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「いやあ、緊張したっすねぇ」

「嘘つけ」


ダグさん宅に帰宅後、真っ先に口を開いたニックはのほほんとそんなことを言い出した。

めっちゃ嘘ついたこいつ。

ずっと面白がるだけ面白がって後ろにいたくせに何言ってんの!


「まぁ、ニックの出番がなくてよかったわよ」

「?」

「あら、サレスはニックのスキルって知らなかったかしら?」

「え? A級だってことは知ってますけどスキル? えーと、魅了無効?」


確かあの女冒険者に絡まれてた時も平然としていたな、と思い言ってみる。


「似たようなもんっすね」

「正確に言うとちょっと違うわね。特殊な異性に最初に好かれやすいとでもいえばいいのかしら?」

「……」


何それ滅べハーレム野郎。

あ、うっかりうっかり☆

全然うらやましくないからすごくどうでもよいカミングアウトだな。


「――異常なほどに、ってつけた方がいいと思うっすよ?」

「難儀な体質よねぇ」

「?」


異性に好かれやすいこと自体は悪いようには見えなかったが、ニックが珍しく苦笑しているのに目が釘付けになった。

あれ、こいつがこんな顔するのって初めて見た気がする。

よくよく考えたら特殊な異性ってなんぞ?


「正確に言うと、『魅了魔法を対抗する能力』みたいなもんっす」

「?」

「つまり、もしあそこに王女が入ってきたとしても、サレスに行く前に俺が遮れば俺相手に来るはずなんで俺が護衛だったっす」

「OH……身がわりか」

「正式名称は『異常反射』っす。状態異常に反応して、対抗して同じ魔法が発動するんすよ」

「何それユニーク?」


異常を反射しましょう、ってすんごい名前だな。

なんとなくしかわからん。


「昔サレスみたいな魅了魔法をかけてくる相手に嫌気がさして親愛持ちが後天的に発症したスキルらしいっすよ。そのスキルが発症した後に俺が出来てるってのも難儀な話っすけど」

「はー……」

「まーそんなわけで、さすがに俺でも王女様相手に下手こくと別意味でも大変なんで、ずっと扉見ながら緊張してたっす」

「なるほど?」


最初のせりふは俺を和ませるためではなく、本気で言っていたということだったようだ。

ユニークスキルというより体質……体質? なのか?

あの女冒険者が俺に魅了を使用しようとする→ニックが割って入る→ニックに魅了された女冒険者が以下略。

うわ、考えると気持ち悪い能力だなこれ。

自業自得とはいえ自分が魅了にかかるのか。


「ちなみに魔法じゃなくても体質も反射するんで、俺がモテてるときはつまりハニートラップもちがいっぱいってことっす」

「何そのすごいイヤな能力……」

「護衛としては貴重な能力っすし、魔物相手には状態異常にならないんで有用なんすけどねー。まあ、割と、きついときはきついっす」

「良くそれで女嫌いにならないな」

「そりゃあ男の本能ですしー、仕事外でこっちに興味のないお嬢さんを口説くのは趣味っす」


本能なのかよ!?

興味ない女子にあえて突き進むとかお前はMか!?


「でもまあ、半分くらいは仕事っすね~」

「はー……大変なんだな、お前も」

「サレス相手はそうでもないっすよ。ギルマス周りは一途な人が多いんで俺の扱いも魅了除けぐらいの認識っすし。お嬢も間違っても俺になびくことはないんで逆に超気楽っす」

「さよか」


何それ自慢?

まあ、ティナは俺ががっちり捕まえてるからニックにはなびかないけどね!!!

でもまぁ、これで少しニックが青い理由ってわかったかもしれん。

ティナがニックにどうこうしない限りニックも普通に接していられるってことなんだろう。

そしてティナがニックに興味がないので、俺の危機察知にも引っかからない、と。

なるほどなるほど。


「まあ、このスキルがあることで気づくと思うんすけど、父親がめっちゃ搾取された挙句俺も利用されそうになったんで俺は隣国が大嫌いなんすよね~」

「んん?」

「だからハニートラップ系は撃退しておくんで安心するっすよ~」

「んんんんんん?」


あれ、今どこからどうつながったん?

じゃあ俺は帰るっす~とあっという間に帰っていったけど、なんかお前も爆弾投下していかなかったかな?

きのせいかなー!?


「俺の周りには癖の多い奴が多すぎると思うんだ……?」


A級冒険者なのは知ってたけどユニークスキル持ちなのは聞いてないよ!?

しかも何気に君、今隣国の王族関係者だって言ったよねー!?!?!


「ニックは親愛はないし、便利だから王様には言ってないのよね」

「べんり……」

「ま、ギルドには色んな人がいるってことよ♪ だからサレスも安心して利用しなさいね? あの子が普通に生きている時点でギルドは『受け皿』なのよ。それをわかってもらうためにちょっとだけばらしたってことね」


ニックの言葉に驚いてないってことはエレンさんは知ってるとは思ったけど、まさかのエレンさん指示による暴露話だった。

確かに説得力は高いけど、ビックリ箱が多すぎると思うよギルド。

ぐったりしながらにこにこしたエレンさんに連れられて、すっかり馴染んだ客間に入る。



もうなんか寝たい……。



「サレス、大丈夫なのです?」

「あんまり大丈夫じゃないかなぁ……起きたら色々考えるから、今は寝ていい?」

「いいよ」


エレンさんが気を利かせてくれたのか、彼女はいつの間にかいなかった。

俺は着替えるのもおっくうになりながら、ベッドにぽふりと飛び込んだのであった。




あ、起きたら膝枕でした。

至福。





ついでのニックさん事情。

全部後回しなので次の回は回収回。


…に見せかけた戦闘(?)回です。

ストックに追いついたのでしばらく不定期ですが、11月中に王都編は終わらせますのでご了承くださいませ。

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