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「たーのもー」



勝手知ったる王都にやってまいりました。

あ、国内だから堂々と王城にやってきたよ。

ちなみに乗り物は宰相さんのカレスティード家のワイバーン君。

俺もテイムすればいいんだろうけど、所持すると面倒なので王都に行くときにはセレスで走るかワイバーン君で送ってもらうことにしているのだ。

息子が生まれたときに俺にもついた念話スキルに関しては王様と宰相にはばらしているので、用事があったらコンタクトが取れるのが強み。

急な話だったから本当はセレスに乗って二日ぐらい走ろうかと思っていたんだけど、最近は娘婿に執務を半分任せているから暇なんですとちゃっかり迎えに来てくれたので俺は余裕で一日で王都に辿りついたのだった。


ちなみに宰相様のディアルドさん。

結局フル鑑定した結果ティナの叔父さんであることが確定したので、実は娘や息子、ティナにはよく会いに来ていたりする……。

娘が生まれたときにさー、ついてたんだよねユニークスキル。

カードテイム。

あ、これ確定やん? と思って仕方なしに宰相さんにはティナのお母さんが宰相さんの妹であったこと、スキルを引き継いでいることはばらしたのだ。

養女とか言われたら断るつもりだったが、息子が生まれてから娘が生まれる3年ほどの間で色々やらかしまくったせいか、あっさりと「不干渉にします」と言ってもらえたのはとてもありがたかった。

結局俺の血縁はこの世界にはいないので、宰相様がほぼ息子娘の二人目のおじいちゃんをしてくれている、というわけだ。

生まれた娘はどうもティナのお母さんに似ているらしく、妹にそっくりですと大泣きされたのは良い思い出だったりする。


ちなみに肝心のお爺ちゃんであるディクさんは、数年前に結婚したがためにそっちが大変でなかなか会えない。

何で隣国の傍系の王女と結婚してるんだよディクさん。

色々権力関係とか台無しだよディクさん……。

隣国の立て直し要請にニックと二人で行き、そして帰ってきませんでした……とかいうやつです。

ちなみに嫁はニックの血縁だそうだ。

ニックくーん? 君やっぱ王族だったんだね知ってた。


閑話休題。

謁見の間を使うのは10年前拒否したのでいつも使うことになっている密談場所に出向くと、すでに王様と13歳になる王太子さんが待ち構えていた。

なのでさっくりと要件を切り出すことにする。


「ちょっと俺これから息子のとこ行ってあの国と喧嘩してくるんで、あとよろしくおねがいしまーす」


王様との謁見はぶっちゃけフリーパスだけど、内容が内容なのでいつもよりざっくりとした宣言である。

そう思いつつぺろっと伝えると、王様は頭が痛い……と頭を押さえた。

概要は念話で伝えていたのにいざ聞くと止めたくなるようだ。


「喧嘩を売るのは確定なのか?」

「確定ですよー」


何せ今も念話しようとしても阻まれるからね。

もはや罠ですと言ってるようなもんだよね。

寝ているとユニークスキルの念話が通じないことはあるんだけど、手紙が届いてから早1日。

さすがに丸一日寝るとかありえないし、手紙が出されたであろう数日前から夜の日課であったミナへの通信が途絶えたのだ。

その時点で嫌な予感はしていたので、実は各所に根回しは終わっていたのだった。



いつでも、行けるよ?



「今息子のトール君がいる国は……」

「獣人排除とはいかないまでも、一部ですんごく嫌われてる国ですね」

「つまり、拘束されている可能性も見ていると?」


王様がため息をつきながら地図を見始めるので、俺は一つ頷いて地図の一部をさした。


「俺は割と反対だったんですよねーこの国に行くのは」

「一部の貴族の……人至上主義だったか?」

「今はナンセンスだって言われてて、国からの招致自体は俺も受けてたんですけどねー。なんか嫌な予感しかしなくて。王城とかが危険そうだったんで近寄るなとは伝えといたんですが」


