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間抜け

 歩き始めて十分もしない内に、第一村人ならぬ第一モンスターを発見しました。

 毎度お馴染み、ゴブリンさんですね。

 但し、徒党を組んでおります。

 四匹編成とは、案外豪華やのぅ。まだ第一層なのに。


「で? どうする?」

「どうするって、何が?」

「いや、あれの倒し方よ。

 なんなら、俺一人でもいけるんだが」

「……私も、あれくらいなら一人でも倒せるよ」


 対抗したのか、むすっとした顔で言いながら、由乃が前に一歩出る。


「ほほぅ、ならお手並み拝見と行こう」

「偉そうでムカつく」


 こちらに気付いたゴブリンが雄叫びを上げながら、こちらに向かって突進してきた。

 由乃は慌てずに杖を構える。


「……フレイム」


 小さく唱えると、杖の先端から炎が放射される。

 火炎放射機みたいやな。


 そのまま横凪ぎにすれば、ゴブリンたちは一瞬にして火だるまとなり、すぐに光となって消えていった。


「どうよ?」


 振り向き、ピースする由乃。

 うむ、ドヤ顔が可愛い。

 魔法も派手だし、アイドルになれそうだ。


 パチパチ、と俺は拍手を送る。


「お見事。じゃあ、次は俺の番だな」

「次?」

「おう、すぐ角を曲がった所にいるっぽいぞ」


 モンスターがいなくなったというのに、すぐに次の事を言う俺に疑問を持ったのか、可愛らしく小首を傾げる由乃ちゃん。


 そういう所だぞ。

 そういうあざとい仕草が男には好まれるんだ。

 よく勉強しておくように。


 取り敢えず、ゴブリンとファングの混成のようなのだ。

 なんとなく分かる。


 で、実際に曲がり角から顔を出してみれば、予想通りにモンスター集団がいる。

 ちゃんとゴブリン二匹とファング一匹の編成である。


「……ホントにいる。何で分かったの?」

「ん? んぅ~?」


 言われて、初めて疑問に思う。


 俺、何で分かったんじゃろ?


 答えられなかったので、適当に愛想笑いで誤魔化しておきましょう。


「まぁ、ええやん。

 ひとまず、お兄ちゃんのお手並みを御覧じろ、ってな」


 という訳で、何の工夫もなく突進します。

 隠す気もない俺の足音に気付いた連中が、威嚇の叫びを上げながら向こうからも突進してきた。


「ちょっ!? お兄ちゃん!?」


 俺の速度から、身体強化をしていないと察したのだろう。

 背後で由乃が悲鳴を上げていた。


 なぁに、大丈夫だよぉ。

 安心して見ておくがよい。


 速度の差故に、真っ先にファングが俺と肉薄する。

 なんの捻りもない噛み付き攻撃。

 昔は苦労しましたね。

 今は余裕ですけど。


 軽く身を捩り、紙一重で躱した俺は、奴の首に手をかけて、取り敢えず発勁一発。


 程好く抵抗力を押さえ付けた所で、そのまま首の毛皮を握り締め、足腰を稼働させる。

 そのタイミングで、遅れてきたゴブリンたちがようやく交戦距離にまでやってきた。


 ナイスタイミング!

 計算通りよ。


「必殺、投げ技……!」


 ファングをおもっくそ振り回してぶつけてやった。


『ギョブッ!?』

『ギャブッ!?』


 ハッハー、数十キロもの肉塊にぶつかられては、一堪りもあるまい!

 やはり対集団には投げ技よな!

 たくさん巻き込めるから!


 あっさりといけない感じに折れ曲がったゴブリンどもは死に絶える。

 ついでに、手の中のファングも光になった。


 おろ? まだ死ぬ程のダメージは与えてないと思うんじゃがの。

 と、思って消えゆく遺骸を見てみれば、首が良い感じに折れてーら。


 あー、ね?

 首を起点にぶん回しましたもんね?

 そりゃ、折れるわな。


 適当に投げ捨てておくと、由乃が半目をしながら寄ってきた。


「…………何を言ったら良いのか分かんないけど、お兄ちゃん、いつもこんな感じなの?」

「投げ技は初めてだぜ」

「そういう事を言いたいんじゃないけど……」


 頭痛がするとばかりに眉間に寄っていたシワを指先で解しながら、彼女は口をもにょらせている。

 おいおい、言いたい事があるんならはっきり言ったらどうだ?


「お兄ちゃんってさ、バカでしょ?

 バカだバカだとずっと思ってたけど、正真正銘の大バカでしょ?

 ねぇ?」

「兄に向かって酷い事を言うな。

 何をどう見たらそう思うのだ」

「まず、モンスター相手に素手で挑んでるところ。よく怖くないね」

「慣れだ」


 断言するしかないよね。

 元々は金欠からくる仕方ない選択だったんだけど、もう慣れちゃった今では、これ以外の戦闘スタイルにはなれませんわ。


 由乃の視線が厳しくなった気もするけど、きっと気のせいだな!


「まぁ、それならそれでも良いけど、中にはゾンビとか虫もいるんだけど。

 それも素手で殴るの?」

「俺は、忌々しき暗黒の使者、コードネームGさえも鉄拳で粉砕できる男だぞ」

「……そういえばそうだったね」


 ゾンビだろうと何だろうとよっゆー。

 虫はもう経験済みだしな。

 あいつら、群れるから全身に集られて面倒臭いです。

 必殺ローリングアタックで押し潰してやりましたとも。


 はぁ、と吐息した由乃は、更に畳み掛けた。


「しかも、そんな超綱渡りの接近戦するくせに、身体強化もしないし」

「いやさ、妹よ。

 あれは、疲れるんだぞ?

 毎回毎回やっていては、ガス欠ですぐに動けなくなってしまう」

「…………そうなの?

 でも、集気法とかいうのが生えたんでしょ?

 持続時間? 回数?

 伸びてんじゃない?」

「むっ、言われてみれば」


 そういえばそうでしたね。

 ついついいつもの感覚でやってたわ。


 試しに気功法発動。


 んー、取り敢えずこのまま維持しとくか。

 どれっくらい持つかなー?


「流石は我が妹。良いところに気付く」

「むしろ気付かないお兄ちゃんがアホだよ」


 深々とため息を吐くなよ。

 本当にアホだと思われてるみたいじゃん。


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