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ユニークという資質

遅れに遅れて申し訳ありません。


ちょっと、手違いによって二章のデータが丸ごと消滅してしまいまして。


不貞腐れておりました。



なんとか復旧したので、ちょぼちょぼ再開します。

「ねぇ、お兄ちゃん。私にも見せて」

「んお? おお、ほら」


 ぴょこり、と手元を覗き込む由乃。可愛い。


 普通、チームメンバーと言えど、簡単には見せられないスキル情報でありますけども。

 まぁ、由乃なら良かろう。

 お兄ちゃんの偉大さをしかと受け止めよ。


 カードを渡して、俺は丹田におチャクラ様を集めるイメージで力を入れて、ひとまず気功法を発動させる。


 ふぬあっ!


 うむ、良い感じだぜ。

 俺のスーパーマッスィーンは、今日も絶好調にエンジンを打ち鳴らしておられる。


 さてさて、適当に演舞のようにシャドーをしつつ、それぞれの能力を考えていこうか。


 纏気は、文字通りに〝気〟を〝纏〟うのだろう。

 だが、それは今までの気功法とは何が違うのか。

 今の発動状態が、そのまま纏気という訳ではないのか。

 謎は深まるばかりなり。


 衝波。

 衝撃波?

 発勁とは、これもまた違うのか?

 うーむ、よく分からんな。


「とあっ!」


 お試しに、素振りをしつつ、発勁の要領で衝波を念じてみた。


 なんてね。

 こんな簡単に発動してたら苦労はありませんよ、って。

 そんな事を考えていた時期が僕にもありました。


 メシリ、と、拳の先にあった虚数領域の壁に小さなヒビが入った。


 ホワッツ?

 え? なに?

 発動した? しちゃったの?

 こんな簡単に? うそん?


 ヒビは小さなものであり、すぐに修復されて消えたが、確かに入ったと思う。

 俺の勘違いではない、筈。


 では、もう一度。


「ふん!」


 気合いの正拳突き。

 からの、衝波!


 今度は真面目に気合いを入れてやったおかげか、さっきよりも大きなヒビが入った。

 まぁ、程度差だけど。

 多分、直接ぶん殴った方が威力は高そうだ。


 でも、これは良いなー。

 遠距離攻撃手段が出来たかー。

 飛行タイプのモンスターには有効そうだわ。


 今までは近付いてくるのを待つか、石投げて打ち落とすかだったからな。

 うむ、便利になったものだ。


 ちなみに、一応の確認で、衝波を念じずに突きを繰り出してもみた。

 もしかしたら、ウルトラ進化した気功法によって、ナチュラルに拳圧的なサムシングが放たれているのかもしれないからね。


 だけども、結果は外れ。

 ちゃんと衝波が発動していたらしく、そのままだと何も起きなかった。


 うむ、良し。

 取り敢えず、良し。

 飛行系以外にどれだけ使い道があるかは分からんけども。


 最後に、聴勁だ。


 聴く勁。いや、勁を聴く、のか?

 さっぱり分からん。


 いや、諦めるのはまだ早い。

 もしかしたら、衝波のように念じてみたら何か起こるかもしれないじゃないか。


 では、改めて、聴勁!


 ……………………。


 ぜーんぜん、なーんにも起きませーん。


 ええい、分からん!

 保留だ、保留!

 そのうち、ふとした拍子に発動しちゃったりすんだろ!

 知らんけど!


 ふぅ、と一息吐くと、横からカードが差し出された。


「ありがと」

「おう。

 ……どうよ? 兄の偉大さは理解できたか?」

「偉大かどうかは知らないけど、便利そうではあるね。

 何のレベル表記もないから、どれくらい凄いのか分かんないけど」

「それなー。困るよなー」


 ユニークは、通常のものと違って、段階を示す何かがないのが特徴だ。

 だから、例えば俺の【身体強化】も、普通のそれで言うと、どの辺りなのかも分からない。

 初等相当なのか、中等なのか、あるいは高等か、それとももっと上なのか。

 さっぱりである。


 他と比較して把握するしかないんだけど、俺ってば知り合い少ないしな。

 カードに登録されている名前なんて、由乃以外だと超初期に出会ったお兄さん、東条塔矢さんだけだし。

 ああ、あの人は今いずこ。

 今も頑張っているだろうか。

 表示を見る限り、死んではいないみたいだけど。


「でも、便利そうだね。

 私も欲しくなってきちゃった」

「こればかりはなぁ~。

 欲しいと言って手に入るもんじゃないしなぁ~」

「……所持者として、なんか心当たりとかないの?」

「…………あるっちゃあるけど」

「あるんだ……」


 ちょっとばかし期待するように訊いてきた由乃に、小さく肯定を返せば、意外そうに目を丸くしていた。

 まぁ、隠す事じゃないから軽く説明してやろうではないか。


「ユニークって、要は本人の才能なんだよ。

 普通のスキルは、練習してある程度形になってくれば、スキルって形で生えてくるじゃん?

 でも、ユニークの場合、完全才能任せっていうのかね。

 資質が開花したら生えてくるっていうか、そんな感じ。

 ……分かってくれる?」

「……んー、なんとなく? 言わんとする事は」


 俺は、最初から近接で殴り合う事を覚悟して入った。

 そして、そういう資質があった。

 だから、気功法という近接戦に優れたユニークスキルが生まれたのだ。


「じゃあ、私の適性は魔法じゃないってこと?」

「もしくは、何かが足りてないか。

 それが分からんとどうにもならん」


 これが難しいところ。


 あるいは、由乃も近接戦の才覚があり、それをやってみたら意外と簡単に生えるかもしれないし、生えないかもしれない。

 本人の好みはさておいて。


 魔法にしたって、ユニークが生えないから才能がないと決まった訳じゃない。

 後一歩、ほんの少しの掛け違い故に、ユニークとして目覚めていないだけで、本当は才能があるのかもしれない。


 この辺りの判断が、俺にも由乃にも出来ない。

 だって、俺たち、まだ十代の若者だし。

 熟練の指導者とかじゃないしな。

 ンな事、分かるかいなって事よ。


「まっ、色々とやっていくしかないわな」

「……結局、そういう結論になる訳ね」


 一般的に、ユニークスキルを取得する方法として囁かれているものだ。

 信憑性いまいちな噂でしかないのだが、持っている者としての体感としては、それ以外に方法は無かろうとしか言えない。


 なんか、こう、極まった鑑定スキルでもあれば別なのかもしれんけどにゃー。

 人の秘められた才能まで見抜けるようなのがあれば、簡単にユニークスキル取得できると思うけど。


 そうそう都合よくはいかんわなー。


「では、改めて! 今度こそ探索にしゅっぱーつ!」

「おー」


 拳を突き上げて、俺たちはやっと先に進むのだった。


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