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やってきました王都!

え? 10日前にもいたろって?

街に入っていないからセーフだよセーフ、俺森にしか来てないから。


ということで王都にたどり着きました。

城、壊れてます。



もう一度言います。

城、派手に壁ぶっ壊れてます。



「あー……すげーなこれ」

「ちょっとこれは予想外ですね……」


まぁすげー音してたし、外から見てわかるくらいに壊れてたからね。

急ピッチで直してるとはいえ、10日程度じゃ遠くからわかるくらいに壊れっぱなしである。

これはさすがに気まずい。


「まぁ獣人とはいえ10歳の子供に迫った王女が悪いんですがね」

「それな。なんで迫ろうと思ったのかも謎だわ」


確かに王女は18歳で適齢期だろうが、獣人は10歳だと体が大きいだけで子供である。

元々脳筋が多い獣人なので成人年齢になったら子供ができる、とかはままあることだが……。

逆に言えば成人までは絶対に手を出さないのも獣人なのだ。

何故なら妻子を養えないのに子供を作るとか本能的に避ける傾向があるから。


まあ、トールに関しては養えるだけの収入はあるだろうけども、それにしたって10歳だぞ10歳。

ねーよ!

むしろ適齢期だったらひとりで旅に出さないわ!(色々面倒が起きるから)


先ぶれは当然のごとく出しての訪問なので、すんなりと面会も即日に決まる。

むしろなんか言われるかと構えていたが、まさかの全部の予定を飛ばしての王とのじきじき謁見と聞いて俺は首傾げた。

嫌味の一つすらない、もんのすごく丁寧な対応に、速攻の使者対応。

王城内をこっそり『覗いて』みたが、多少判断に困るような薄いピンクがいるくらいで赤い点が存在しなかったのでリリの姉上の存在すらわからない状態になっていた。

いったいどうなってるんだろうか。リリの姉上はどこへ行ったのだろう。


うーん、城壊したの俺の息子だし?

外交上こっちの国のが大きいし、輸出その他で立場大きいのは確かなんだが、こちらが上位っぽい即日会見ってのはありなんだろうか?

なんか超重要案件扱いされてる気がするんだけど?


「そんなに謁見ってすぐあるもんなの?」

「いいえ? まあ、事の重大さに王が今更気づいて慌てているといったところなんでしょうね」

「へ?」


含み笑いをする宰相に、やっぱり俺は首をかしげる。

あれ?

なんか俺、見逃してることあるのか?


王城の中を探っても、どうもこちらに接すること自体が禁止事項なのかこちらに意識を向けている人員は多少しか感じない。

俺にとってハニトラ自体が地雷なのもわかられているのか、部屋付きのメイドも女官長レベルの落ち着いた女の人だったし……。

というか、女性の数自体が少ないな、この大使館。

ディアルドさんがなんでも手配してくれてるので、すっかり任せっきりで常識がよくわからなくなってるな俺。

まあめんどくさくないからそれでいいけど。


「まぁ君がそんな感じで自分の権力に無頓着であるからこそ、私たちは無干渉を貫いているのですがね。それを理解していない国が多すぎます」

「? そもそも俺に権力なんてあったっけ?」

「これですからね」


う、うーん。

この10年で結構やらかしをした覚えはあるんだが、権力があるかというとやっぱり首をかしげるんだけどなぁ。

聖魔法を使ってどっかの国の王様の病気治したり、危機的な状況になった国の魔物を張ったおしたり(ちなみに家族旅行中だった)ぐらいはしたが……。

権力って何? 美味しい?

監視されているのは知ってるけど、俺の目の前に直接来なければ割とどうでもいいと思っている。


「”親愛持ちを害すれば天罰が下る”」

「あ」

「いくら明言はしていないとはいえ、最も避けるべき案件をないがしろにしていた件は申し開きが不可能だと思いますよ?」


あーあーあー。

そういえばそんなのあったねー!

