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謁見の間。

上座に王様・宰相・ダグさん・護衛の騎士が残り3人。

横に数人の騎士がいて、広さは結構ある。

うん、よく見る謁見の間だな。

おもったよりファンタジーっぽくてちょっと感動するな、これ。


公式って程ではないらしいので距離は近い。

周りに貴族がいないので、こちらの意思はそれなりに汲んでいるよというアピールっぽいかな?

で、肝心な王様と宰相の色であるが……。



なぁ。どピンクって何?

色がおかしいんだけど。

王様は相変わらず青です。むしろなんかすんごく困惑してて、ダグさんが無表情でそれを見つめている感じ。

あ、ダグさんはもちろん青だよ?


「楽にしてよいぞ」


王様の前なので全員跪いていたが、その声で立ち上がる。

形式的でも平民が王様と対等に話すわけにはいかないよね、知ってた。

貴族がいるわけじゃないから挨拶だけしてくれればあとは普通でいいとは言われたんだけどね。


……不敬罪でしょっぴかれたらどうするんだっていう。

なので立ち上がることだけを許された形になった。

跪いて聞くには話が長すぎるってことかな?


「ふむ……何から話した方が良いものかな、ダグ」

「普通にお前らの主張はわかった、だけでいいんじゃないか? 大体の要求はした後で、全拒否された後だぞ?」

「そうなのか?」


っていきなり目の前でフレンドリーに相談しないで!?

騎士の顔が崩れないので平常運転みたいだけど、護衛と敬語すっ飛ばして話すって面白い構図すぎないかな。

まぁだからこそわいわい言いそうな貴族は全排除して騎士だけで固めてるんだろうけど。


「王よ。ちゃんと問うてもらわなくては困ります」


王の問い合わせる声に、宰相が答える。

言ってることは普通に思えるんだけど、あのピンクほんとに何なんだろう……。

まじ鑑定したい……していいかな?

どうかな?


「ふむ。では、サレスよ。お前の要望は聞いておる。お前の主張であるか確認させてくれ」

「お待ちください。先に一度見せていただけますか?」

「?」


宰相の指示で羊皮紙の入った箱が運ばれてくるが、その紙がそもそもおかしい。

今度ははっきり赤だなあこれ。

嫌な予感しかしないなぁ。


「……これはお前に出されたものであるはずだが?」


俺の要求に首をかしげる王様に、俺は首を振ってこたえる。

そもそも羊皮紙自体出していないけど、エレンさんが反応しないってことはエレンさんが出した可能性が高い。

でも問題なのはそこじゃなくて箱の方である。


「箱のほうに記憶がありません。多分なんらかの仕掛けが施されてますね。それは俺に対してなんらかの不利益を被るものであるようです」

「なんと……」


エレンさんが目を丸くしているが、俺はこの分野のスキルに関しては隠す気ないよ?

ってか王相手にスキル隠して騙くらかす技術なんて俺にあるわけないじゃん。

てか危機察知はあるとわかってたはずなんだけどな?


宰相の指示によって騎士が箱を持って近づいてくるが、その騎士の色がうっすらと赤くなる。

おいおい。

近寄るのもダメってなんだよそれ。


「……ちょっと止まってもらえますか?」

「え」


騎士は戸惑っているが、俺の言葉で止まる。

その箱何の仕掛けがされてるの。

警戒色がひどくなってる上、近寄ってきた騎士まで赤くなるってマジどういうこと……。


仕方ないので箱に鑑定をかける。

人に対して鑑定すると察知系のスキルもっていたり防御用の魔道具があると反応するらしいが、人相手じゃないので解禁。

ちなみに俺の鑑定眼はユニークすぎる性能なので、鑑定とは判断されないかもしれないのだが、まだ試したことはなかったりもする。

まぁとりあえず無機物が鑑定眼で襲ってくることはないだろうから鑑定してみる。


――この箱は呪われています


おい待て。

呪いの箱に入った羊皮紙って何!?


「……紙だけ取り出してもらえます?」

「え」


騎士が困惑したように王を見る。

王は何かに気付いたのか、騎士が持っている箱を見た。

そしてダグさんの表情が変わる。


「……おい宰相」

「なんですか?」

「俺の見覚えが間違ってなければあれは『囚人用』のはずだが?」


あ、のろいってあれか。

奴隷的なあれですかね。

ってアウト!!!

アウトだよ!!!!

そんなもん国王に渡したとか速攻牢屋行きだよ!!!


「……宰相よ。なぜそれを用意した」

「それはもちろん、スキルの有用性を確認するためです」


くるり、とこちらを向き直る宰相。

あれ、一瞬戸惑ったように見えたのは気のせいだったか?


「……こちらは囚人用の呪い箱とは違います。それに似せた簡易的なものしか入っていません。にもかかわらずそれに反応する……それは間違いなく魔法や勘ではなく、『ユニークスキル』のはず。しかしこの者は『ユニークスキルの申請』をしていない。それを私は明らかにしたかったのですよ」

「!」


ダグさんが過剰に反応したが、俺は最初から別に隠す気はなかったので気にせず聞き流した。

だから最初からわかってるってば。

ユニークスキルを申請するかしないかは、基本的に自己申告。

虚偽申告は罰せられるが、あくまで任意である。

ただしこれは建前で、公式に認められれば国へ『申請を求められ、そのうえで仕官を求められる』だろ?

