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忘れじの契約  作者: 朝露ココア
4章 咎人綾錦杯
66/105

9. 2位じゃダメなんでしょうか

 バトルターミナル、最終拠点(グランドリージョン)

 マスター級のパフォーマーが生活する領域である。


 なにゆえバトルターミナルの区画が『拠点』と称されているのか……理由はほんの一部の人間しか知らない。

 最終拠点(グランドリージョン)を端的に言い表せば、魔境だ。年に一度の玉座争奪(バトルロイヤル)が行われる際も、この区画だけは全容が明かされない。

 

 誰にも、マスター級パフォーマーの人々にも、最終拠点(グランドリージョン)の性質を完全に把握している者はいないのだ。




 最終拠点(グランドリージョン)には巨大な城が聳え立つ。

 今年もこの城の一部エリアを舞台に、マスター級パフォーマーたちが玉座争奪(バトルロイヤル)の大会を繰り広げることになる。


 さて、拠点の中に異質な領域が存在した。

 城の屋上にひっそりと広がる星空。この星空こそ、『天上麗華』ソラフィアートが住まう領域へつながるゲートだった。



 星空をくぐると、そこは美しき世界。

 眩い燐光が支配する草原。風に揺れる光のカーテン。


「やっほー、フィア!」


 桃色の髪の少女が、外部の領域より踏み入った。

 彼女の名はユニ・キュロイ。『幻狼』の二つ名を冠するマスター級パフォーマーである。


「ああ……おはよう、ユニ」


 草原の只中(ただなか)で、ソラフィアートは寝ころんでいた。

 美しい金色の髪を無造作に広げ、死んだ目で携帯を見ている。


「フィア……な、何してるの?」


「さっき起きてアンスレ見てた。ユニさぁ……動画編集めんどいからやっといてくんない?」


「やだよ、自分でやりなよ。ぼくも暇じゃないし」


 これがバトルパフォーマーの頂点の現実である。

 彼女は本当にやる気がない。とにかくやる気がないのだ。

 すべてを実現する天賦の才を持ちながらも、彼女は中々に動くことはなかった。


「そんなことよりさ、あと数日で『綾錦杯』だよ。いつもの玉座争奪(バトルロイヤル)

 もちろんフィアも参加するでしょ?」


「……私が参加してもさ、一昨年と去年みたいに無双するだけでしょ? クソゲーになるから不参加でよくない?」


「そんなことないって! 視聴者は何よりもフィアの無双を望んでるんだから」


 昨年、ソラフィアートが参戦した玉座争奪(バトルロイヤル)は阿鼻叫喚となった。

 他のマスター級パフォーマー八名が、みな手も足も出ずに負けてしまったのだ。


 仕方ないと、勝てるわけがないと……視聴者たちは負けたマスターたちを責めることすらない。それほどまでにソラフィアートの実力は他と乖離していた。


「ユニが私と同じくらい強かったらやる気出るんだけどね」


「ぐぬぬ……い、今のところは無理……」


「そーだよね。みんなそう言うよね。うんうん、わかってる。

 実際、私より強い人なんて……見たことないし」


 退屈だ。

 ソラフィアートは、あまりにも己の人生に暇を感じていた。


 乗り超えられない物が存在しない。

 誰もが人生で何らかのハードルに引っかかる中、自分だけが平坦な道を歩き続けている。彼女はそんな人生に鬱屈を感じていた。


「大会の参加は……考えておく。ユニもがんばって」


「もっちろん! 今年こそアレをぼっこぼこにしてやるんだから!」


 ユニが狙うは堂々の二位。

 ソラフィアートが一位は当然のこと。


 彼女は来たるべき大会に向け、準備を整え始めた。


 ー----


 一方その頃。

 第一拠点(ファーストリージョン)の街中では、どこか浮ついた雰囲気が広がっていた。まもなくこのバトルターミナル全体を戦場とする大会が開催されるのだ。


 もちろん店などの建築物も戦場となる。

 予め商品棚からは商品を避難させておき、壊されると困る物も全てターミナル外に搬出しておく。

 非常に大規模な玉座争奪(バトルロイヤル)の闘いは、外国からの注目度もかなり高い。この国の名物ともなりつつある大会を前に、バトルターミナルの住人たちは興奮を隠せずにいる。


「本当に祭りみたいだな。まあ、どれだけ騒いでも僕が優勝するんだけど」


「あれ? ねえレヴ、あっちは何があるの?」


「あっちは……えっと、電波塔だ。電波塔ぶっ壊したらさすがに怒られるのかな」


 レヴリッツとヨミは賑わう街中を練り歩く。

 第一拠点(ファーストリージョン)を戦場とする大会を前に、全体的な地形を把握しておこうという流れになったのだ。有利な地形を把握しておけば、それだけ優勝の可能性も高まる。


