【レイとティア】 part2
うきうきらんらんのティアちゃんを連れて森へ入る。喜んでくれて僕もうきうきらんらんだ。だけど切り替えていかなくてはならない、ここからは戦いに集中しよう。
人目が無いことを確認すると、ティアちゃんに合図を送る。
彼女はポーチから小さな球を取り出すと、それを力っぱい投げる。魔物ボール、霊魂球を加工して作られたそれは宙を舞い、木にぶつかるとパカッと開く。
中から光が漏れだし、光に包まれジャックが現れる。
どういう原理か、ボールは勝手に飛び上がるとティアちゃんの掌へと収まる。
「ふぃおんぬ!」
久しぶりの外にジャックが嬉しそうに飛び跳ねる。狭いところに長い間入れられ、窮屈な思いをしたのだろう。と言っても中がどうなっているかはわからないけど。
「ジャックくん!久しぶりぃ♡ 会いたかったよぉ!!」
いつものようにジャックに抱きつくティアちゃん。お互いに頬っぺをスリスリし合っている。
ジャックをボールにしまってからまだ2日経っていないくらいだけど、なんだか随分懐かしく感じる。やっぱり彼もパーティーの一員なんだとしみじみ思う。僕も寂しかったよ。
「ずっと閉じ込めてて、ごめんね?これからは思う存分暴れられるからな」
「ふぃ、ふぃーい♪」
シュッシュッとシャドーボクシングのように宙をパンチしてみせる。今日もジャックは元気いっぱいだ。
「さて!じゃあ適当に始めようか」
「はぁーーーい♡」
ティアちゃんが可愛く手を上げると、サファイアのイヤリングがきらりと輝く。
早速つけてくれたそれはとてもよく似合っていた。差し色の原理で、ビンクかかった彼女の髪と、蒼く澄んだサファイアがとてもよくマッチしている。
数ある宝石の中でサファイアを見つけたのは運命かもしれない。
ガサゴソ...!
後ろからの気配に振り返る。茂みが揺れていて、何かが近づいてくるのがわかる。
「シャーーーーー!!!!♯」
勢いよく飛び出してきたのはいつかの蛇だった。奴はくねくねと体を揺らし、こちらを威嚇する。
またお前か。この蛇はどこにでも居るらしい。アンナの話ではこいつは上位クラスの魔物らしいが、今の僕らの敵ではない。
「ティアちゃん!ジャック!行くよ!!」
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蛇の魔物も倒し、僕達は日が暮れるまで魔物を狩っていた。
霊魂球も着実と集まり、レベリングも順調だ。
暴食魔人、ブリガンダインと、強敵との戦いを経た僕達に、森の魔物達は全く歯がたたなかった。これならギルドとの戦いも何とかなるかも知れない。
辺りはすっかり暗くなっていた。
「さて、そろそろ戻ろうか」
...返事がない。
慌てて辺りを見渡すが、そこにふたりの姿はなかった。
暗闇に紛れてはぐれてしまったようだ。
まずい...冒険者にでも見つかったらと思うと鳥肌が立つ。
「ティアちゃん!ジャック!」
声がこだまするが、やはり返事は帰ってこない。本格的にはぐれてしまったらしい。
暗い森の中を必死に走る。辺りはどんどん暗くなる。
早く...早く見つけないと...!
「ティアちゃぁあああん!!!」