死闘の報酬
「ふっかーつ!」
目覚めスッキリ! 元気ばっちり!
いやー、良いよね。
ボス部屋って、通常モンスターが出る事は無いから、安心してグッスリ出来ましたよって。
取り敢えず、まずはポーションを飲んでおきましょうね。
お顔がやべぇ事になっておる。
ぶっちゃけ、表情筋を動かすだけで引き攣る様な痛みが右頬から走ってしまう。
触ってみると、まだちょっと湿っていた。
指先にはうっすらと赤い痕が残っており、流血はまだ止まっていないらしい。
このまま放置しておく理由も無し。
ダンディな傷跡は少し憧れもあるけど、やっぱり玉のお肌の方が良いからな。
という訳で、一本飲み干す。
ちゃんと腰に手を当てて、天を仰ぎながら、ごくごくと。
それで痛みは消えたが、まだ傷は残っているみたいだ。
更にもう一本。
ついでにもう一本を半分飲んで、残りを傷口にぶっかけて見る。
すると、途端に頬からペリペリとカサブタが剥がれ落ちて、傷一つないお肌が再生された。
うん、良かった。
鏡がないから分からないけど、触ってみた感じでは傷跡は無さそうである。
……ローポーションでも効き目凄いよな。
ミドルポーションとかハイポーションになると、どれくらいの効き目があるんじゃろ?
というか、それを使わざるを得ない傷って、どんなん?
まぁ、良いや。
手が届かない代物の話なんてどうでもいいし。
それよりも、戦利品の確保じゃー。
お楽しみタイムですよー。
ボス討伐すると、特別ドロップがあるらしいから、ウキウキワクワクが止まらないぞい。
まずは、いつも通りの魔石回収です。
雑魚共は、まぁ、いつも通りで。
もはや見慣れた小さい魔石と、それよりちょっと大きいサイズの魔石が、それぞれ五個ずつ落ちていた。
そして、ボスの魔石として、拳大の魔石を獲得した。
黒いそれの中には、明るい場所で見ても分かる程の、不思議な揺らめきが灯っている。
これは、あれだ。
ボスが纏っていたオーラと同じ色合いだ。
何か特別な効果があるのかどうかは知らん。
きっと良い値段が付いてくれるだろうという事だけが、しがない一鎮伏者には重要である。
金だ! 金がいるのだ!
そんでもって、面白い事に、ボスの蛮刀が残っている。
いやー、これってドロップアイテムって事で良いんですよね? ね?
第五層の武装ゴブリンは、持っている武器をドロップする事があるって話だし、これもその一種だよな?
見た目からしてごついこの武器。
そして、実際に俺の気功防御さえも突破せしめた攻撃力。
それを考えれば、その値打ちたるや、天井知らずの鰻登りですよ、きっと。
うへへへ、想像しただけで涎が止まりませんぜ、親分。
ちなみに、自分で使うという選択肢はない。
だって、もう拳系戦闘スタイルが板に付いてきちゃってる気がするんだもん。
今更武器とか、ねぇ?
強いて言えば、やっぱり防具くらいは何とかすべきかなぁ、と今回の戦いで思ったけど、まぁそんだけよ。
武器などいらぬ。
この拳こそが我が必殺の攻撃手段である。
なので、売却一択であります。
持って帰るのが大変そうだけど。
なにせ、俺の身長くらいありますよって。
まぁ、元気回復したし、気功強化で上まで走り抜ければ大丈夫かな? 多分。
そんでもって、戦利品はこれで終わりではありませんぞ。
最後に、ボス部屋の奥へと向かう。
そこには、小さなレリーフが存在しており、不思議な光の塊のような物がその上に浮かんでいる。
これは、虚数領域内を循環するエネルギーの塊のようなものらしい。
これが虚数領域内でモンスターを造っている源だと言われている。
じゃあ、破壊すれば虚数領域は無力化できんの?
