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異世界生活60日目。
弱い者いじめの描写をする趣味はないので割愛する。
え? ちゃんと書け?
鳩追いかけてぴゅーっていって、テント張って待機してる男どもを急襲してふんじばって終了したよ?
ガルサーさんが暗雲を背負いながら狼たちを男どもの周りにうろうろさせていたのが印象的でした。
ちなみに赤ちゃんはかわいかった。
何度でも言おう。
赤ちゃん狼の可愛さに悩殺されてなんも見て無い!
なにあの反則的な可愛さ一匹下さい!!
と、思っていたら赤ちゃんに懐かれた。
むしろテイムモードに入ってしまい、盛大に困ったのだが俺のテイムしたハイウルフが頭に乗せることで解決を見た。
仕方ないので譲ってもらいました。
赤ちゃんなのでテイム対象ではないため、素直に上位であるハイウルフを親と認識してしまったということで書類も通した。
あ、金はちゃんと払ったよ?
ついでに雌だったけどテイムしたハイウルフが嫁扱いしてたから問題はなかろう。
俺は他人(他狼?)の恋路を応援します。
そういえばこのハイウルフも2歳とまだ子供だったんだよな。
でかくて忘れてたけど。
「そういえばこの子の名前決めないとな」
「何がいいですかねー?」
ついでに番(候補)もいるので、対にする名前ということでティナに情報を出してもらった。
いや、日本風にしてもいいんだけどそれだと転移者ってばれる可能性があるじゃん?
ということでオーソドックスに韻をふむ感じの名前で決定した。
命名。
セレスとニナ。
って子供につける様な名前になっとるやん!
と思ったけど、まぁいいかなと思いました。
だってかわいいし。
とりあえずモフモフが一気に二匹に増えたので、俺はご機嫌です。
今なら空も飛べる気がする?
いや、どうだろ。風魔法使える様になったらいける気はする。
気がするだけでその予定はないが。
しかし。
「……なんか増えてる、だと……?」
「どうしたのですサレス?」
ふと、空も飛べるはずとか思ったのが悪かったのか風が吹いたのだ。
ハイウルフの属性が風なのでそのせいかなと思ったけど、セレスもニナももふもふ堕ち(もふられまくり気持ちよく堕ちた状態)してぐーすか寝ていた。
つまり、魔法使えるの多分俺だけ。
そろっとカードを確認したらいつの間にか増えていました。
風魔法の項目が。
「……」
風属性のハイウルフ倒しまくったならわかるけど、一体もたおしてないのに……。
何で覚えてるのかな俺は……。
テイムで倒したことになったんかな……と過去ログを辿ったらなんか見ちゃいけないものが見えた。
呼び寄せた→放逐したのオンパレード。
テイムスキルの詳細を知らないがゆえになんか使用してたんだな、これやっぱり……。
鑑定眼だけじゃなかった……。
とりあえずやっぱりというか、テイム終了時に風魔法が習得されていた。
仕方ないのでテイムスキルの項目をじーっと見つめたら、それらしき解説が出てきた。
→テイムした相手からスキルを習得できる。
これかなー。
一応選ぶこともできるみたいだが、一匹目はオススメというか種族的なスキルを習得するようだった。
二匹目のニナは赤ちゃんのためスキルは種族特殊しかなくて習得されなかったみたい。
人間でひっかきとか覚えたら大変である。
「……んー」
取りあえず隠ぺいしておけば対外的にはなんとかなるし。
習得したこと自体は良しとしようかなー。
風属性の敵は今までトドメを刺すことがなかったけど(基本的にトドメはティナが受け持ち)、自分で倒してたらいずれ習得してたであろうことは想像がつくし。
まあ、取れちゃったものは仕方ないので気にしないでおこう。
あえて持ってるのに使用しないとか、封じておくとか宝の持ち腐れだから趣味じゃないしね。
「サレス?」
カードを見ながらうなる俺の顔を、心配そうにティナが覗きこむ。
「何か心配事なのです?」
「いや、スキルが増えてたってだけだよ。大丈夫」
