転生するとそこは…
…眩い光が収まると、そこは玉座の目前でした。
……………………
既に俺の左側には転生者が三人並んでいる。
オレンジ色の髪の元気そうな女の子、
その隣に眼鏡をかけた黒髪ロングの女の子、
そして一番奥に金髪の12歳くらいの少年がいる。
「やっと最後の転生者か。」
金髪の少年が腕を組みながら、こちらを睨んでいる。
「ごめん、もしかしてもう大事な話とか、始まってる…?」
転生前の世界でもこうして遅刻する事がよくあった。
木から落ちた鳥のヒナを助けたり、
荷物を抱えたおじいちゃん、おばあちゃんの案内をしたり…
困ってる誰かを見逃せないんだよな…。
「いや、問題ない。君たち四人全員が揃うのを待っていたからね。」
玉座に座る王様は、王様のイメージとはかけ離れた好青年だ。
見た目からして、年齢は俺の少し下ぐらいかもしれない。
そんな王様は、にこやかに左の少年をなだめる。
「まず、君たちはともかく、この世界を救うために召喚された。
ここまではいいかな?」
「問題ない、異世界転生だろ。いちいち聞かなくてもわかる」
「待って、アタシはよくわからないよ。異世界、転生?召喚?」
異世界転生に理解を示している様子の少年に対し、
俺の隣の元気そうな少女はまだ困惑しているようだ。
「え?今どき異世界転生知らないってマジ?ハハッ、遅れてるなぁ!」
「あ?なんだクソガキ。この場でシめてもいいんだぞ?」
「ひぃっ!」
「待って、喧嘩は止めよう。僕らは仲間なんだ」
俺はとっさに、隣の娘の拳を掴んで仲裁する。
「っ…!あぁそうだ…よね…」
「ごめん、いきなり掴んじゃって…でも、
ここでこの子を殴ったりしたら、仲間としての信頼関係も
良くないものになるんじゃないかって思うんだ」
「うん…わかったから、さ、手を…放してくれないかな…?」
「あ、ご、ごめんね…」
慌てて手を離し、お互いに顔を赤らめる。
初対面の女の子の手を全力で掴んでしまった…
痕になってないといいけど…
「んんっ!すまない。話を続けてもいいかな?」
なぜか王様も顔を赤らめながら咳払いをして、話を再開する。
王様の話によると、
ここはアスカラ王国。そして王様の名前はアルテリア。
俺たちはまず、召喚魔術によって、この世界に召喚された。
そしてこの世界に現れた邪天使、ラ・ヴリエルを討つことが役目。
そのため、俺たちはそれぞれ「ギフト」と呼ばれる特別なスキルを与えられた。
王様の話は大体そんな感じだった。
「では、スキルの確認のため、ステータスを確認してくれ。
心の中で『ステータス』、とつぶやくだけでいい」
どれどれ…
『ステータス』。
フォンッという
スマホの起動音のような音と共に、
目の前に薄水色の板が現れる。
……………………
常見 愛太 レベル1
職業 旅人
HP 1500
MP 1500
力 1500
防御 1500
素早さ 1500
知力 1500
幸運 1500
スキル
【平凡】
……………………
なんだこれは。
全部同じ数字だ…
「へぇ…ライトニングスラッシュ、ギガパルス、
テラブレイド…俺は電気属性か…」
「ファイアボム、フレアダイブ、フィストボンバー…
アタシは火ってことか?」
「ウィンドバリア、インビジエア、フェアリーブレス…
私は風属性…ですかね…」
他の三人は特別なスキルを持っているようだ。
もしかしてあの女神様の手違いか…?
「みんなはステータスの確認は終わったかな?
じゃあ、自己紹介の時間と行こうか!
まず金髪の君から右に順番に頼むよ」
「俺はショウ、この世界を救う勇者として選ばれた男!」
「私は魔法使いのホノカです…転生者だからって
あんまり期待しないでくださいね…」
「アタシは武闘家のコナツ。運動神経には自信があるよ!」
「俺は旅人の愛太。俺には特別なスキルが無いみたいなんだ。
そんな俺でも役に立てることがあるならなんでもさせてほしい」
「スキルがない…?そんなはずはないはずなんだけどな…?」
皆とステータスウィンドウを見せ合うが、
やはり俺のものとは少し違う。
皆には見るからに強そうなスキル名の数々が並んでいるが、
俺の所有スキルは【平凡】。ただそれだけだ。
「ふむ、確かにスキルは見たことのないものだな…
しかしステータスはなかなか面白いね。レベル1でこの強さは珍しい」
「へぇ…でも俺のHPと力と防御は俺が上だ。残念だったな」
「私はMPと賢さに特化してるみたいですね…」
「アタシは力と素早さ、あと幸運が高いみたいだな」
転生者パーティの中ではスキル通り、俺は平凡な能力のようだ。
「…まぁ少し不安な部分もあるけれど、
君たちなら大丈夫だろう!」
そうして、俺たちは城を出た。
これからの旅はどうなるのだろうか…
第三話 完
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嫌な勇者像がどうしても思い浮かばなかったので金髪生意気ショタにしました。
ついでに王様もショタです。かわいいですね。
あと昔から構想を練ってようやく書きはじめた小説、
コヤンスダンス~童話と舞術と一匹の子狐~
よろしくお願いします。
獣人とか獣が好きな方に読んでいただきたい一作です。
おそらくダークファンタジー路線に向かっているので、
そちらが好みの方にもおすすめです。多分。
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