「僕は理事長への嫌がらせに、理事長室に陣を取ることにするよ。ヨミはどこで闘う?」


「んー……じゃあレヴの部屋で」


「パフォーマーの部屋だけは立ち入り禁止だ。機材とか壊されたらどうするんだよ。本当に君はルールを理解してないな……」


 アマチュア級のパフォーマーは全部で167人。

 ほとんどのパフォーマーが参加すると思われる。チーミングは禁止で、不正が発覚次第失格となる。また、パフォーマーの部屋だけは唯一立ち入り禁止。


 この大会は奇襲も許されるし、度が過ぎない器物損壊も許される。これが主なルールだ。

 しかしルールを順守しても、モラルがない行いを見せたパフォーマーは炎上するので注意。


「余程のことがない限り、レヴの優勝になるよね」


「フラグ立てないでくれる?」


 アマチュア級の中では、客観的に見ても最強なのはレヴリッツだろう。

 最近は自他ともに実力が認められつつある。FランVIPと蔑まれることはなくなったが、残念なことにエビ呼びは定着してしまった。


 賑わう雑踏(ざっとう)の中にも、知名度を上げているレヴリッツへの視線が突き刺さる。

 好奇、憧憬、軽蔑、憎悪──ポジティブな感情からネガティブな感情まで、視線に籠められた想いは様々だ。人気になるだけではなく、憎まれることもバトルパフォーマーの性なのだから。


「……」


 多くの視線の中で、ひとつ異質な感情が向けられていた。

 レヴリッツは奇妙な視線を感じた方角に振り返るが、そこに人の影はない。


「どうしたの?」


「いや、何でもない。行こうか」


 面倒なことになった。

 向けられていた視線に籠った感情、それは……殺意。


 素人が向ける憎しみではなく、達人が向ける殺気。

 あの殺気には覚えがある。嫌というほどに。


 心中で嘆息してレヴリッツは人ごみに進んだ。


 *****


 【バトルパフォーマー】BPアマチュア総合スレ Part573【綾錦杯】


 114:名無しさん ID:x4RFxvNqR

 綾錦杯まであと3日!

 みんなはどの視点見る?


 俺はぅーちゃん


 118:名無しさん ID:WQo62hweV

 とりあえず優勝者みたいならアマはエビ見とけ

 プロは予想つかんが消火器か白菜が安牌

 マスは天井以外あり得ないな


(*消火器……プロ級『烈機の吸血鬼』イルクリス・サウラ

 *白菜……プロ級『紅蓮獅子』オデュノート・サン)


 121:名無しさん ID:4hTZrqCh3

 ゴミみたいなアマチュアのバトロワなんて見るわけないんだ


 122:名無しさん ID:9broRYXxJ

 >>118

 マスはどうせ天井優勝

 プロは早すぎて何してるのかわかんない


 普通アマ見るよね?


 125:名無しさん ID:YgG95wyY6

 エビなんて原人が虫食わせればワンパンよ


 137:名無しさん ID:2MmpsP9EQ

 >>125

 原人「レヴリッツ君はね、貴重なタンパク源なので食べます。エビは栄養が豊富ですからねー」


 141:名無しさん ID:pDFYMn3Dy

 優勝が当確じゃないプロ級が一番見てておもろいだろ

 

 144:名無しさん ID:YYuT3sUVG

 バトロワは意外と混戦になるから強いPでも事故る

 天井くらい圧倒的なら無双できるけどな


 159:名無しさん ID:DpuCZLE7J

 あの


 マスはどうせ天井無双です…


 174:名無しさん ID:J6an9nMCY

 >>159

 黙れ


 177:名無しさん ID:cfWuMz5yS

 もちろん「真」の視聴者なら全階級三窓するよな


 180:名無しさん ID:hbwS2jRUz

 年一のバトロワで優勝すれば昇格確約みたいなもんだし

 Oathあたりは全員年内に昇格しそう


 288:名無しさん ID:WkgUagZY6

 【悲報】天井、不参加です…


 ────

 ソラフィアート・クラーラクト@soraks_battlep


 綾錦杯は不参加の予定です

 色々考えたけどバランス的に私いない方がいいかなって

 他の人応援してねー‼️

 ────


 292:名無しさん ID:eYTi8yBbH

 >>288

 あっこりゃ


 293:名無しさん ID:pETj3tvZH

 >>288

 天井あかんか、、、


 295:名無しさん ID:W3m9wFq9i

 >>288

 バランスとか考えなくていいから無双してどうぞ


 296:名無しさん ID:qrr6udG3X

 天井、やる気ありません


 298:名無しさん ID:yB5A3yYPK

 >>296

 (まともな相手がいないんだから)そりゃそうよ


 301:名無しさん ID:YRHBVi6qC

 天井不参加でマスター板地獄みたいになってて草


 302:名無しさん ID:2SZpAzce7

 マスターとか雲の上の話なんてするなよ

 ここは「地底」だぞ?


 306:名無しさん ID:2SZpAzce7

 でもバランス考えたのは偉いよな

 自分の実力をよく客観視出来てる


 マスは見ない予定だったけど見るか


 309:名無しさん ID:QFjM4BGMV

 マスターの優勝誰か分からなくなってきたな

 例アレか芸人だろうけど


 エビ、お前も不参加キメていけ


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