平凡転生
そんなわけで、俺は今、役所にいます。
外見を見た時は、雲の上に建つ神々しい神殿だと思ってたけど、なんか、内装は意外と普通だ。
視界の端にまで広がるとてつもなく長いカウンター、そして何百人もの翼を持つ天使たちがいること以外、日本の市役所と大して変わらない。
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死んだ人間はまず、「転生役所」に送られ、転生する際、どんな世界で生まれるのか、どんな人生を送れるのか、などの転生場所、状況の指定ができます。
※生前の行いによっては、指定できない場合がございますが、ご了承ください。
(あなたの善行ポイントは規定以上に達しているため、生まれる世界など自由に指定ください)
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と渡された資料には書いてある。
他にも色々指定先の世界とかいろいろ書いてあったけど、
まぁ、この平和そうな“ノドカナ”ってとこにしようかな。
「19786番でお待ちの常見愛太様、670番ポータルまでお越しください、繰り返します、19786番で…」
おっと、ここか。
青白く輝く光の環を踏むと、チュィン…という音と共に、意識が光に包まれて…
気が付くと俺は女神の前に立っていた。
浮遊する足のつま先まで伸びた長くてサラサラの金髪。後光を浴びて優しい虹の光を放つトーガに包まれた肢体は直視できないほどに美しい。顔にかすかな笑顔をたたえる彼女はさながら美の化身とでもいうべきか。
「ハーイ!ワタシ、先日ここに配属された女神、“アルテマス”デース!
早速ですがユー、人生お疲れ様デース!でもユーのあまりにもミジカイ…そうなのでユー、人生、やり直してみたいと思いマセンカー!?」
「ふぁ?」
思っていた以上にフランクな女神さまのようで拍子抜けしてしまった。
「ユーならば、生まれる世界、能力、年齢、容姿など、自由自在デスヨ?
最近の転生者サンは、チート?能力、アト、モテモテハーレム?
トユーやつを求める人トテモ多いみたいデスネー?」
いや、目立つような能力はだめだ。あの時俺は…
考えてみれば優柔不断すぎたのかもしれない。
義理の姉、大良子さんと実の妹梨々花、幼馴染の千果、田舎にある実家の近くから引っ越してきた稲子お姉さん、偶然二回連続で隣の席になった鈴里さん、学校のアイドル貴音さん、父さんの再婚相手の柔乃さん、後輩の戸川さん、そして面井さん。
でも。
「だめだっ…この中から選ぶことなんて…っ、残酷すぎる…っ!!」
「オゥ、そうデスカ?お任せ、テユーコトで、いいデスネ?
では、ヒトが足りない、ファンタズピア、決定デース!」
「ごめんなさい、違います!こっちの話…」
「ウップス、忘れてマシタ。スキル、デスネ!ここ行くなら絶対必要ですノデ」
「いや違います、平凡で!スキルも特に必要ないです!!」
「オー…スキル、【平凡】…?無いデスネ…
オ、スキル作成…ここデスネー…ア~…」
そうこうしている間に俺の身体は光に包まれていく。
まずい、俺はのどかで平和なノドカナで暮らすんだ!!
「ア!これで、オッケーデース!!
では、ガンバってくださいネ~!!」
「ちょっとまっ…」
俺が口を開く前に、まばゆくも優しい光が俺の視界を奪った。
あぁ…さよなら…のどかなノドカナのマイライフ…
あの平和な野原の真ん中にマイハウスを建てて…のんびり…暮…らし…………
そこで俺は意識を失った。
第二話完
五分ぐらいで思いついた平凡を活かす能力から広げた話なので伏線どころかこの先の展開すら考えていません。助けて。