結構前に言われた覚えがあるけど、結局なぁなぁで誤魔化したから忘れてたわ!


「まあ、この件については私が表に立ちましょう。あとはいつも通りにお願いしますね」


はーい。

下手に言質を取らせるのは愚の骨頂!

黙って横にいます! お願いします!





で、通された謁見の間。

俺たちは絶句してその場で立ち尽くしていた。


目の前にいるのは王様。

ただし、椅子には座っていない。

むしろ椅子から降りてるし、警護含めて全員が立っていない異様な光景に俺たちは入り口で立ち尽くすしかなかったのだ。



「うわぁ……」



THE・土下座☆

まさかの入った部屋で王様が椅子の前土下座とかちょっとすごいインパクトだね!?

さすがの宰相様も口元がひきつったぞ!


あっけには取られていたものの、ディアルドさんはすぐに気を取り直して進み始めたのでこそこそとついていく。

なんていうか颯爽と靴音を響かせて歩いて行くのカッコイイな。

俺はつい隠密系を考えて全く足音を出さないようにしてあるので、こういう時はかっこつかないんだよな。

音が逆に一人しか歩いていないみたいで変な感じになってるけどごめん、そこまで気は回らなかったので許してほしい。


「顔をあげて、元の通り座っていただけますか?」


ディアルドさんは中央まで進むと、かなり通る声で王様に声をかけた。

まずはジャブ、といったところだろうか。

俺一人だと大慌てして失言しそうな光景なので、この人が味方で本当に良かったと思いつつ従者ぽく後ろに控えてみる。

王は少し迷っていたようだったが、宰相の言葉に従って椅子に腰かけた。


ちらり、と見る限り何とも反応に困る色が端々に目に映っているので何とも言えないんだよなあ。

謝罪って意味ではこれ以上ない感じで謝罪なんだろうけど、王様が土下座してるのって自国民からしたら微妙じゃない?

現に護衛っぽい人たちは頭こそ下げていないものの、王様が椅子を降りている関係か膝をついて横に待機していたのだ。

ぶっちゃけ苦虫を噛み潰したような顔でこっち見てるんだけど、なんでいきなり土下座しようと思ったんだろうな?

インパクト優先なの? プライドとか国のメンツとかその辺どこ行ったの?


「謝罪はまず客観的なお話を伺ってから改めて受け取りましょう。我々は断罪するためにここにいるのではありません。事実を明らかにするためにここへ来たのです」

「……」

「ですから建設的なお話をしましょう? そのような形ばかりの謝罪は不要です」

「……!」


ひいっ。

殺気だつ護衛の視線をものともせずディアルドさん言い切った!

俺も謝ってるはずの王様の色が青よりむしろ赤よりとか超微妙だなとか思いながら見てたんだけど、ディアルドさんにはもっと色々駄々洩れだったんだな……。

この人の人心把握は一体どうなってるんだ、本当に味方で良かったよ……。


「……すべてお見通し、というわけですかな」

「わたしは神ではありませんので、推測部分もあります。ですが、文書で送らせていただいた通り"未成年者への隷属強制"、この点において戦争になりかねないほどの事案です。まずはこの点についてお聞かせいただきましょうか」

「……あいわかった。調査内容をここへ」


まずは腕輪について話をするらしく、ディアルドさんが騎士に渡された文書を読み始める。

口頭説明じゃないんだね、二人して資料を読んでる姿とかシュールなんだけどこれほんとに謁見?

せめて会議室でやるべきなんじゃないの?


「ふむ、なるほど。要点をまとめると、やはり貴族の暴走……といったところですか」


調査書の内容は納得がいくものだったのか、ディアルドさんは一つ頷いている。

文書は俺にも配られたので簡単にまとめてみると、


・そもそもトールに関しては第一王女の婿にしようと画策している貴族がいた

・この国では一妻多夫が可能なため取り込もうとしていた

・結果腕輪が効力を発揮した


みたいな流れだったようだ。

待って?

