恥ずかしい魔女
ウルトラ短い。
キリが良い所だと、こんな事に。
前話と繋げりゃ良かったかも。
妹視点。
「ふぅ……」
ちょっとお腹が重い。食べ過ぎちゃったかも。
部屋に戻った私は、椅子に座って一息吐く。
ベッドの上を見やれば、鎮伏者をやっている時の衣装を詰め込んだバックが載っている。
皺にもなるし、汚れもあるから洗濯もしなくてはいけない。
なので、このまま寝てしまいたい気持ちを我慢して、中身を広げる。
出てくるのは、黒を基調としたフリフリの衣装だ。
マントが付属し、ツバの広いとんがり帽子もある。
所謂、魔女っ娘衣装だ。
可愛いとは思うんだけど、荒事をする為の衣服ではないと思う。
「……こんなの、見せらんないよ」
恥ずかしすぎる。
良い年して魔女っ娘なんて、顔から火が出てしまいそうだ。
変に似合ってしまう所も問題である。
小柄で童顔な私が着ると、ハロウィンで子供が仮装しているような可愛らしさが出てしまう。
パーティメンバーは、女の子だけだし、皆、似たり寄ったりなのであまり気にしていなかったのだが、お兄ちゃんに見られると思ったら駄目だった。
絶対に笑われる。
それだけは、私の矜持にかけて、必ず阻止せねばならない。
「とはいえ、どうしよっかな……」
売り出されている衣装は、どれもこれも仮装グッズじみている物ばかりだ。
世間で鎮伏者がどういう存在と思われているのか、よく分かるラインナップである。
だから、市販品で揃えれば、結局は似たような感じになるだろう。
ならば、オーダーメイドならどうか。
こちらならば、自由にデザインできる。
地味で無難な物だって大丈夫だ。
但し。
「高いんだよね~……」
虚数領域で通用するレベルとなると、そこらの鎧やら何やらよりも、よっぽど頑丈だし、特殊な能力が付与されていたりする。
しかも、モンスター素材だって、取り扱いが難しいものが多い。
その為、鎮伏者装備の製造者は、国家資格を要求されるし、その関係で依頼額も鰻上りとなっている。
高給取りとされる鎮伏者であるが、質の良い装備ほどお金がかかるので、収支としてはトントンという場合が多いのだ。
私も、探索が軌道に乗り始めて、貯金が増えてきてはいるけれど、オーダーメイドを注文できるほどではない。
残念ながら。
「何とかしないとなぁ」
無い物ねだりだけど、何とかしたい。
そんな乙女心の狭間で、私は深々と溜め息を吐くしかなかった。