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後編。き、切りどころがなくてくそ長い……。



有効範囲についてしっかり言っちゃうとスキルの説明になると思ったので、「たぶん王女から離れれば大丈夫な気がする」というあいまいな範囲にとどめて答えてみたら真剣に考えこまれた。

元々文官であり、誘拐とかされたら困ってしまうユニークスキル持ちの宰相は基本王都を出ない。

そのため王都から出ても大丈夫な範囲ぐらいで5㎞なのかなという検討して門までと言ったのだが、ことはそう簡単に運ばないみたい。

でもなぁ、この王都意外に広いんだよ。

有効範囲が㎞で出てきちゃったので説明しづらいんだけど、貴族街、市街地、門と直線距離で離れて5km以内なのかなと推測したんだけど。

馬で通ってきた部分もあるからわからんな。案外貴族街だけで5㎞四方あるのか?

さすがにでかすぎるような気がするんだけど。


距離を稼がずに時間経過で考えるのもありなんだけど、2週間ぐらい会わなきゃ大丈夫とか言えないよなぁ。

そこまで正確にわかるとアレだよね。

ちなみにスキル名はなんかそんな感じに思ったと誤魔化しました。


対策用の魔道具とかついてなければ、「なんかスキル使われたっぽい」ぐらいにしか感じないのは知っているので、大部分はにっこりと笑ってごまかす。

獣人は感覚が鋭敏なので、余計勘づくらしいんだよね。昔ティナに見せたときにはっきりとスキル発動のブレと勘づかれていたし、やっぱり人間でも気づく人は気づくっぽい。

そのため俺は鑑定眼を人に多用することは、基本はやめている。

警戒色や範囲がひろーい使い方に関しては個人の鑑定ではなくて人の気持ちを察するみたいな扱いになるみたいでほとんど気づかれない。

なお、ティナによると外見上の変化もないそうだ。

やっぱり便利だよね俺のユニークスキル。

(こっそり距離取りまくった後で単体鑑定すれば誰がやったかわからないんじゃない? とは思ってるものの、察知された時が怖いので現状はお蔵入りである)


「……ちなみに門までというのはどういう基準なのだ?」

「その範囲でしか動かないと思ってかけてるんじゃないかなと思って。だったら門の外まで行けば確実に解けそうじゃない?」

「一理あるか……」


さすがに隣国まで行けと言ったら拒否るだろうが、門までというならばぶっちゃけダグさんがついて行けばほぼ危険はない。

なので現実的かなと思えるレベルで提案してみた。

ぶっちゃけ距離を稼げばいいだけなので、馬車から出る必要ないし。


「……ふむ。じゃあ飛んでみましょうか」

「へ?」

「距離を稼ぐのは上空でも問題ないですかね?」

「横に稼いでも上空なら問題ないぞ」

「それもそうですね。そうしましょう」


ぽかーんとする俺に、のんびりと会話する王様と宰相。

うんん?

宰相、空飛べるってこと?


「空、飛べるのですか?」


きらきらと会話に食いついたのはティナ。

セレスに乗って疾走するのが好きなティナは、当然スピード狂である。

空も飛びたいんだね、わかります。

俺も飛べるなら飛びたいし!


「ええ、1匹いるんですよね。乗れるのが」

「……!」

「代々継いでいるワイバーンがいます。基本はおとなしい子ですし、たまには乗ってあげないとかわいそうなので丁度よいかと……そういえばここ数年乗っていませんでしたね、なんででしょう……」


たぶん無意識に命令解除になりそうなことはしないようになってるんじゃないかな?

まあ、自覚したら解除できるレベルっぽい気はするのでいいけど。

徐々にピンクがはがれてる感じがするので、自覚があると抵抗値が上がるとかなのかもしれない。

ピンクが消えた後の色はやっぱり青で、この人なんだかんだ良い人な気はする。

もちろん俺たちがダグさんの庇護下にいるってことが大きいのだとは思うし、仮にも一国の宰相だからこそ油断はしてはいけないと思うが。


「ふーむ。宰相が何か問題あるスキルの影響下にいたとすれば、話は後日に持ち越した方が良さそうか……」

「いえ、持ち越されても俺の意思は変わりませんし、宰相さんの娘さんを形ばかりといわれても嫁にする気はありません。そこはもうはっきりさせたいです」

「そうか……」


逆に本領発揮されると丸め込まれそうだから俺イヤだ。

なんかこの人、スキルによってバカになってる気がしてならないんだもん。

俺の勘を肯定するように、やっぱり微妙に赤いオーラがちらちらと見えている気がするし。

……って、うぇ!?

