマだけな

 プロは優勝してもマスには程遠い


 消火器の登録者もまだマス昇級には遠いし

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