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変容の恩恵

 ヤケ食いで、早速に鎮伏協会と提携している飲食店で散々に飲み食いした。

 おかげで、なんだか久し振りに満腹気分である。

 それでも、ここ最近の食費を下回っているのだから、専用クレジットカード様々という物だ。

 代償は高く付いた気もするが、そんな事は考えてはいけない。

 人間、明日よりも今日を大切にしなければならないのだから。


 家に帰り付く頃には、もう深夜となっており、妹様は寝静まっていた。


 こんな不良なお兄ちゃんでごめんな?


 起こさないように静かに自室へと退避し、俺は二冊の小冊子の内、極秘の方を取り出す。


 極秘なんだもん。

 学校とかで読む訳にもいかないし。

 持ち物を勝手に漁るような奴はいないと思われるが、わざわざリスクを侵す必要もあるまい。


 なので、満腹感からの眠気を振り払いつつ、それに目を通す。


「ふむふむ」


 〝変容〟とは、虚数領域に満ちるエネルギーによって、人体が造り変わる現象という事らしい。

 大別すれば、スキルなんかと同じらしいのだが、それとは比較にならないくらいの変化があるのだと。

 ちなみに、身も蓋もない言い方をした説では、人体をベースとしたモンスター化だとも書かれている。

 嫌な気分になりました。


 変化の一つは、身体能力の向上。

 身体強化系のスキルを使っていなくても、かなり動けるらしい。


 しかも、これは虚数領域限定ではないというのだから驚きだ。

 なんと、現実世界においても、上昇率に差はあれど、超人じみた身体能力を発揮できるようになるらしい。

 参考資料に、指一本で巨大な岩を持ち上げている化け物みたいな写真が載っていたりもする辺り、きっと本当なんだろうね。

 それが合成である可能性もあるが、そんな陰謀論じみた可能性を考え始めるとキリがないので、素直に信じておきましょう。


「そりゃー、極秘にもなるか」


 こんな超人がいて、誰でもそうなれる可能性があると分かれば、社会が混乱しかねない。

 いつかは発表しなければならないのかもしれないけど、時期ややり方はしっかりと見計らわないといけないだろうよ。


 ちなみに、変容経験者は、一般的な競技会には参加禁止らしい。

 まぁね。

 こんな超人共が参加したら、世界記録とか更新しまくりだし、常人じゃ永遠に塗り替えられないものになっちゃうしね。

 さもありなん。


 そんでもって、変容を経ると、スキルの効率も上がるらしい。

 例えば、俺は【中等格闘術】のスキルを持っている訳だが、変容を終えた俺が、同じスキル持ちと競った場合、ほぼ間違いなく俺の方が勝つというのだ。

 良いね。


 また、変容にも段階があり、一回だけしか起こらない、という事はまずないらしい。

 大抵の者が複数回経験し、その度に劇的に能力を向上させているのだとか。

 ちなみに、七段以上の、所謂プロ鎮伏者は、全員が例外なく十回以上の変容を起こしているらしい。

 尤も、回数は重要ではないとも書かれていたが。

 重要なのは、能力のハードルなので、一回でそのラインを越えられるならば、それでも昇段条件が得られるというのだ。


 まぁ、そうは言っても、全員が最低でも十回はやってるって言うんだから、きっとその程度の上昇率か、それくらいに求められるハードルが高いんだろうね。


 そして、更に驚くべき事実がこれには書かれていた。


 なんと、変容を起こすと、人体にある種の最適化が起きるらしく、容姿的な意味でも良くなるというのだ。


 え?

 つまり、イケメンになったり美女になったりするって事?

 マジ?


 でも、そういえば、テレビに出てくるプロ級の鎮伏者は、皆、矢鱈とカッコ良かったり美人だったりするよな。

 最近、売り出し中の乙倉音姫とかも、絶世の美少女だし。


 ネットとかでは、有り余る財力で整形してるんだとか映像を加工してるんだとか、実力もあって容姿も優れてるなんて出来過ぎであるという醜い嫉妬で溢れかえっているが、現実は違った。

 実力があるから、容姿まで手に入れたのである。


 なんて事だ。

 これは俄然とやる気が出てきましたよ。

 色々な現実をひっくり返す一手を、俺は既に手にしていたとは。


 よぉーし、お兄ちゃん、ちょっと頑張っちゃうぞぉー!

 そんで、由乃からの〝隣を歩いてほしくない〟などという失礼な言葉を撤回させるのだ!


 見てろよ!

 レッツ、イケメン変身!


 ちなみに、変容中は、凄まじい食欲の増加の他に、全身に筋肉痛の様な痛みがあったり、軽い発熱(40~41℃くらい。……軽いか? まぁ軽いか)があったり、ちょっとやべぇんじゃねぇか? ってくらいの悪寒があったりするらしい。


 今のところ、食欲以外の異変はないけど、どうなのかしらん?

 もしかして、全部勘違いだったりしない?


 なんて、心の何処かで思っている時期もありました。

 浅はかな事にね。


「…………やべぇ。これ、マジでやべぇ。

 本当に死なねぇんだろうな?」


 その夜、真夏の夜にもかかわらず、一部の隙もなく布団に包まった俺は、尋常ではない悪寒に震え続けて、一睡する事も出来なかった。


 どうやら、ちゃんと変容は始まっているらしい。


 それは良いんだけど、ホントに大丈夫なんだよね?

 死なないんだよね?

 命がピンチな気持ちを味わえそうなくらい、震えが止まらないんだけど。

 助けて、ママン。


◆◆◆◆◆


 明けて、翌朝。


「おふぁよ……って!?

 ど、どうしたの、お兄ちゃん!?

 顔色、ヤバイよ!?」

「大丈夫だ、妹よ!

 身体が砕け散りそうな筋肉痛と、40℃を越える軽い発熱と、世界が凍り付いた様な止まらない悪寒があるだけで!

 兄はとても元気だぞ!」


 俺に対して、いつも辛辣一直線な由乃が、まさかの心配をする程に俺の顔色は悪くなっていた様だった。


 ……ホントに死なないよね?

 怖くなってきたんだけど。


大分、ストック分に追い付いてきたので、少し更新ペースを落とします。

話的にも区切りが良いですし。


また溜まるまでは、二日に一回ペースで。



どうでもいい事でしょうが、PVはあるのに、ブックマークが増えないのはどういう事なのだろうか。

最新話の閲覧数からして、20人から30人くらいは恒常的に読んでくれていそうなのに。

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