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7話 女王無双・アット・王宮

 城までは3キロもない距離だった。歩きやすい靴になり、足取りは軽い。エリーたちも馬を引いて歩く形で同行する。演習場を少し離れると、田園の中を歩くようになり、次第に民家らしい建造物が散見された。たしかに、白昼、謎の僧侶の集団が歩くのは、目立ちすぎだろう。

 やがて、城門に至る。だが、石壁でガチガチに固めた城域ではなかった。水を湛えた堀で囲まれてはいるが、木の植え込みが城壁のようにめぐらされ、要所要所に石壁のやぐらが築かれていた。

「人間同士での戦は長い間ないから、城壁も不要なの。竜は城壁があっても飛んで越えてしまうからね。ただ、防御拠点は必要。だから、ああやって堅牢な櫓を築いているわけ」

 エリーの解説に何人かが納得する。特にひろし章吾しょうごの歴史マニアふたりは、変な感嘆でそれを聞いていた。

 城門を入ってからが、案外に長い。民家や店のような建物が立ち並び、その間にある大きな道を進んでいく。正面に明かりが灯った一角がある。あれが王宮なのかもしれない。

「それでは、私たちはこのまま王宮の方へ向かいます。みなさんは、そこの衛門府えもんふの客殿を使ってもらいます。リサとハンナの指示に従ってください」

 城に入ると、少し言葉遣いを変えると宣言していたエリーが、そのとおりに改まった口調で言った。公式に近い場では、余所行きの言葉も必要なのだろう。

「了解です。では、ウチのリーダーをよろしく」

 遼四郎りょうしろうがいないときは、キャッチャーの秀樹がその位置に自然になる。ナインたちは、リサらに導かれ、建物の方に消えていった。

 残ったのは、エリーと遼四郎、そして、富夫とみおだった。

「悪いな、富夫。俺だけじゃ自信がなくて……」

「別にいいよ。遼四郎が決めたのなら、俺は従うよ」

 富夫の同道は、遼四郎からエリーに頼んだことだった。もちろん、女王からの許可があったわけではないので、どこまで一緒にいられるかはわからない。だが、遼四郎には、彼が必要だった。

「じゃあ、私たちは急いで汗を流してから、王宮へ入りましょう」

 そう言って、エリーは王宮の外門をくぐっていく。さらに、もうひとつ門をくぐったところがエリーがめざしていた場所らしい。

「私の家は、王家と近しい間柄にあるので、その家も王宮内にあるの。要するに、私の実家ね。楽な気分で使って」

 エリーに伴われて入ったのは、巨大な邸宅だった。中には靴を脱いで入るのだが、二日に渡って履きっぱなしのソックスは、恐ろしく汚い。

「外で足を洗えるから、拭いたら、裸足で上がっていいよ。で、そこの右の部屋で待ってて。座って汚れても平気だから、気にしちゃダメよ」

 そう言ってエリーは家の中にパタパタと入っていく。足を洗った遼四郎と富夫は、指示された部屋に入る。床は畳だった。驚いたふたりは、顔を見合わせて笑う。そして、思いっきり寝っ転がった。

「ああー、気持ちええ!」

「同じく!」

 そうして、ポカンと天井を見上げる。石でもコンクリートでもなく、木だ。

「なんか不思議な気分になってきたぞ、富夫。彼女の家に招かれるのって、こんなんかな?」

「あきらかに違う状況だけど、似てるかも」

「ま、なるようになるわな。お前が一緒でうれしいよ」

「耕平の方がよかったんじゃないの?」

「ダメだ。あいつは俺をバカと思ってるからな。それに対し、富夫は俺への敬意がある」

「そんなのないよ。俺も遼四郎は半分バカだと思ってるし……」

 親愛なる富夫にスカされた遼四郎は、ガックリして首を畳に預ける。

「でも、残りの半分はそこそこ立派だと思ってるよ。俺のことをバカにしたことないし」

 富夫の素直な言葉に遼四郎が笑った。

「十分だよ。やっぱ、お前こそ俺の親友だ。耕平は格下げしてやる」

 バカな会話で笑っていると、エリーが入ってきた。何か、いろいろと持っている。

「ね、ふたり同時で悪いけど、お風呂で汗流してきて。タオルはこれね。手ぬぐいはこれ。女王はできるだけそのままの姿で、という話だから、服はそれでガマンしてね。でも、あの靴下はありえないので、代わりにこれと、ついでにこの下着も使って。私もお風呂に入ってくるから、その時計で30分後には出発よ」

