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条約の時代

海軍条約です。

適当なのでツッコミを入れないように。

4話の予定が5話になり、年内に6話で終わる事に。

絶対終わりますよ。6話で。

4話でも、5話で終わりと書いていたなと。

 日本・スペイン・ポルトガルは、他の国が接収したり破壊する前に手を付けた物の回収を行った。

 しかし「その設備が無いと作れないから困る」と、泣かれる。少し方針転換して、同じ機械や道具を作って送るようにさせた。初期費用が必要というので、少し渡した。泣いて喜ばなくてもいいのに。

 ポンドの他に円やペセタが受け取れるので、人手不足の中、頑張って仕事をしている。

 フランスがルール地方を占領したり、いろいろ有ったがまあ順調だった。

 様々な企業や研究所と、ライセンス契約を結んだり、人材の引き抜きも行った。

 各種化学合成技術・鉄鋼関係技術・医薬品技術・航空機技術・電技術・自動車技術など多岐にわたった。軍事関係技術も当然多い。


 この頃の日本は通信技術は世界でも先端を走っていた。日露戦争で無線機の有効性を高く評価し、南天・米州という遠隔地との連絡は、通信無しではもう語れない。海底ケーブルも大陸間は無理だったが、離島となら自力で敷設していた。

 ただ回路技術はともかく、肝心の基礎部品がいい物が作れなかった。真空管や発振器等の部品、検査・調整用機器などはヨーロッパ製で有った。そこでドイツの技術だった。シーメンスやAGE、両者の合弁会社で有るテレフンケン等からだ。回路技術だけでは、いい物が出来ないと教えられた。他にはボッシュともライセンス契約を結んだ。


 この時にドイツ製品が規格に沿ったネジを使用し、ネジの品質も日本とは比べものにならなかった事を知る。調査すると、ネジは材質からして違っていた。製造に使う機械・工具の材質も精度もだ。精度だと日本はまだこの頃、このくらいでの世界だった。最後は職人の手でと言う作り方だった。製品・品目ごとの標準公差や使用する計測器などの精度も統一されておらず、嵌まらないのが当たり前の製造工程が多かった。

 ヤードポンド法とメートル法、さらには伝統の尺貫法が混在していた当時の日本。良い物が作れる訳が無いと悟った。各規格を比べて、しっかりした基準 (メートル原器・キログラム原器)が有るメートル法を標準とし、ヤードポンド法と尺貫法は必要な場合のみとした国内工業基準を作った。後のJISである。

 


 この頃、日本とイギリスが戦艦の新造をしていた。ドイツとの戦いで沈んだ分の補充と増やす分である。ドイツ海軍から接収した艦でまかなおうと思ったが、新しい艦は沈むか大修理が必要な状態で、古い艦も古いだけに今更使う気にならない艦だった。

 そこで新型戦艦の建造である。海戦の結果を調査し、検討を加えて設計された新時代戦艦だ。

 イギリスが7隻、日本が6隻の戦艦を建造する。戦争景気が終わった頃であり、大規模な建艦計画は立てていない。ただ、古い石炭炊きでラム付きの艦を廃艦にして、その分で必要と思われる海軍艦艇全般の強化も計画していた。

 新しい戦訓が得られたのだから、それを取り入れた艦を作る。正しい建艦であった。

 この時日本は改訂八八艦隊計画を、イギリスは標準艦隊計画を立て、議会での承認も初期の半分は済んでいた。

 日本の新八八艦隊計画は、戦訓を取り入れた新時代戦艦8隻と新時代巡洋戦艦8隻を建造。巡洋艦や駆逐艦も多数建造するという、破天荒な計画だった。ただ、実行には多大の予算を必要とし少しずつ20年掛けて整備する計画だ。要するに海軍艦艇の入れ替えである。耐用年数の来た艦を廃艦に、代わりに新しい艦を配備。普通である。ちょっと規模が大きくペースが早いだけだ。それだけの経済力は存在する。