この国に入ったのが約10日前。

俺の息子って事で、実は割と各国諜報が見張っているからそこまで危険はないかと思っていたのだが……。

暴挙だよねえ、これ。

抗議するべき案件だよねえ、これ。


「だが、結婚については、本人の承諾があればできるのではないのか?」

「それが脅迫じゃあなければ俺だって許しますよ。年齢10歳だろとか、その辺はもうこの数年で諦めてますし、獣人は運命に出会ったが最後、離れようとしないのも知ってます。でもね、これはない」

「脅迫……」

「手紙1個で許されると思ってるなら、本気で俺のこと舐めてますよねー。どこの世界に手紙一つで息子の永住と結婚を認める親がいます? 数日前には恋人すらいなかったのに、ハーレム築きますとか……ねえ? まず間違いなく精神汚染を疑うか、脅迫を疑いますよ」


そして誘惑系が効かないことを知っている俺的には脅迫の一択だ。

だが、ここで一つだけ問題がある。


「ここからは俺の推測なんですが、恐らくトールは自分の運命を見つけたんじゃないかと思うんですよね」

「そうなのか!?」

「ええ、じゃないと手紙を自分で書いた理由がわからないので」


危険察知は俺レベルとは言わないまでも、自分の身を守れる程度には勘がきく子だ。

にもかかわらず、拘束、もしくはそれに準じる扱いに甘んじているとすればそれは一つしかない。

運命に望まれた場合だ。

これは、息子の運命の人自体が拘束されている場合にも適用される。


「あんな手紙を書いたら俺が出てくるのは目に見えてる。もし、本当にハーレム築きたいとか思うならまず事後承諾にしますよ、あんなん。俺の息子は俺が出てくることを察しないほど馬鹿じゃないです。俺がハーレム大嫌いなの知っててわざわざ書いてきたってことは、心配させないように手紙でも書けと言われて、俺に伝わるようにヘルプしてきたと考えるのが正しいです」

「な、なるほど……。そうなる、のか」

「ええ。俺がハーレムだいっきらいなことは周知の事実だと思うんですけどね? きっと手紙を検閲した人間はトールが諦めて書いたとでも思ったんでしょう」


で、俺が知りたいのは別のことである。


「で、現在の息子の位置をとりあえず知りたいんですけど、諜報の情報ではどうなってます?」

「3日ほど前から王城にて留学を勧められているのはつかんでいる。特に拘束はされていないようではあるがその……」

「もしかして女性に囲まれてます?」

「ああ。いつも女性に関しては距離を取る彼が、いったいどうして……というのは、確かに話題になっていた」


獣人は唯一以外には目もくれないもんな。

俺の息子も家族はともかくとして、ユニークスキル目的の女子貴族とか真面目に虫けらレベルの目で見るので俺が心配になるくらいだったんだ。

それが囲まれていても何もいわないというのは相当キている。


「その時点で俺に言ってきても良かったのでは?」

「そうは言ってもな……届いたのは昨日なのでな。手紙が届いていること自体は把握しているが」

「あー……」


そりゃテロ犯でもなんでもないから毎日定期報告とかではないか。

ある意味俺がこの国と懇意であるが故に、動向は見守る程度だったのだろう。

息子が生まれた際に色々ユニークスキルが増えたから俺としても結構うっかりすることは多いのである。

うっかりうっかりー。


「ちなみにそれにかこつけて、寄ってくるほかの国の面々とかは?」

「それはいないようだな。囲い込みに近いように感じられたとのことだ」

「ふうん?」


大体の諜報活動を聞いて、俺は今後の予定を立てる。

まずは国を通してからの抗議、というより慌てた父親の振りをして隣国へいくのが無難だろう。

どう考えたって息子の暴挙に慌てるべき場面だしなぁ。

罠は最大警戒しておくしかない。


「じゃあ、そゆことでおねがいしまっす♪」

「裏の事情を知っているとこれを送るのが億劫だな……」


俺の笑顔に空恐ろしいものを感じたのか、終始王太子が空気になろうとしていたのが印象的だった。

宰相?

孫に手を出した馬鹿に容赦するわけないよね。


俺は安心して脅迫文は宰相に任せることにした。

入国時期は2週間後。




あ、もちろん先に国に密入国するよー。

さあ、何がでるかねーぇ?




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