冗談じゃなくなんか近づいてきている気がする!?


「だ、ダグさん! 扉張り付いて!!!!!」

「は!?」

「いいからーー!!!」



視界の隅にはいつもの警告文。


――危険が迫ってきています。逃げましょう。


ってなんか増えてる!! 増えてるよ鑑定眼さん!

逃げなきゃいけない脅威ってどういうことかな!?

しかもいきなりすぎるんだけどどうやってぽっと現れたのかな脅威さん!?


「お、おいサレス?」

「あなた、とりあえず扉抑えたらどうかしら?」

「ああ? ああ」


ダグさんが文句を言いそうな雰囲気で扉の内側に閂をかけた上で開かないように抑える。

ってこの扉、内側から開かないようにはなるんだね。

と思った瞬間に響き渡る、扉を開けようとした音。


「「!?」」


ぎりぎりのタイミングだったので目を見張る王様と宰相を横に、顔を険しくするダグさん。


「おい、このタイミングで密会しているこんな部屋の扉開けようとする阿呆なんて俺には一人しか思い当たらないんだが」

「奇遇ですね。私もです」

「俺もです」


見るまでもないよね。

なんかラスボス、来たわ。







しばらくがっちゃがっちゃいっていたが、あきらめたのか音がしなくなる。

警戒は出ているので身構えつつ王様を見れば、一つ頷かれた。

なんか扉の前でわちゃわちゃしているような気はするけど、俺は何も見ていません。

エレンさんが苦笑しながら扉を見つめているけど、俺は何も見ていませんとも。


「一応密会場所であるのでな。防音が強いてあるし扉をそれこそ斧かなにかで数人がかりでぶち壊さない限りは開かぬ」

「ぶち壊さない限りは?」

「ああ。というか通すなと厳命してあるゆえ、そもそも扉が開こうとすること自体が命令違反なのだがな……」


そういえばあの娘がかかわると時折兵士が妙なことをしていたかもしれぬ。

そう王様は呟いて、はぁとため息をついた。


「王族が持っているユニークスキルを隠していたうえ、自分の思うように使っていたとは……頭が痛いな」

「確かに有用そうななスキルではありますが、自分が現在進行で使われているとなると正直不愉快ですね……」

「あれの頭は足りぬからな……」


あ、そんなあほの子なの……。

まぁそうだよなぁ、思考干渉とか使い方によってはとっくに王位とか奪われててもおかしくないよなぁ……。

有効範囲が狭い可能性はあるが、俺の鑑定でもユニークスキルって出てるってことは、かなり有用なスキルのはずなんだ。

つまり、使っている子の頭が足りてないってのは確かに同意できる。

そもそも王様に使って王位譲れとかすればいいわけだし?


まあ、周囲がめっちゃくちゃ止めると思うし、この思考干渉3分の1とか出るから人数制限もありそうな気がする。

効果範囲も5kmは広いと思うが、外交してたり領地がある人じゃ継続的に使用するのは不可能だもんね。

あとそもそも使いすぎると外交にもヒビ入りそうだ。

あほの子なら余計である。

神様、もうちょっと選んで継承させようよ?


