回想
拝啓、これを読んでいるあなたへ。
人間はモテすぎると死にます。
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常見愛太は死んだ。彼のことを誰よりも愛していた女の子に、心臓を一突きされて死んだ。
あの子は今どうしているだろうか。
あれは彼女と出会ってから二日目の昼休みに起きた事だ。
俺は学校の屋上に呼び出されていた。
「愛太君!私はあなたの事が大好きです!!いつもあなたは誰にでも優しくて…私はそんな愛太君が好きで好きでたまらないんです!付き合ってください!!」
「まってよ、君は確か、面井愛心さんだったよね?俺は昨日君の落とした眼鏡を一緒に探しただけだよ。結局俺は最後まで見つけられなかったけど…」
「だって、私が眼鏡をずっと手元に隠してる事を疑いもせずに、夜遅くまで探してくれた人は愛太君が初めてなんですから…
「それに、愛太と愛心。読みは違うけどどっちも愛を持ってる。ぇへへ…幸せ……ごめんなさい、話がそれました。つまり、私の用意した愛の試練を突破したあなたはもう私の運命の人と言っても過言じゃありませんよ…ぇへ…これからは、その…あなたの優しさの全てを私にくれませんか?」
「ちょっと待って、本当にごめん。俺には君だけを特別扱いする事なんてできない。君だけに優しくて、他のみんなは無下に扱う俺は、俺じゃないよ」
「えへ、そうですよね…これ、持ってきてよかった…」
ドッ。
胸の真ん中に、鋭く尖った鉄の棒が入り込む。
げほっ、これは、血だ。
口から煮え湯のように熱い血が飛び出す。
間髪入れずにもう一度刺し、また一刺し、数え切れないほど執拗に刺す。
あぁ。
そうか、これは、コンパスか。
意味もなく自分の死因を特定して、それから俺の意識は暗くて冷たいどこかへ沈んでいった。
「あは!じゃあ…わ………、す…に…………ね!」
彼女が何かを言っていたような気もするが、もう死に始めた俺の脳が、その言葉を理解することは無かった。
第一話完
流行りに乗って書きました。
以上。