【アーサー】第二羽
時間が空き、アーサーは最初の会議室に戻る。まだアーサーとハルトが話し合いを続けているはずだ。
コンコンッ
返事が無い…
「陛下達なら既に話し合いを終わらせ、各自やる事をやりに行きましたよ」
「あ、大臣さん。お疲れ様です」
締まりきったドアと睨めっこしていたアーサーに大臣が云う。
「陛下に御用ですか?」
「頼まれていたことが終わったので他になにか出来ることがないかと思い、指示を貰おうと思ってたんです」
「そうでしたか。アンナさんは財布を持って街へ行き、陛下は政治関係のお仕事でお取り込み中なので、今会うのは難しいでしょう」
「そうですか…では私も街へ行くことにします。戦いに役立つ掘り出し物でも見つかるかもしれません」
「お気をつけて行ってらっしゃい」
丁寧に見送ってくれる大臣さんに手を振り、お城を後にした。大臣はいつも親切にしてくれて、入ったばかりの頃からお世話になっていた。
レイ達みたいにレベリングにでも行こうかとも思ったが、明日にはお城に戻らないと行けないし、緊急の仕事が入るかもしれないので却下した。
武器や防具は最近一新したてで大丈夫なので、魔導書や便利な魔道具でもあればと思い、骨董屋さんに行こうと思う。
こうして歩いていると街は平和に見える。おそらく誰が見ても同じ感想を抱く。
しかしこの平和な光景はいくつもの犠牲の上に成り立っていることを知ってしまい、途端にこの平和な風景が不気味に見える。ハリボテのような、そんな感じ。
普通に生活していたら絶対に知ることのなかった真実。それだけギルドは狡猾に悪行を隠していたのだろう。ハルトは何とか被害のデータを集めることができたが、彼の父親はそれが叶わなかったと聞く。
悪行と言えば、アンナも何か被害にあったような口ぶりだった。
(胸でももぎ取られたんですかね)
酷いあだ名のお返しとばかりに悪態をつく。
胸が無いのを気にしているのだろうが、いちいち突っかかって来るのであまり好きにはなれない。ハルトの幼馴染だから黙っているが、そうじゃなかったら生ゴミに出していたかもしれない。
「あ、あのっ!」
「にゃっ!?」
突然尻尾を引っ張られ、つい変な声が出てしまう。
アーサーの尻尾を小さな手で握りしめているのは、4歳くらいの女の子だった。
彼女は俯いていて、今にも泣きそうな顔をしている。
「どうしたの?」
怖がらせないように、できるだけ優しい声で聞く。
子供は好きなので、つい口元が緩む。
「助けてください!」
悪など知らないだろう純情無垢な幼子が発した言葉は穏やかなものではなかった。
「何があったの?お父さんやお母さんは?」
そういえば辺りには彼女の親らしき人は居ない。
「ママがね…」
泣きそうな声で、女の子は何とか言葉を絞り出す。
ごくりと生唾を飲み込む。こんな幼い子供が助けを求めてくるなんてよっぽどの事が起きたに違いない。一体この子の母親に何があったと言うのか!?
「ママがね...
迷子になったの.....」
あー(察し)