「しかし代々伝わっているユニークスキルとは種類が違うように思う……もしや亡くなった義姉上が持っていらしたのかな……」

「高位貴族でしたからユニークスキルの先祖帰りも十分考えられますね」

「そうだな。あの後は我が王位に就くに当たって王女のことも棚上げされておったし……有耶無耶になったのであればあの時期であろうな」

「逆に隠されたのかもしれません。傀儡になりえる方ですし」

「かもしれぬな」


ようやく騒動が収まったのか、扉は動かなくなったが赤い点はまだある。

この赤い点どっかで見た覚えあるな……ああ、思い出した。

城調べたときにあった特大の赤点の人かな、これ。


そういえば俺、赤い点を見たのに絶賛スルーしてたよなぁ。

スキル名が思考干渉なら、自分を調べようとした人を意識的に素通りさせるとかの干渉もあるのかもしれないな。

よくよく考えたらスルーしてた俺とか、俺自身が予想外だもん。

本来ならずっと城に入っている時点で警戒していなきゃいけなかった俺が、直前にしか気づかなかったってのも多分スキル同士が反発してたと考えられそうな気がする。

あくまで気がするだけだけど間違ってもいないと思う。


「もしかして、ここは彼女の領域なのかな」

「領域?」


ぼそ、と結論を出すと耳の良いダグさんが俺の言葉に反応した。


「うん。あの王女、城に住んでるでしょ? 城の中だと影響が強いとかありそうだなって思って」

「なるほど?」

「あなた、分かっていないのに反応しないで? つまりサレスは、城全体が彼女の影響下にあるからいろいろみんな思考が回ってないんじゃないかって言いたいのね?」

「うん、正解。あのお迎えはいくら何でもないかなって思ったから、兵士全体に彼女の影響が及んでたりもするかなって」


人数が多いと影響も薄いだろうが、その分厄介なのではと思ったのだ。

城の外から探っただけの俺にも影響があるとすれば、単純命令は本当に単純なものほど始末に悪い気がする。


「……ふむ。やはり話は後日、アレをどうにかしてからのほうが良さそうだな」

「あ、もう城自体に来たくないんで仕官全部お断りで帰るの認めてほしいです」

「「「サレス……」」」

「親愛もちの意思は無視しない方がいいんですよね? わざわざもう一回来る意味が分からないので帰ります」


ちら、と見たらまた少し赤い気がするんだよね宰相。

気がするだけで青いけど、警戒色があるわけでもなく青いけど、俺の第六感が帰れって告げてる。

自覚がある方がこの人多分厄介っぽいし、もう二度と城に来るのは嫌です。

あ、宰相がティナを見た。

ティナは首をかしげているが、この視線はあかんやつ!


「親愛はともかくとしても、その直感をそのままにするのは惜しいのだが?」

「俺自身に限定だから傍にいても意味がありません」

「……本当にそなただけの危機察知とは思えんのだがな?」


ちらりと王様もこちらを見て惜しそうにしている宰相を見る。

宰相はまあ、気づいたよね。

俺が鑑定眼使ったこと。

そして鑑定眼は王城に隷属するレベルで貴重なスキルであるってことは昔ディグさんに聞いたから知ってる。


でもダメー。

おうちかえるー。


「イヤです帰ります」

「……」

「いーやーでーすー」


不敬と言われても、俺はそれを押し通すまでである。

子供のようにいやいやする俺にティナが目を丸くしているが、俺は子供なので聞こえません。

エレンさんが超面白がってこちらを見ているが、俺には何も見えません。

ダグさんはそんな俺を見てため息をつくと、王様に向き直った。


「なあツアィド」

「うん?」

「俺としちゃあ、王都というかこの国にサレスがいるだけで災害的なもんはどうにかなると思うから、それだけで十分と思うべきだと思うぞ?、押し付けようとすればこいつは確実に逃げる。こいつが大事なのは俺の姪だけで、俺もティナをどうにかしようとされたらお前じゃなくてサレスの側につく。そこまではわかってんだろ?」

「……」

「カレスティードもだ。お前の話術ならサレスやティナを唆すのも騙すのも可能だろうが、やるなと言っておく。もうこの時点でサレスが警戒してるってことは、お前なんか計算してるだろ」

「……」

「たとえお前がティナの身内でもティナはやらんぞ。大体もうサレスと婚姻しているティナの籍をいじろうとするのはよせ。俺がディグに恨まれちまうわ」


バツの悪そうな顔をする二人に、よく言ってくれたと俺は胸をなでおろす。

なんか宰相がティナを見たときに、イヤな警鐘が鳴ったんだよね。

うっかりティナが宰相の身内だったら、なんかこれ巻き込まれるなと俺もようやく気づいたのだ。

ティナが貴族になったら話が変わってきてしまうし、仕官フラグどころの話じゃないだろこれ。


だから絶対、ティナを鑑定させる前に帰る。

俺ぐらいのユニークスキルじゃないと血統はわからん気がするけど、分かったといわれて押し切られる可能性があるし。


「だが……彼女が妹の忘れ形見なら」

「やめとけ。ティナはサレスのものだ」

「……」

「あとお前が考えているユニークスキルを復帰させる件もサレスじゃ絶対無理だ。こいつはおそらくティナ以外を抱かない」


だ……?

