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「うん、知ってたけど馬鹿なのかな? 馬鹿なんだろうな」




翌日。

俺はしっかりと密入国していました。

距離感がおかしい? ハッハッハ、ソンナコトナイヨー。ナイヨー。

もちろん俺が乗っているはずの馬車は、まだ国すら出ていない状態である。

俺の振りをすることになった生贄ぼうけんしゃには、殊更ゆっくり行くように伝えてあるので頑張っていただきたいものだ。

接待は受けると面倒なので、ちゃんと護衛もいっぱいついてるよ♪


俺?

俺は大蛇君に頼んで色々ショートカットした。

転移的なスキルは俺自身では持ってないんだけど、大蛇君は森から森なら転移できる特殊スキルを持っているのだ。

で、息子が訪ねた国は割と森だらけの自然の多い国。

余裕で隠密行動できるよやったね!


「じゃあスネーク君いったん戻って良し♪」


ミナによろしくねー、と伝えるとしゅるしゅると彼は帰っていった。

最初は俺が契約したはずなのに、何故か娘が大好きなんだよなこの蛇。

べたべたくっつかれると体が邪魔だからいーんだけどさ。

なお、名前はもちろん隠密行動からである。

名前つけてから本人喋れんやん、と思ったのは秘密だが。


で、冒頭に戻ろう。


俺は森の中から王都を見つめていた。

当然だが鑑定眼さんは絶好調で全開。

この距離なら息子の状態も余裕でわかるぅーと展開したところ、とんでもない返答がかえってきた。



―――息子さんが襲われかけています。拒絶して暴発しますので城壁が壊れるまであと5分。




暴発は駄目ええ!!

息子!! なんでおまえ10歳なのに貞操の危機に陥ってんの!

あと一発で壁ならぶっ壊せるんだね知ってた!

なんていう物理極振り!!


「隠密行動とか最早無理じゃん。速攻助けなきゃダメじゃん」


ぶつぶつと文句を言いつつとりあえずセレスをカードから戻してふと思う。

ん?

暴発出来るってことは、息子の彼女は傍にいないのでは? と。


「……あー、やばい。嫌な予感しかしない。この感覚は無視したら詰むやつだ」


馬鹿みたいに修羅場くぐってるとなんとなく予測がつくよね!

第六感的なスキルも鑑定眼に含まれてるんじゃないか? って思うくらいには嫌な予感は無視できない。


静かに目をつぶり、探索範囲を広げる。

王城。いない。

城下町。いない。

俺がいる森の中の可能性は? 遠くないから0じゃないな。

検索条件は”襲われていそうな女性もしくは女の子”。


「……いた。セレスで行けば5分で行けるか?」


森の中。

俺に敵意がない青い色の点と、その周りの赤い点は3つほど。

うん、これは息子より優先しなきゃいけない案件だな。

俺は壊れるであろう城を横目に、セレスでまっすぐに森の奥へ走り出した。





「はい、ご苦労さん」



どすどすどす。

どう見ても幼い女の子に襲い掛かっている大人を、セレスでのして到着。

ちなみに大人は人間でした。

走っている最中に幼い獣人の女の子の服を破ったのが見えたので、問答無用でぶっとばした。



YESロリータNOタッチ!!!



ぽかん、と空いた口がご機嫌でごろごろいうセレスの方を向いたまま固まっている。

セレスは狼だけどすごく愛嬌があるし、この子自身も多分イヌ科の獣人さんらしいから敵意は感じていないのだろう。

何が起こったのかわからない、と目を丸くした様子に先ほど襲われていたショックは感じられない。


「ねぇ君、大丈夫?」

「ふぁい!?」


垂れた耳がぴょん、と跳ねるのがとてもかわいいです。

セレスと俺を交互に見て、それからぶっとばされた大人2人を見て自分が助かったことがわかったらしい。

はっとしたあと、がばりと頭を下げてきた。


「だ、だいじょうぶれす! たすけていただいてありがとうございましゅ!」


あ、めっちゃ噛んでる。

噛んでるけどかわいいので許す。

うむ、パッと見幼いと思ったけど、身長が低いだけでそこまで小さな子供ではなかったようだ。

俺はさっと目線をそらすと、自分がつけていたマントを彼女の上に羽織らせた。

邪魔は邪魔だけど、セレスで疾走すると涼しいを通り越して寒いからつけていたのだ。

ぐっじょぶ俺。旅支度はちゃんとしておくもんだね!


「ありがとうございます……」


下着は破れてなかったけど盛大に服は破れてたからね!

興味があるわけじゃないけどそのままにしておくわけにもいかないんだわかるな?

だから息子よ敵意は飛ばしてくるなよ!?


「あ」

「あ?」


息子のことを考えたせいだろうか。

目をそらした先で、どかんという派手な音とともに、何かが崩れる音がした。


「え、え、え? な、なにー??」

「やっぱ間に合わないよなぁ……」


わかっていてこちらを優先したのだが、出来れば城ぶっ壊すのは止めたかったなぁ……。

そう思いながら俺は転がった大人を木にふんじばり、ひっそりと城下町に入るのはどうしたらいいもんかと考え込むのであった。




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