そのくらいはやってくるとは思っていたよ。


でもさぁ。

騙し打ちでスキル見つけられた相手が、素直に申請すると思うの?

ふざけてんのか?


「……それで?」


俺が動揺しなかったのが不思議なのか、宰相が微妙に黙り込む。


「……申請していただけますね?」

「何のことですか?」

「!?」


堂々と問いかけ返したら宰相が黙り込んだ。

公式に認められる要因は確かにそろってるけどさ。

それは今ここにいる人が――王が俺をユニークスキルを持っていると認めたらだよね?

んでね。

俺はダグさんを知ってるからわかるけど、この王様たぶんこういうだまし討ち大っ嫌いだと思うんだけどどうよ?


「……宰相」


ほら、王様が困惑を通り越して悲しい顔してるよ。


「……我はな、強制する仕官など意味がないものだと思っておる」

「王……」

「今のやり取りでわからなければ我は愚王よ。――サレスよ、すまなかった。有事にはギルドを通して要求することはあるであろうが、帰ってよいぞ」

「王!? 何を言っているのですか!?」


宰相が焦ったように王に詰め寄るが、王様の色は変わらず青。

むしろダグさんがすんごく嬉しそうにうんうん頷いているので、おそらくダグさんが頑張ってくれたってことなんだろうなぁ。

まあ内容は聞かないけど。


「わからぬのはお前のほうだよ宰相。――我が国でユニークスキルもちが少ないのは問題になっているのは知っている。だがな、潜在的にユニークスキル持ちが多いのもこの国の特徴であろう。無理やり仕官させたところでユニークスキル持ちは、実力の半分も出すことはできぬ。その特性を知っていながら無理を通そうとするのは愚策でなく何なのだ?」

「しかし……!! 相手は親愛もちですぞ!?」

「だから何なのだ? 聞けばサレスはこの国の者と婚姻し、その者とあれば子を作ることは拒否していないと聞く。――あえて貴族に取り込めというならば聞かぬぞ。それは逆に王位が揺らぐ」

「……」

「何が問題なのだ?」


何故か俺を放り出して王と宰相が言い合ってるんだけど、俺はどうしたらいいんでしょうかね。

というかだんだん宰相の色がピンクやら青やら紫やらと目まぐるしく変わりすぎててなんか目に痛い。

親愛もち、といった瞬間がだいぶ赤かったんで、その辺が原因なのはわかるんだけどなんだろーなー。


宰相の目が、ティナを見る。

……うん? ううううん??

なんだろう、この目。


「……しかし、」


逡巡する顔。

彼は何か迷っている。

俺は俺で、なんか思っていたのと違うんかも? とちょっと思った。

この宰相、ティナに対して蔑みがない。

むしろあるのは――これは逆か?


「かの者の嫁は――」


俺の目線の横で、ティナが唇をかんだのが見えた。

彼女は獣人だからと言われるのに慣れている。

慣れているからこそ、さげすまれると思い構えたのだろう。


そして彼女が慣れているからこそ、ここで本来の俺なら言われる前に彼の言葉を止めるのだが、俺は止めるのをやめた。

なんていうか、おそらくこれはティナが考えているような流れじゃないと気づいたからだ。

むしろこの宰相、俺よりティナのほうに親身になってるよ。


「……貴族ではありませんし」

「貴族じゃない方がいいと思うぞ?」


絞りだしたようなセリフに、王があきれたように返す。

あ、宰相が王から目をそらした。

この人多分、嘘でも獣人が、とか言えないか言えない立場なんだな。

ってかむしろ、獣人擁護派だったりするっぽい。

なんか周りの騎士の目が生暖かくなってるんだけど何この状況?


「――宰相よ」

「何ですか」

「お前が悪役を買って出るのは悪くないと思うが、茶番すぎて周りの目が生ぬるくなってるぞ?」

「うう……」


はあ、と王様がため息をつくのが見えた。

ダグさんは飄々としているし、エレンさんはあきれているような感じではあるが顔色は変わっていない。

むしろ何か思いつめたような表情をしているのはティナ一人である。


「――あの!!」

「!?」


ティナが意を決したように、宰相へ声を出す。


「宰相様は――私がサレスの嫁ではふさわしくないとお考えなのでしょうか!」


あ、そこ直球で聞くんだ。

流してもよかったのに。


「そ、それは――」


宰相がさらに言葉を詰まらせ、ティナを見る。

あれ、なんかピンク色だったのがちょっと薄まって……青くなってきてる?

あのピンクまじなんだったの?


「……」


凛とした表情で宰相を見るティナと、言葉を詰まらせ目をうろうろさせる宰相。

できる人っぽいのに何か娘に詰め寄られたかのような感じに、沈黙が周りを支配する。

しばらくして口火を切ったのは、やっぱりというかなんというか王であった。


「ふむ、いろいろ話が錯綜しておるようだの。ダグ、耳を貸せ」

「はいよ」


しばらく耳打ちした後、俺たちはとりあえず一時休憩すべきという流れで別室に通されることになったのであった。



おさらい。

鑑定→人相手にすると「相手が」スキルの発動に気付きます。

他の人は気づきません(なんか自分にかけられてるな―という感じ)。

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