 猛烈な勢いで話すエリーに圧倒されたが、要領はいいので、むしろ、気持ちよかった。

「了解。しかし、エリーって奥さんになったら、スゴイ能力発揮しそうだな」

 ようやく、遼四郎も彼女に慣れてきたようだ。

「何言ってんの。早くしないと、お風呂の途中で連れていくからね」

 そう言ってエリーは慌ただしく出ていった。遼四郎は富夫と目を合わせ、ニヤッと笑った。


 風呂は豪勢な露天風呂だった。でも、ゆっくりと楽しんでいる余裕はない。遼四郎と富夫は、ふたりで背中を流し合うようにして、身体を洗う。

 短時間でサッパリしたふたりが元の部屋に戻ると、ハンガーに架けられたユニフォームの下で、お香のようなものが焚かれていた。袖を通したが、たしかに、汗臭さは気にならない。

「入って大丈夫~」

 外からエリーの声が聞こえた。応じると、こざっぱりしたエリーが、軍服とは異なる着物のような衣装で現れた。濡れた髪が、そのキレイさを際立てる。そんな彼女が遼四郎らを値踏みするように眺める。

「うん、それならいいね。じゃ、行こうか」

 振り返ってスタスタと歩くエリー。極めて素に近い彼女に触れたふたりは、なんとなく、得をした気がした。


 王宮は日本の城のように曲がりくねって歩んだ先に、巨大な天守てんしゅがある構造ではない。ただ、多くの扉をくぐり、まっすぐ歩いた先に王の間があるという中国の王城に近い構造だった。深夜のことなので、人は少なく、扉ごとに衛兵らしい人物がいるだけだった。

 最後に至った扉の前で、エリーはひざまずいて声をかける。

竜掃使りゅうそうし、エリー・ゼト・アカシ。ご報告のために参りました」

 遼四郎と富夫も同じような姿勢をとった。

「入れ」

 合図と一緒に扉が左右に開いた。立ち上がって進むエリーに倣い、遼四郎らも前へ向かう。扉が閉められた。中央には着座した初老の女性がいる。これが女王だろう。そして、右と左に一名ずつ、こちらも初老の男性がいる。椅子はあるが、両者とも立って睨んでいた。もう一度、女王らの前にひざまずいたエリーと遼四郎たち。すると、右にいる男性が口を開く。

「ゼト・アカシ竜掃使。その2名が、おぬしが遭遇したという、“トライビト”を名乗る輩か?」

 高圧的な言葉でエリーに問いかける。遼四郎は、下を向きながら猛烈に緊張してくる。すると、女王が先に口を開いた。

「あのねえ、ジョージ。せっかく別の世界からやってきてくれた若者に、なんて口の利き方するのよ。ホント、年をとるのって嫌ねえ」

「え、いや、その格式もあることですので……」

「別の世界から来た人に格式もへったくれもないでしょう? しかも、今はあなたたちの部下もいないのよ。偉そうにする必要もないの。そうじゃない? ジェラルド」

 急に話を振られた左側の男性が、面食らって顔を歪める。

「ははあーん。あなたたち、どちらが彼らの処遇をするかで、偉そうさを競うつもりね。ダメよ。彼らは私の直轄案件にするから、あなたたちはサポートだけでいいの。そうすると、競う理由もないわね」

