癒しの嫉妬
攻略を切り上げて戻ってきた俺たちは、昨日の購買部――つーか、もはやデパートよな――に寄って、注文していた装備一式を受け取った。
問題ないか、由乃はしっかりと試着して確かめていたが、俺には見せてくれなかった。
何故なんだぜ。
いいもんいいもん。
どうせ、俺が選んだのだからデザイン分かってるもん。
気にしてなんかないんだからね。
その間、暇だったので男性用コーナーを色々と見て回っていたのだが、そこでちょっと面白いものを見つけた。
バンテージである。
格闘技でお馴染みですね。
ボクシングとかムエタイとかなら、よく見るのではないのでしょうか。
あまり人気がないのか、それなりに積まれているそれを見て、俺は手に取る。
まぁ、あれよ。
どうやら、素手でモンスターに挑む奴とかいないらしいしな。
売れ筋にはならんのだろう、きっと。
装着する意味とかを調べてみるが、どうやら拳の保護と、パンチの精度を上げる効果があるらしい。
あと、ついでになんとなくカッコいい、とか。
うむうむ、その気持ちは理解せんでもないぞ。
ふぅむ、保護は気功防御のおかげでそこまで必要とはしないが、精度アップは良いかもしれんな。
不良在庫らしく、かなり値引きもされている。
一万円くらいで、モンスターの皮素材の結構上等なものが買えるようなので、お試しにワンセット購入してみる。
気に入ったら、色々と集めてみるのも良いかもしれんな。
火蜥蜴の皮で作ったものとか、パンチに火属性攻撃が乗るとかいう特性付いてるし。
面白そう。
ふっ、また一歩、チンピラ具合が増したぜ。
装着して鏡で見てみるが、どう贔屓目に見てもヤクザが何かである。
バンテージのおかげで、ぼんやりと残っていたホスト感はなくなってしまったわ。
まぁ、良いさ。
そうこうしている内に、由乃の方も済んだらしく、連絡があった。
お披露目は明日だってさ。
そんなに焦らさなくても良いじゃんかよぅ。
……………………。
そして、明けて翌日。
気分爽快。気力満点。
今日も元気にモンスターをぶっ殺すぞー!
という決意の元に、同じ虚数領域にやってきました。
例によって俺の準備が早過ぎる為、ゲート前で一人寂しくシャドーを行います。
なーんか、初日に比べて注目度が低いような気がするのは気のせいかなー?
俺の輝きが減ってしまったのかー?
ガイアよ、もっと俺に輝きを分けてくれ!
暫しして、少しだけゲート前に屯していた者たちからざわめきが上がった。
なんだなんだ、と俺も野次馬根性全開でその出本に視線を向ければ。
そこには、絶世の和風美少女がいた。
白と黒を基調とした、エロスと清楚さを併せ持つ衣装。
帯と手に持つ紅葉扇だけが色鮮やかな和装の少女。
その名は、吉田由乃。
我が妹様である。
んー、ビューティフォー。
さっすがは俺。
良い仕事しましたねー。
昨日までのコスプレ魔女ッ子衣装とは、桁違いの似合いようです事よ。
妹は、俺に気付き側に寄ると、少し頬を赤くしながらはにかんだ。
「……お待たせ、お兄ちゃん。どう、かな?」
「うむ、可愛いぞ。よく似合っている」
「そっ。じゃあ、行こっか」
素っ気ない態度だが、ふふふっ、耳が赤くなっておるぞ。
そして、周囲の男どもからは、嫉妬の負の感情が念波となって送られてくる。
くくくっ、可愛かろう?
これ、俺の妹なんだぜ?
貴様らのような有象無象には指一本触れさせんからな!
なんとなく優越感を振り撒きながら、俺たちは虚数領域に突入した。
背後から一斉に鳴らされる舌打ちが聞こえたのは、きっと気のせいではないだろう。
ああ、愉悦。
男どもの嫉妬で、今日も良い夢が見られそうだ。
フハハハハッ!