「スキル……? これ以上?」
軽く言ったつもりだったが、風属性を習得となると俺は4属性持ちだ。
どう考えてもやばいので、その分を考え込んだところを見咎められたらしい。
俺はため息をつくと、小声で告げる。
「風魔法が増えてた」
「風……」
2属性が普通、3属性は大分普通じゃない。
じゃあ4属性は……ってどう考えても王宮行きレベルだよねー。
知ってる。
「まあ、ティナとふたりの時しか使うつもりはないから」
「でも、サレス……」
「大丈夫。……大丈夫だよ、ティナ」
これからも俺はどんどんスキルを覚えて、おそらく実力的にはティナを引き離すだろう。
だが、俺はスキルが使えるからと言って驕るつもりも、積極的に強くなる気もない。
自分の意思が通せるほどの強さは欲しいが、誰よりも強くなりたいという気持ちはないのだから。
起き上がり、微妙に悲しそうな顔をするティナを抱きしめる。
ティナは自分に自信がない子だ。
これ以上ステータスだけでなく、強さにも影響が出るとなれば言っておかなければいけない事がある。
「ティナ」
「何……?」
「俺は力に振り回される気はないよ。そしてティナも、振り回されないで欲しい」
「ふりまわされる?」
俺が何を言っているのかわからないらしく、ティナが首を傾げる。
だが、力に振り回される人間というのはいるのだ。
「ティナは、自分がA級冒険者であることを、どれくらい誇りに思っている?」
「……? どういう、意味なのです?」
「言葉通りだよ。……俺から見て、ティナの戦闘技術は一級品だと思う。A級であるのが納得いくくらい、ティナは強い。でも、ティナ自身はそうおもってないんじゃないか?」
「サレス……」
隣国の時に気づいていたことだが、逃亡が優先だったのでなかなか言い出せなかった。
でも、俺のスキルが増えたことを知ってティナがした表情は、放置していいものじゃないことは確実にわかる。
A級でも獣人女性であるがゆえに、一人で行動が出来なかったティナ。
彼女の自信のなさは環境のせいもあるが、彼女自身が自分の強さを信じていないというのもあると思うから。
「覚えておいて。俺は、ティナがティナ自身であるから選んだんだ」
「サレス」
何を言われているのかわからないのか、ティナが首を傾げる。
ちょっと難しい話だっただろうか。
でも、戦闘技術に関してはお互い強くなると言っていても隔たりが出そうなのは目に見えてるんだよな。
その時ティナがどんなことを思うのか、それが想像つかないのが俺は怖い。
俺が俺自身のスキルの強さから今は自分がこの世界で(権力的な意味で)モテるのはなんとなくわかった。
だが、俺自身がなびかない場合、アプローチされるのは俺ではなくティナの可能性もあるのだ。
ティナは獣人なので色仕掛けは効かないにしても、戦闘的な意味で入り込もうとする輩がいないとは限らない。
なので、予防は張っておくべきだと考える。
「まあ、難しい話はなしにしよう」
ぽんぽんと頭を撫でる。
イチャイチャし始めてもいいが、まだ昼なのでダグさんに襲撃されてもアレである。
なので耳を触りつつ、俺は決意を新たにする。
「今日は一緒に散歩にでも行こうか」
「セレスも一緒に?」
「勿論ニナもだよ」
ティナの手を取り立ち上がれば、気配を察したセレスが起きて来る。
俺はセレスの頭も撫でると、散歩に出かけることにした。
まだまだ領内は知らないことだらけなので、毎日出かけても新しい発見がいっぱいだしな。
「……ティナ」
「はいなのです?」
「愛してるよ?」
「……ッ。私も、なのです……!」
今はまだ、このぬるま湯のような日常に浸かっていたいから。
俺は自分とティナを鍛える手段を考えつつも、今日はデートにいそしむことにしたのであった。
最後は相変わらずのイチャイチャで〆つつ、もふもふテイム編終了っ。&ストックも終了!
次は成長+王都編。
そろそろお邪魔虫がまたやってきます。
しばらくしたら再開しますので、再開しましたらまた遊びに来てくださいー。




