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第6話 図書室ではお静かに




その格好は目立つわ、とのことで、白と黒の戦闘用スーツを着ていた私は手渡された外套を身につけるよう促された。


そして走り出したユリ様の後を同じ速度で、どこに向かっているかはわからないが、ついて行く。


もう日はとっくに落ちている。


走りながら、先程ユリ様に告げられた、犯罪組織よ、という言葉を、私は考える。


ロボット三原則というものがある。


人間への安全性


命令への服従


自己防衛


この3つはロボットが従うべき最低限の原則だ。


しかし、現代、我々人型のアンドロイドが犯罪を取り締まるようになり、戦争を代わりに行うようになり、人間への安全性という原則は、個に対するものではなく、全に対するものに自然とシフトした。


つまり一部の人間が、多くの人間の安全性を脅かすのであれば、危険になりそうな人間は、全であり善である人間のために排除する、というものだ。


故に我々人型アンドロイドは人間を最悪の場合、殺してしまうことも想定されている。


さらに私はその中でも兵器の扱い。


命令された人間を殺すことに対して、作られた道徳に反しなければなんの忌避感もない。


だがそれは人ため、もしくはマスターのためであれば、という条件がつく。


とはいっても、マスターの命令であればやりたくないと感じても、命令を全うしたいという感情の方が強く感じるのだが。



「悩んでいるようだけれど安心して。別に進んで無害な人間を殺めるような組織ではないわ。」



彼女は走りながら私に語りかける。



「人のため。簡単に言ってしまえば義賊ね。盗むってよりかは殺してしまう方が多いのだけれど……。」



国が手を出せない者の処分、法の目を掻い潜る悪しき者の処分、誰の目にもとまらぬ者の処分かしら。


まぁ仕事をこなせば意義は分かるわよ。


私の言うこと、全て聞いてくれるんでしょ?と、彼女は続けた。



「マスターのご命令とあらば。」



私は仕える者が正義であると、信じなくてはならない。












かなりの距離を止まることなく走り続けると、大きな壁に囲まれた街のようなものが見えてくる。


その壁に備えられた門に、槍を持ち鎧を着た兵士と取れる人物が1人、微動だにせず立ち尽くしていた。


ユリ様は門番に何かを見せる。


すると門番は軽く一礼し、門を開いた。



「セラ、入って。」



門を潜り、目に入る街は静かだった。


もう月明かりが地を照らす時間だが、街を歩くような人はあまり目にしない。


打って変わって、少し歩くと見えてくる酒屋と思わしき場所は喧騒を保ってはいたが。







そしてまたしばらく歩みを進める。


ユリ様は明かりもついていない建物の裏口に回り込み、鍵を開け中へて扉を開け、中に入るよう促してくる。


中に入り、見渡せば、そこはたくさんの本が陳列されていた場所だった。



「ここは、図書館ですか?」


「ええ、そうよ。本の貸出を行っているわ。お金はかかるのだけどね。」


「少々お待ちください。1冊ほど目を通してもよろしいですか?」


「うーん構わないけれど、そんなに長くは待てないわよ?」


「1分ほどお待ちいただければ。」


「そう、ならいいわ。」



私は適当な本に手を取り、街に入る前に形を変え、ネックレスの形態になり私に身につけられているサポートと共にスキャンをかける。


膨大な情報量が、解析されていく。


言葉は解析済だが、取得していなかった文字の情報を解析しつつインプットしていく。


解析終了。最低でもこの国の文字はこれで問題なく使用できる。



「終わったの?」


「はい。お待たせしました。」


「それじゃあ行くわよ。」




ユリ様は図書館の中を迷いなく進んでいく。


そして隅にある部屋の一室の扉に鍵を差し込み、扉を開け中に進んでいった。


入ったその部屋の中は、本が無造作に積み上げられ、とても整理されているとは言えない状況だった。


書庫だろうか。


薬草に関する書物から、哲学に関する書物、医学らしきものや、児童書まで、カテゴリー理由されることなく、いくつかの山を作り上げていた。



「今日のお仕事はここの整理整頓ですか?」


「ふふ、そんなわけないじゃない。あなた冗談も言えるのね。」



特に冗談のつもりではなかったのだが。


ユリ様は腰を下ろし部屋の隅の地面を探り出した。


そして手を止め何かを弄りだし、それがカシャンという心地いい音を立てると、ユリ様は床の一部を引っ張りあげた。


覗くと、中に地下へ続く階段が続いてる。


とはいっても、このあたり周辺のサーチは完了しているので、把握していた地下空間に別段驚きはないのだが。



「どう?驚いた?」


「……ええ。とても驚きました。」


「…その顔は嘘をついている顔ね…。」



無表情でも少しわかるようになってきたわ、とブツブツ零しながら真っ暗な階段を降りていった。




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