 何か政争的なことが起きようとしていたようだが、女王は先に丸め込んでしまったようだ。やり手だな、と思った遼四郎は顔を上げて女王をまじまじと見た。

「貴様、女王陛下をジロジロ見るとは、無礼な!」

 今度は左の男が高圧的になった。だが、これも女王が封じる。

「黙りなさいジェラルド! あんたこそアホね。彼らが右も左もわからないところにいるのがわからない? 相手の気持ちを考えないの? 一度、兵隊からやり直しなさいよ」

 女王と高官らは、日常的なコミュニケーションは密なのだろう。だからこそ出てくる、口の悪い叱咤で、ジェラルドという高官は下を向く。威圧感が吹き飛ぶ。

「ごめんなさいね。遠いところから来たふたりに不快な思いをさせて。私が女王のマリー・デヨ・ヨートです。さあ、ふたりとも立ってください。顔を見せて。エリーも普通に話していいのよ」

 そう言われた遼四郎は、左右の男の様子を無視してスッと立ち上がった。同時に、後ろでは1メートル90センチを超える巨漢がそのボディガードのように屹立する。

 明らかに左右の男は富夫の威風に負けた。目に軽い恐怖が宿る。これを遼四郎は見逃さない。間髪入れずに口を開いた。

「女王陛下、拝謁はいえつをお許しいただき、ありがとうございます。私は東遼四郎、一昨日、急にこの世界にやってきた10名の長です。そこで、ひとりで交戦中だった、このエリー・ゼト・アカシさんに出会い、ともに竜を倒しました。そのご縁もあり、今、ここに至らせていただいております」

「いきなり、竜を討っただと?」

 ジェラルドと呼ばれた男が驚く。遼四郎はさらに踏み込んだ。

「当方には、このバティスタ富夫をはじめとした勇士もいれば、火球を操る戦士もおります。エリーさんに伺った話からして、陛下の国は竜害に苦しめられているようです。少しでもお役に立てれば、という志もあり、参上させていただきました」

 一気に話した遼四郎の顔は、完全なキャプテンモード。女王さえも押され気味で、エリーに向き直る。

「エリー、彼の話したことは本当?」

「寸分、違いありません」

 女王は小さく息を吐き、左右の男らを見て言う。

「あんたたち、彼らに謝りなさい。礼を言うのが先なのに、バカみたいに偉そうに……」

 タジタジになった2名に遼四郎は声をかけた。

「謝るなんて、勘弁してください。見ての通り、僕らは変な風体ですしね。それよりも、今後とも、ご指導よろしくお願いします。本当に何もわかっていないんです」

「こ、こちらも、至らぬところはあると思うが、不便ないように計らうつもりだ。よろしく頼む」

 ジョージと呼ばれた高官が、うなだれて、なんとか言葉をつくる。10代後半の若者に初老の自分たちが同格の位置をとられてしまった。だが、女王の方は好奇心を膨らませている。

「えっと、遼四郎さんでしたね。後ろが富夫さん。ありがとう。そして、エリーをこれからもよろしくね。この子はおっちょこちょいで、自分勝手で、まだまだ未熟。でも、私の孫みたいなものなの」

「お、おばあさま、そんな話をしなくても……」

「あら、いいじゃない。あなたを大事にしてくれる大切な人なのよ。なんでも知ってもらわなくちゃ」

 この会話には、遼四郎の方が面食らった。エリーって何者なんだ、と思う。

「ね、遼四郎さん、あなたを衛門府の征竜部隊長せいりゅうぶたいちょうにしちゃうわね。竜掃使長と同格。そうすれば、こんなジョージやジェラルドみたいな意地悪な大老にも対抗できるから。富夫さん、それでいい?」