なんか今すごいこと言いませんでした?


「ダグさん、どういう意味?」

「ん? ああ。カレスティードに聞いたんだがな。親愛もちは本人のユニークスキルを継承させることの他に、失われた血統のスキルも復帰させることがあるらしい」

「へ? なにそれ?」

「ユニークスキルは親愛もちの子に出ます。――つまり母親の血筋に残ってるスキルも出るってことですよ」

「!」


まだ、他の貴族はしりませんけどねと諦めたように説明してくれる宰相を二度見する。

説明してもらえば一発で分かる話だったが、今なんて言った?

え? あれ待って?

じゃあもしかしてこれ、宰相の娘を俺とどうとかくっつけるという話じゃなく本命は、そっち?


この国のユニークスキルを復刻させるために俺の外堀を埋めようとしてたってことなの!?!!?





「無理」





ぷるぷる首を振る俺に、王様があーあ、と言いたげにダグさんを見ている。

ぜったいむり!

王女と結婚とか王女と子作りとか絶対無理!!!

誰が相手でも無理だけど、そもそも王女ってだけで絶対に嫌!!!!


「ダグラス……お前な」

「外堀埋めようとしてもサレスは大の権力嫌いだから王女に近寄るくらいなら出奔するぞこいつ」


今度はぶんぶんと首を縦に振る。

というかもう、出奔でよくね?

身の危険とかそういうレベルの問題じゃない。

王都とか危険地帯じゃねーか!?

この話が伝わったらっていうか、俺が親愛もちって確定した時点でどこも危険地帯と化すでしょこれ!?


「逆に王くらいじゃないと彼の身の保証ができませんよ」

「それは親愛もちって大々的にばれたらだろ? ……サレスを利用するためにばらすなら、俺はこの国をサレスと一緒に出るぞ」

「!? ダグラス、それは」

「誠意には誠意を。そう言ったのはお前だ」


一歩も引かないダグさんに、王様が白旗をあげた。

のほほんとしてても、一国の主としてやっぱりユニークスキルの復帰は魅力的なんだろうね。

宰相もダグさんに先手を打たれたので打つ手なしと諦めてくれはしたようだ。

問題は俺にその気がないことだけなので、一緒に過ごせばどうにかなってくれるのではって期待がどうしても消せないんだろう。


その気になる予定はないんで二度と来ません。

さようなら!


ちなみに俺はダグさんの後ろでエレンさんがなんか言ってたのは見てないよ。

道理で途中からダグさんのせりふが……とかも思ってないよ。

思ってないのでちらちらとこっち見ないでエレンさん!


「じゃあ、言いたいこと言ったし帰りましょうか♪」

「「はーい!」」


ダグさんに言いたいことを言わせてすっきりしたのか、にっこりと笑顔になったエレンさんに連れられて俺とティナはダグさん家に帰ることにした(ついでに空気してたニックも連れて)。

ダグさんは事後処理と王女をどうにかしなきゃいけないので居残り決定。

恨めしそうにこっちを見るダグさんのことも俺は見てません。


「ま、待て。まだ色々聞きたいことがやまほど――」

「あー。王女様が今ならいないー。いまのうちにかえらないとー(棒)」

「……」

「まぁ大変! 急がなくちゃ♪」


はい、お疲れさまでした!

ちなみにイザベラさんは待ちくたびれて一回部屋に戻ったっぽいので、ささっと俺のスキルで避けて帰ったよ!

危機察知最高!


そういえばなんで結婚話で王様が赤くならなかったんだろ? と思ったけど、たぶん不確定要素過ぎたから直感ぐらいにしか引っかからなかったんだろうと思う。

後から聞いたんだけど、王女、4歳だってよ。

ちなみにイザベラさんはみそj……げふごふ。



別意味で無理だったわ。




名前おさらい。


王様=ツアィド

宰相=ディアルヤ・カレスティード


さらにどうでもいい裏話。

親愛もちの子供にスキルが出るのは、親愛持ちが相手・もしくは子供に祝福を与えたいと望むからです。

もちろん洗脳などは不可。神様の祝福は本人の意思が大前提なのは常識なので、喰いつけなかったが正解です。本人を騙しても神様は騙されないので外堀しか埋められないとかいう事情があります。

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