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「ガルサーさん」


帰宅するというガルサーさんを追いかけて、俺は彼を見つめる。

うん。

やっぱり微妙な色なんだよな、この人。


「誰かに脅されているなら力になるよ?」

「!?」


何故、と顔に書いているガルサーさんは気付いているだろうか。

俺がテイムスキルについて喋った時に、はっきりと嫉妬の色を目に浮かべたのを。

それと同時に、すごく悲しそうな顔をしたことも。


「小さなことと思っていると足元を掬われるからね。俺は自分の危機には敏感なんだ」

「……」

「それって小さな狼がさらわれてることとか関係あったりするかな?」

「!?」


最初にガルサーさんに会った時、腹黒いなと思ったのは事実だ。

だが、リドさんと喋っている時の印象は決して悪いものではなかった。

変わったのは今日。

領主様に会いに来た彼は、赤と青の斑というよくわからない色をまとっていたのである。


青はたぶん、悲しみとかその辺の色だろう。

とすれば脅されているのでは?

と俺は鑑定眼を使ってみた。


すると、こう出てきたのだ。


――狼が足りません。


何がどう狼が足りないのか全然説明がない!!!

とは思ったが、まぁ前後を考えればわかることである。

たぶん彼がテイムしないままで育てている狼がいなくなったんだろう、と。


で、探したらいました。

いかにもな平原のど真ん中に、赤ちゃん狼と成長した狼が合計7匹ほど。

あ、人もいるけどね。


しばらくにらみ合っていたが、俺のスキルに関しては全然情報がない彼だ。

諦めたように事情を話し始めた。


「……一数日前、貴方がたの帰宅後にギルドの人間が来まして」

「うん」

「ギルドの検品と登録が必要ということで、狼が数匹と赤ちゃん狼を渡したのですが……」


その後ダグさんが制裁後のギルドの訪問により、予定そのものがなかったことが発覚。

つまり彼はギルドの人間じゃない人間に狼を渡してしまったことになる。

それも、昨日に始まった事ではなく……。

実は結構な数が横流しを食らっていたようだ。


「……ギルドの書類を持っているからと、手渡した私にも責任がありますから……」

「それで、有益な情報を手渡す代わりに赤ちゃんだけでも取り戻そうとしたってところかな?」

「ええ……貴方のことは特に、聞けと言われてましたから……」

「なるほど。近隣の貴族の手の者で確定だな。ふーん」


赤ちゃん狼をいつも通りもらったのはいいが、ギルドの制裁が入ったので自動的に手が伸びるのは必至。

その前に情報と引き換えだとガルサーさんを脅し、情報を取ろうとしたってところかな?

相手が脳筋獣人だから取れる手だよなあ、これ。

だってガルサーさん何も悪いことしてないのに片棒担いだことになってるじゃん。


「まあいいや、それなら俺が狼取り返してくるから、ちょっと交渉しなよ」

「は?」

「伝書鳩とかで手紙つけて送るとかじゃないの? それ追ってけば捕まえられるよね?」

「!?」


追わなくても見つけられるけどねー。

それに、その感じで行くと赤ちゃん連れて戻って来るとかも超怪しい。

情報だけ取って逃げる気満々な気もするよね?

それだとますますガルサーさんがかわいそうなことになるし、いい加減舐めたことしやがる奴らにひと泡吹かせてもいいと思うよ?


「ですがそんなことをしたら狼の命が……」

「売り物を手をつける気があるならとっくに死んでると思うけど?」

「!」

「それより確認したいんだけどさ。連れていかれた狼たちって、ガルサーさんの命令ならたとえ相手にいう事を聞けと言っていても聞くんじゃない?」

「それは……テイムしたわけではないので、私が上位であることは確かですが……」

「じゃあ現場にガルサーさん連れていけば命令系統混乱して大変なことになるねー。元々ギルドの人間じゃない奴らがさらったんだから噛まれようがなにされようが、事故だよねー事故ー」


なら話は簡単じゃん?

俺とティナとダグさんはそれなりに走れるし、ガルサーさんは細身で狼騎乗も出来そうだ。

つまり、あれだよね?

全員捕縛してやればいいんだよね?


「じゃ、すぐ出るからちょっと待ってて?」


善は急げ。

ダグさんに話そうと引き返そうとしたところ、何故かダグさんが向こうからやってきた。

すでに戦闘準備万端で。


「……もしかして聞いてました?」

「俺は聞いていないが、リドが聞いてたぞ」


横には何故かやる気満々の領主弟リドさんの姿が……。

そして何故か満面の笑みのティナがハイウルフを連れてきている……。


「リド……」

「こういう時は頼ってくれ?」


きりっとガルサーさんをたしなめるイケメン。

相変わらずこういう時はカッコいいね?


「近隣の領の門は封鎖と検問してあるからなぁ? どうせ平原で立ち往生してるはずだ」

「おー」

「行くぞ?」


なんで平原にいるのかは謎だったが、どうもダグさんの根回しのせいだったようだ。

やる気満々のダグさんを先頭に、門までをあっという間に駆け上がり。

そして伝書鳩は放たれた。



俺、確実にいらないわ、これ。


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