って話だが、現実としてこのレリーフを破壊出来た事が無いので、確かめようがない。
おそらく、そうすれば人類の悲願でもある虚数領域の無力化が達成されると思われるのだが、虚数領域を上層から深層まで一気にぶち抜く、世界最強の攻撃力を誇る鎮伏者の全力攻撃でさえ耐えきって見せたので、今は無理だと諦められている。
そんな代物なのだが、有効な活用手段はある。
主に鎮伏者にとっては。
そもそも、スキルって何って話なのだが、虚数領域のエネルギーが人体に宿った事で生まれる特殊能力、というのが簡単な定義である。
身も蓋もない言い方をすれば、人体をベースにしたモンスターが、鎮伏者たちの正体な訳だが。
ならば、このエネルギーの塊ってスキルの源なのか? というと、YESである。
この光を破壊すると、エネルギーが拡散し、周囲にいる、具体的にはボス部屋内にいる鎮伏者の能力を上昇させてくれる、素敵装置なのだ。
ちなみに、ピンチに陥ったからと言って、ボスと戦っている合間に破壊してはいけない。
そんな事をすれば、確かに鎮伏者の能力が底上げもされるのだが、純エネルギー由来生物であるモンスターは、もっともっと強化されてしまうのである。
更にピンチになっちゃうから、絶対に迂闊な真似はするなよ、と耳にタコができるくらいに講習で言われたものだ。
まっ、今はもうボスも雑魚もいないから、関係ないけどねー♪
さぁさぁ、どれくらい強くなれるかなー?
逸る気持ちをちょっとだけ抑えて、取り敢えず今の俺の能力測定してみようか。
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吉田義之
鎮伏者段位:初段
固有技能:気功法【PowerUp】
後天技能:初等格闘術(熟練)・大食い【New】・痛覚耐性(弱)【New】
~~~~~
お? おお!?
まだ壊す前から能力が進化しておりますよ!?
やったね! 死闘の御褒美だね!
わぁい!
まぁ、微妙にツッコミどころもあるんだけどな。
痛覚耐性は分かるんだけど、大食いって何?
それってスキルなの?
意味分かんないんだけど。
いや、最近、フードファイターばりに食べまくってるけどさ。
何の意味があんの?
っていうか、マイナス効果とかじゃないよね?
そうだよね?
ま、まぁいいさ。
気にしないでおこう。
ひとまず、気功法の詳細を見てみようか。
~~~~~
固有技能:気功法
・身体強化【PowerUp】
・疲労軽減【PowerUp】
・発勁【PowerUp】
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うむ、軒並みパワーアップしてる。
けど、新しい要素は増えていないようだ。
残念。
でも、まだ期待はあるぞ!
これから更なる強化がされるんだからな!
但し、気功法も強くなるかどうかは不明だけどな!
という訳で、光の塊を、ドーン。
特に何の感触もなく、触れただけで弾ける。
一瞬の閃光が目を焼き、全身を光が通過していった。
そして、それだけだった。
ぬぬぬ? これでおしまい?
こう、「ち、力が湧いてくる!」的な感じはない訳?
つまんなくねぇ?
エンターテイナー失格だわー。
仕方ない。
お前の実力は結果で見せて貰おうじゃねぇか。
しょぼい結果だったら、思っくそ蹴ってやるからな?
~~~~~
吉田義之
鎮伏者段位:初段
固有技能:気功法【PowerUp】
後天技能:中等格闘術【PowerUp】・大食い・痛覚耐性(弱)
~~~~~
むむ~。び、微妙?
ま、まぁ?
気功法がパワーアップしてるし?
格闘術もなんか中等に進化してるし?
充分にプラスされてるんだけど、こう、いまいち、凄ぇー! って驚くに値しないというか、ねぇ?
分かる? 分かってくれる?
この気持ち。
~~~~~
固有技能:気功法
・身体強化【PowerUp】
・疲労軽減【PowerUp】
・発勁【PowerUp】
・殻破【New】
~~~~~
おぉ!?
なんか新しい能力が生えてる!
すまなかったよ、不明エネルギー君!
俺は君の事を信じとったで(テノヒラギガドリルブレイク)!
でも、字面からどんな能力なのか、さっぱり分かんねぇー。
発勁は、まぁ、漫画知識とかでなんとなく予想付いたけどさ、殻破って何なのさ。
何? 殻を破んの?
何の? 防御突破?
相手の防御力無視系ですか? こう、鎧通し的な。
出来たら良いね。
本当にそうだったら、俺様、諸手を上げて喜びます事よ?
まぁいいや。保留で。
またも効果も発動方法も不明な代物だからね。
どうせ、その内、なんか思い出した頃に発動したりして、なんとなく使い方を悟ったりするようになるだろ。
きっとそうに違いない。
そうだと良いな。
それよりも、基礎能力がアップしまくっている事を、今は喜ぼうじゃないか!
一段階進化した時もかなりの強化具合だったけど、今回はなんと二回もパワーアップしてますですよ!?
こりゃもう、俺は最強だね!
向かう所敵なしって奴だね!
ひゃっほう!