「遼四郎ならば、できると思います」

「ありがとうございます」

 ほかが口を挟めない早さで富夫が答え、遼四郎が受ける。

「そんな、無茶苦茶な。秩序が保てません」

 気圧されていたジョージが、それでも逆らった。どうやら、とんでもない人事らしい。

「あなた、先ほど遼四郎さんに助けられたことに気づいてないの? この人なら、多少の衝突はあっても、うまくやれるわよ」

「いったい、何を根拠に……」

「男の子はね、顔を見ればわかるのよ。あんたたちも、もうちょっと顔を気にしなさい。老害丸出しになるわよ」

 女王の圧勝だった。ふたりの高官は完全にへこたれた。元々、頭の上がらない人間関係なのかもしれない。

「遼四郎さんたちは疲れたでしょう。エリーの家に戻って、ゆっくり休んでくださいね。ジョージとジェラルドも帰っていいわよ。エリーは、彼らの世話を誰かに頼んで、奥の間に来なさい。話がありますから」

 そう話して、女王は謁見を終えた。エリーと一緒に、遼四郎たちは部屋を出る。扉が音を立てて閉まった。


「もーう、最高!」

 エリーはそう叫んで、遼四郎の背中に抱きついた。完全にうろたえるキャプテン。

「あのために富夫君を同行させたのね。ジジイたち、完全に押されてたよ」

「遼四郎はああいうことに俺を使うんだよ。組み合わせ抽選会とかに同行させる」

「俺たちは年長者には敬意を払うよ。それでも、心理的優位は大事なんよ」

 遼四郎はねらっていたことが形になって気分がいい。

「これで城内でもフリーハンドができたね。でも、私の上官になるのかあ。敬語で話さないといけないね」

「それは勘弁してくれよ。あのムチャクチャな感じはもう味わいたくない。あ、でも、エリーは女王様に呼ばれてたよな」

「そう。だから、そこの衛兵さんに道案内頼むから、家に戻ってさっきの部屋で先に寝ててくれる」

「ああ、そうさせてもらうよ。さすがに疲れてきた」

「エモンフセイリュウブタイチョーを連れて帰るから、安心して」

「ありがとう富夫君、じゃ、明日の朝ね」

 そう言ってエリーは戻っていく。見送りながら、女の子の機嫌をとれたことに、充実感が湧く。ニヤッと笑って、遼四郎は富夫と前腕をクロスするようにぶつけた。


 女王は奥の私室に戻っていた。エリーが扉の前まで至り、小さくノックした。

「おばあさま、エリーです」

「どうぞ、入りなさい」

 扉を開けると、寝台の上に座った女王がいた。

「そこに座りなさいエリー。暖かいお茶があるから、ゆっくり飲めばいいわ。私は、こちらでお酒をいただきますけどね」

 そう言って、女王は湯飲みのようなグラスの液体を口にする。吐息とともに、やわらかい笑みが漏れる。

「大変でしたね。でもね、私は“トライビト”があなたのところへ現れてくれたことを、とても喜んでいるのです」

「でも、彼らは400年前の戦闘のプロとは違います。大きな期待をするのは酷です。たぶん、どこにでもいる普通の若者なんだと思います」

「本当はそんなこと思っていないクセに……」

 エリーは胸の奥の大事なところをいきなり突かれた気がした。幼少のころから、この人にはウソがつけない。

「あの人たち、本当にただの若者なんです。それなのに、いきなり、竜と戦って、私を助けてくれた。私が竜と戦って、いずれ殺されるかもしれない、という話をしたら、元の世界に帰れるかどうかも知らないのに、私を助けてくれると言いだした。なんだかわかりません。でも、泣きたくなるくらいにうれしくて、やさしくて……」

 エリーは一昨日の夜を思い出し、自然に涙があふれてしまう。女王はもう一度グラスを口に運んで息をつく。

「だから、あなたのところへ来てくれてよかった、と言ってるの。さっき威張ってたジェラルドのところに現れて、遼四郎君が助けてくれると思う?」

「え、それは、ムリ……」

「はっはっは、そうでしょ。あんなヒゲジジイを誰が助けるもんですか。でもね、遼四郎君たちは、弱くて、おっちょこちょいで、美人でかわいいエリーのところに現れたの。そりゃあ、いい男の子は、助けてくれるわよ」