そもそもトールが腕輪を大人しく付けた理由って、リリちゃんだよ?

なんか色々ダメなものを感じてるの俺だけじゃないよね!?


「ちなみに主犯となった王女に関しては、どのような対処をするおつもりですか?」

「すでに幽閉する手はずとなっている」

「ふぅん、なるほど? ずいぶん早い決断ですが、肝心の王位継承者はどうなさるおつもりです?」


……あ、俺にも読めてきたんだけどこの展開。

そういう流れになるのかぁ。


「……我が国の王位継承者はリリアしかおらぬ」

「つまり第一王女は廃嫡ですか」

「……あの娘はやりすぎたのだ」

「それがあなたの結論ですか、お話になりませんね」

「「!?」」


うっわぁ!?

俺も思わずディアルドさんの顔見ちゃったんだけど、あくどい顔してるよ!?

隣にいる俺がビックリするってどういう展開なの!?


「そもそもが王女のせいにして、肝心の自分の罪を逃れようとするのは感心いたしませんね」


え?

ええ??


「最初に言っておきますが、わが国はトールをこの国へ婿へ来させるつもりは一切ありません」

「だが、王位継承者はリリアしか……!」

「それはそちらの事情ですね。第一、リリア嬢の生存は私も確認していませんよ?」

「な!?」

「だってそうでしょう? ”トールはさらわれたリリア嬢を追いかけるために城を壊し、探し続けて父親の元までやってきた”んですからね?」

「……」


え?

ええええ?

ディアルドさんどういう展開にする気なの?

俺がわからないんだけど、どう反応したらいいのん?


「暴走したトールを保護したことは認めましょう。そして不可抗力とはいえ城を壊した一因であることを踏まえ、賠償責任については負ってもかまいません。――ですが」

「……」

「リリア嬢については知りません、報告をいただきましょう」


お……おう……。

いやまぁ、ディアルドさんの立場上知るわけないのはわかる。

助けたの俺だし、タイミング的にトールも助けられるわけがない。

そもそもが腕輪によって拘束されていたトールは、探し出すまでのタイムロスが数時間あったのだ(実際俺とリリちゃん、森の中で待機したし)。

つまり助けた俺が存在しない=リリアはすでに死んでるってことになるの、か?

え、暴論すぎるけどそれでいいの?


「リリアは……王家の森へ魔獣とともにさらわれたことはわかっている……」

「それで?」

「だが、一緒にいた貴族の息子もまだ見つかっていない、ゆえにトール君がリリアを救い出したものだと」

「おかしな話ですね? それですと、リリアは”王位継承権はすでに失っている”のでは?」

「!!!」

「それに……報告書を見る限りでも、あまりにずさんな計画です。なのにそれが通る環境。――王であるあなたが、何も見通せず、対処しなかったとはとても言えませんよね?」


あー……。

あー、そゆこと?

そゆことにしちゃうのか、腹黒いなディアルドさん……。


というか、リリアの誘拐自体はなんとなくわかってたのかもしれない。

王も予測つけてて、それを理由に第一王女を廃嫡させようとしていた動きもあった。

でも実際にはリリアは簡単にさらわれていった上に、襲われてたしそのままだったら恐らく食い殺されていた。

色々何かが重なった上での事故があったけど、それを全部土下座で済まそうとしたからディアルドさんが怒った、ってことなのかな?


重たい沈黙が下りる中、ディアルドさんだけが平常運転で口を開く。


「とりあえず、建設的な話をしましょうか?」




この辺は書き直すかもしれませんが、とりあえず


・王様はリリアに継いでもらいたい

・リリアをはめる計画を監視して逆に第一王女を廃嫡させようとした

・が、実際はリリアは誘拐されてしまった


の3点が理解できていればOKです。

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