 イギリスも同じ程度だった。


 それに文句を言ってきたのが、アメリカ合衆国だった。戦争に参加せずに債券を買って物資を売っただけなので、軍関係者の戦場跡への立ち入りも戦訓調査も初期は禁止されたいた。戦勝国側はその禁止期間の間にできる限りの調査をした。戦勝国以外に知られると拙い物は隠したり破壊した。

 合衆国も民間人の振りをしてこっそりとやっていたのであるが、陸戦はともかく海軍艦艇の被弾状況や破損具合などわかる訳も無かった。イギリスと日本が戦訓を盛った最新艦を作るが、合衆国は作っても最新とはならない恐れがあった。戦訓から得られる物がほぼ無い。


 日本もイギリスも相手にしていなかったが、余りのしつこさとアメリカ大陸で合衆国陸軍が動きを見せるなどしたために、会議をすることになった。

 この時点で、イギリス3隻、日本2隻の新型戦艦が工事中で進水式間近だった。

 会議はオランダのハーグで行われた。この会議で纏められた条約がハーグ海軍条約である。


 会議での合衆国は強硬だった。イギリスも日本も、何故、沿岸海軍だけ有ればいいだろう合衆国がイギリスと日本に匹敵する艦隊を持ちたいのか?疑問だったし、理解も出来なかった。

 アメリカ合衆国が防衛するのは合衆国沿岸だけで有るのに、イギリスと日本は広大な海面を守らなければいけない。海軍力が違うのは当然で有る。と言うのが、イギリスと日本の見解だった。

 内心は、デカいつらさせん。

 他の参加国。フランス、スペイン、イタリアもほぼ同じ考えだった。会議で合衆国は孤立していた。

 だが合衆国は、秘密兵器債権回収をちらつかせる。これで、イギリス、フランス、イタリアがぐらついた。各国ともかなり猶予をして貰っていたためだ。特にフランスは戦費のほとんどを合衆国から調達していたために、合衆国寄りになってしまう。イタリアもだ。

 会議は紆余曲折の余りに長引いた。この間に、イギリスと日本の戦艦が進水してしまった。

 イギリスが「フッド」「ネルソン」「ロドネー」のネルソン級高速戦艦3隻。進水はフッドが一番早かった。

 日本が「長門」「陸奥」の長門級高速戦艦2隻。

 いずれも、終戦後3年経ってからの進水であり、戦訓は不十分ながら盛り込まれていた。

 調印間近での進水で合衆国に衝撃を与えた。16インチ砲の装備で有る。両級とも16インチ砲装備だった。

 合衆国は最後にごね、合衆国戦艦にも16インチ砲搭載を認めさせた。

 この条約で決められた戦力比は、イギリス・日本10、アメリカ合衆国6、フランス3、スペイン・イタリア2だった。この比率にも文句を言った合衆国だが、さすがに各国からたしなめられて引っ込めた。この比率は後まで遺恨として残ることになる。

 細かい規定は多く存在するが、主なものは戦艦の隻数と大きさだった。巡洋艦や駆逐艦、潜水艦も同じだった。保有数は全体のトン数で決められた。戦艦は新規建造が10年間禁止とされた。事故で失われた艦の代替も認めていない。何故なら、確実にやりそうな国が3ヶ国ほど有ったからだ。

