少年黙示録
俺こと双葉良太は、どうやらモテるらしい。
自慢でもなく、自画自賛でもなく、散々周囲からそう言われてきたので否定するのもおこがましいと、近頃は思い始めた。
もちろん、女性から好意の眼差しを向けられるのは悪い気はしない。
男性の友達も多いので、学生生活としては上々といえよう。強いていうなら、もう少し頭の出来が良ければ…とは思うが、これ以上願うのは罰当たりなのかもしれない。
そんな高校生活も二年目になったある日。
俺はふと教室の片隅にいる、有栖川という珍しい苗字の女性を目撃した。
クラス替えから一か月以上経ったというのに「え、誰?」と思ってしまうほど影が薄く、当時は少し驚いたものだ。
友達のいない生活を送っているようで、当然と言えば当然かもしれないが、それでも「別次元に住んでいる」とさえ思うほどに彼女は孤独だった。
「あいつ、本の虫って呼ばれるぐらい、本しか見てないからな」
彼女は同クラスの誰に聞いてもその程度の評価を受けており、別に虐められているわけではない。
どちらかというと、彼女は孤独へと自分から走っているようにすら見えた。
――まぁ、それはそれでいいと思う。
俺のように常に笑顔を振りまくような、疲れる生活を送る必要などない。
むしろあれだけ自分に忠実に生きている姿を、美しいとさえ思っていた。
「でも、あいつの両親事故で死んで、今お婆ちゃんと二人暮らしなんだとさ」
もう少し情報を手に入れようと、有栖川を中学時代から知っている男友達に、それとなく探りを入れてみたのがちょうど五月の半ば。
結果は予想以上に厳しい現実を叩きつけられたわけだが、それからというものの、有栖川という人間を常に視界に納めるようになってきた。
運動も積極性は感じられないが、決して運動音痴ではなく、むしろセンスはある。
聞いたところによると、成績も高校一年生の際は最初から最後まで学年総合トップの秀才。おまけといってはなんだが、長い髪と地味な眼鏡で隠れがちの、しっかりと整った顔立ち。
知れば知るほど段々と、有栖川美羽という存在が自分の中で大きなものとなっていく。それを好意と認識するのに、そう時間がかかったわけではない。
しかしそれ以上に「もっと笑顔になって欲しい」と願った。
もちろん、有栖川の心の傷を一人で癒せると思うほど、双葉良太は自惚れていない。その心の傷を癒すのは「一人の彼氏」では無く、「沢山の友達」だろう。
だからこそまず、双葉は最初の友達として、彼女の支えになりたいと思うようになった。
周囲の友達にどう思われようが、それこそどうでもいい。
もし有栖川に害が出るなら、自分が守るぐらいの覚悟があった。
「あぁ……これが、好きって感情かぁ」
だが双葉は、自分がまだまだ若かった事を知る。
まさかのこの行為そのものが、有栖川美羽が学校を止めるキッカケになるとは、思いもしなかったのだ。