「そ、そんな……」

「それでいいのよ、エリー。歴史も運命もへったくれもないの。若くて苦しむあなたを見て、同じように若くて素敵な男子が、手助けするよ、一緒にやろう、って言ってくれる。そうやって、人間なんか生きていくの。変なジジイになっちゃったけど、ジョージもジェラルドも、そんなところがあったのよ」

「おばあさま、なんかムチャクチャな……」

「ぜんっ、ぜんっ、ムチャクチャじゃない。遼四郎君たちはね、あなたが思っているよりも、ずっと純粋で、ずっと紳士。そして、勇敢なの。さっき、王である私の前で、いきなりハッタリを利かせたのよ。あなたのために、とんでもない勝負をしたの。あんな男の子、嫌いになれるわけないじゃない。大事にしなさい」

「はい」

 エリーは正直に答えた。遼四郎たちを大事にしたいと真剣に思っている。

「いつも文句を返すのに、自分が思っていることを言われると、素直なのね。じゃあ、あなたにも任務を与えるわね。今、ここでエリー・ゼト・アカシの竜掃使の任を解く。代わりに衛門府所属征竜部隊長の副官を命じる」

「ええっ!」

「なーに驚いてるのよ。うれしいくせに……。明日からもずーっと、遼四郎君たちと一緒よ。いいから、随行員を数名選びなさい」

 図星を指されて、猛烈にうろたえるエリー。でも、なんとか頭を働かせて、そこをごまかそうと努力する。“これじゃあ、すぐ焦る遼四郎と同じパターンじゃない!”そんな思いもよぎる。

「えっと、リサとハンナはすでに彼らと会わせて、その随行を命じているんですけど……」

「副官のケイもいないと、あなた何もできないでしょう」

「でも、彼女まで連れてったら、私の隊が維持できないし、ケイがいなくても、私はなんとかできます」

「無理ですね。だから、残念ですが、あなたの隊は解隊します。おっちょこちょいの上司を支えた人たちです。どこでも役に立ちます」

「おばあさま、口が悪いです」

「そんなのは、あなたが生まれる前からずっとです。ついでに、ヨーコも連れて行ってください。あなたを含めて5名を衛門府征竜部隊に放り込みます」

「いいんですか? ヨーコはあなたの実の孫ですよ」

「いいんです。あの子もあなたと同じようにチヤホヤされて育ちましたからね。ここらで、心根を叩き直さないといけません。それに、王家も前線に出るのが私たちの生き方なんです。文句は聞きませんよ」

「たしかに、ヨーコは仲のいい親戚なんで、私はやりやすいんですけど……」

「なら、いいじゃない。遼四郎君みたいないい男の子を、あなたに独占させるほど甘くはないの。ヨーコにもチャンスをあげなくちゃ、ね」

「おばあさま、何か企んでます?」

「さて、どうでしょうね。とにかく、明日からそうしなさい。彼らは疲れてるんだから、朝からはりきるのはダメよ。昼からでいいから、しっかりやること。正式な叙任は数日後になるでしょう。もう、帰っていいわよ」

「なんか、私に都合のいいことばかりで、気味悪いんですけど」

「わかってないわねえ。遼四郎君は、私でもヒゲジジイでもなく、あなたを助けたいの。純粋で勇敢な紳士と、まっすぐ向き合いなさい。私はそこで逃げるような子に育てたおぼえはないからね」

「私はまっすぐ向き合ってます!」

「ならいいじゃない。でも、もう一度言うからね。エリー、絶対に逃げるな」

「わかってます! たとえ遼四郎が逃げても、私が逃げるわけないでしょ!」

 最後はヤケクソになったエリーは捨て台詞を吐いて、女王の部屋から出た。グラスに残った酒を一息に飲んだ女王は、大きく息を吐く。

「本当に逃げてはダメよ。歴史も運命もへったくれもないの。まっすぐ向き合って、あなたが、あなたたちが、自分の手でつかみなさい」


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