 排水量は、船体重量のみである。船体重量は船殻重量+機関重量+砲などの装備品重量で、燃料・水・食料・弾薬・居住設備は含めない。


 戦艦 

 主砲  10.1インチ以上16インチまで

 排水量 3万5000トンまで

  排水量はネルソン級3万6000トン、長門級3万4000トンだったので、中間にした。

保有トン数 イギリス・日本 50万トン

      アメリカ合衆国 30万トン


 1種巡洋艦

 主砲  10インチまで

 排水量 1万5000トンまで

 保有トン数 イギリス・日本 12万トン

       アメリカ合衆国 7万2000トン


 2種巡洋艦

 主砲  8インチまで

 排水量 1万トンまで

 保有トン数 イギリス・日本 12万トン

       アメリカ合衆国 7万2000トン


 3種巡洋艦

 主砲  6インチまで

 排水量 7500トンまで

 保有トン数 イギリス・日本 12万トン

       アメリカ合衆国 7万2000トン


 1種駆逐艦

 主砲  5インチまでで、5門以上

 排水量 2300トンまで

 保有トン数 イギリス・日本 6万トン

       アメリカ合衆国 3万6000トン

 2種駆逐艦

 主砲  5インチまでで、4門以下

 排水量 1800トンまで

 保有トン数 イギリス・日本 8万トン

       アメリカ合衆国 4万8000トン


 3種駆逐艦

 主砲  4インチまで 

 排水量 1300トンまで 

 保有トン数 イギリス・日本 8万トン

       アメリカ合衆国 4万8000トン

 潜水艦

 主砲  6インチ2門まで

 発射管 6門まで

 保有トン数 イギリス・日本 6万トン

       アメリカ合衆国 3万6000トン


 新艦種として空母の規制もされた。

 航空母艦

 主砲8インチまで

 保有トン数 イギリス・日本 15万トン

       アメリカ合衆国 9万トン

 排水量は、建造中の戦艦を転用する場合は4万トン以下で2隻までとされた。

 通常は2万5000トンまで。


  他に規制外として保有トン数制限無しで、1000トン以下で3インチ砲2門、魚雷3本搭載で認める艦を設けた。但し速力は30ノット以下。



 ただ、アメリカ合衆国がこの時期建造していたのは、3万3000トン14インチ砲3連装4基12門のジェファーソン級であり見劣りがするとして改設計された。改設計と言っても、既に主砲を積むだけになっていた艦に無理矢理16インチ砲連装4基を積み込んだだけであった。16インチ砲と砲塔は次期戦艦用として製造と設計はされていた。しかし、主砲ターレットや揚弾筒の改設計と交換まで必要になり、大工事となった。竣工したのは予定よりも1年後である。

 それがワシントン級と呼ばれる「ワシントン」「リンカーン」である。


 各国政府は、この条約を軍縮に利用しようとしたのでこのような保有量になった。比率が決まっているのである。イギリスと日本が小さくなれば各国とも小さくせざるを得ない。イギリスと日本は前倒しで旧式艦の廃艦を進め、小さくなってしまった。それでも大きいが。アメリカ合衆国はこの流れに流された。総量規制であったために、まだ新しい艦が廃艦となる。アメリカ合衆国はヨーロッパ戦争前から大量に戦艦を建造しており、アメリカ合衆国を脅威に感じているフランス・スペイン辺りは喜んだ。アメリカ合衆国は作る必要も無い戦艦を大量に建造していたので、総量規制ともなると古い艦を廃艦にしてもまだ足らない。結果として建造後数年の戦艦が廃艦となった。アメリカ合衆国の遺恨は膨らんだ。

 各国ともこの時とばかりに旧式艦で基準以外の艦は廃艦とした。戦艦以外は10年以内と期限があり、通常の廃艦よりも少し早い程度だった。

 この条約では、巡洋戦艦も戦艦になるので、イギリスと日本も痛い。

 考えることは同じなのか、廃艦と決めた艦を実弾射撃で沈めて、いろいろデータを回収するのであった。もちろん浅い海で沈めた。調査とスクラップにするためである。この時、水平防御の不足が分かったワシントン級2隻であるが、竣工して実戦配備されたばかりの艦を改装するのは面子からして出来なかった。そして、後の海軍休日期においても改装される事は無かった。


 この条約は、イギリス海軍と日本海軍にとっても新規戦艦の建造が出来ないという事態を招いた。建造中の艦は廃棄か、空母に改造を余儀なくされた。

 排水量を船体重量とした規定は、伝統のリベット構造だと船殻重量が重くなるので急速に溶接構造へと変わっていく。


 条約により最新最強となった「ネルソン」「ロドネー」「フッド」「長門」「陸奥」「ワシントン」「リンカーン」の7隻はビックセブンと呼ばれる。



 条約交渉中に、日本では関東大震災が発生。東京を中心として大きな被害があった。この時世界各国からの支援が寄せられ、アメリカ合衆国からも寄せられた。一時的に反アメリカ合衆国感情が低くなる。

 日本が嫌がった総量規制も、この震災と世界からの支援を契機として成立に向かった。

 この時、なんとか条約成立前に就役させて例外認定を狙っていた、長門級の砲力と金剛以上の防御力と速力を持つ赤城は、横須賀海軍工廠のドックで盤木から船体が落ち、酷い歪みと亀裂が入り機関部までもがスクラップとなった。進捗率は進水式寸前であった。姉妹艦の天城は進捗率20%程度だった。天城は間に合わずにスクラップになる。


 10年もすれば条約締結国の海軍艦艇は条約準拠型に変わり、条約型艦隊と呼ばれる。


 条約締結時の日本戦艦群は、金剛級巡洋戦艦6隻、扶桑級戦艦1隻、伊勢級戦艦4隻、長門級戦艦2隻だった。日本はヨーロッパ戦争終結後に時代遅れとされた薩摩級や河内級戦艦他、旧式艦を次々と予備艦状態にしていた。

 扶桑級は2隻であったが、1隻がユトランド海戦で爆沈。金剛級も8隻の内2隻が失われた。本来は失われた3隻を含む八八艦隊が結成される予定だった。改訂八八艦隊計画は、伊勢級4隻、長門級2隻、加賀級2隻の戦艦と、金剛級6隻と赤城級2隻になる予定だった。扶桑は武装と機関を減らし、装甲板も剥ぎ取って低速・低防御の練習艦にする予定だった。

 空母に改造された艦は、加賀・土佐の2隻。長門級以上の防御力と2門増しの主砲、金剛級の速力を持つ高速戦艦を目指した。加賀は呉、土佐は佐世保で建造されていた。条約により一時工事を中断。空母に改装されるが、同時期、空母として新造されていた鳳翔の運用結果を待つとして時間を置いた。

 結果として良かったのか、発艦と着艦の危険性が認識された。フューリアスに刺激を受けたのか、同時に出来るように3段の飛行甲板を持つ空母が図面と模型として存在したが、普通の全通飛行甲板1枚になった。鳳翔運用実績で火災に対する脆弱性が指摘された。これは格納庫で火災が実際に発生したためである。

 撤去されようとしていた戦艦主砲を駆動するための強力な水圧ポンプ3基の内2基は、強力な消化能力を求めたために残された。計画では小型の水圧ポンプに換装され、強力な水圧ポンプ2基は条約型新造巡洋艦に転用される予定だった。 



 陸軍でも陸戦条約の効力を少しでも高めようという動きはあった。

 双方での毒ガス使用である。ハーグ陸戦条約の無視だ。勿論先に使ったドイツが悪いのだが。

 だが、これ以上に制限出来る物でも無く、守る気が無ければどうしようも無い事もあり、現状で置かれた。

 不発弾処理においては、紛争当事国が責任を負うという事が明記された。唯一の成果である。

 不発弾の中には、紛争終了後にも残る機雷・地雷も含まれた。紛争中に爆発しなかったので不発弾扱いにするという意見が大勢を占めた。機雷と地雷の処理は設置国の責任となった。また、設置場所の記録も義務づけられた。

 



次回更新 年内


テレフンケンと言えば、ナカミチにハイコムⅡと言うノイズリダクションがあります。

テレフンケンのハイコムをベースにナカミチが魔改造した奴ですね。

一時手に入れて使った事があります。良かったですがアドレスを使っていたので手放しました。持っていれば良かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アメリカ大陸で合衆国と睨み合う日本陸軍は戦車が史実よりも進化しそうですねえ。 外伝でもよろしいので、そちら方面もお願いします。
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