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おねがいダグさーん。

ということでまずダグさんに相談することになった。


「ダグさん、ハイウルフのカードってそんなに出ないもんなんです?」

「いきなりどうした」


いきなりすぎて話が通じなかったので、軽く事情を説明することになった。

ハイウルフをテイムしたいこと。

ここ半年の間カードが一切ギルドにわたっていない事。

そこまで話したところで、ダグさんの顔が険しくなった。


「半年間0だと?」

「そう言ってたよ。手持ちにも全くない状態で今困ってるみたい」

「おかしいな」


あ、やっぱりおかしいんだ。

そうだよね、ギルドと領の共同事業的な感じなのに、カードを優先的に渡していないって言うのがおかしい。

だからこそドロップ率を聞いたのだが、一か月に一枚程度なら落ちるぐらいであるということだった。

勿論数を狩る必要はあるが、元々繁殖力が高いため間引きも込めてギルドでは優先的に狩っているのがハイウルフ。

聞けば数年前は少ない時でもひと月一枚以上はギルドから購入出来ていたらしい。


「俺はギルドの財政には詳しくねーが、この領のテイマー技術を国との取引を含めて確立するときにあいつが構築したはずだから売買が滞るのはおかしい。なんかあんな」

「それってここのギルドで購入できなかった場合は、他領から優先的に購入できるとかであってる?」

「ん? よくわかったな」

「あーだよねー。……ギルドがぐるになってんじゃない?」

「何?」


少なくともカードが売られていないならギルドが王都のギルドに申請するようになっているはずだ。

なのに半年以上ダグさんが把握していないって事は申請そのものがだされてないのでは? と思う。

そう伝えてみると、ダグさんは納得したようだった。


「確かにな。そんなカード不足問題があるなら、俺がここに来る際にあいつが確認して来いと言わんわけがない。つまり申請ごと虚偽申告されてるって事か……なるほど?」


あれ?

なんかダグさんがすごく……怖いです……。


「……嫁はこの領の出身でな」

「なるほど」

「まあ人間なんだが、領主の奥さんとも仲が良くてな?」


つまりお嫁さん……副ギルマスが苦労して確立した技術と運営を、食い物にしている馬鹿がいると。

そういうことですね?


「道理で顔を出した時に微妙な顔をしてたはずだなぁ……?」

「夜逃げとかしそうな雰囲気?」

「させると思うか? ……任せておけ」


その一言で俺は悟った。

あ、この領の冒険者ギルド終わったな、と。







翌々日、カードが購入できるようになったので購入も出来るよ? というリドさんとガルサーさんの話を聞き流し、俺たちは狩りに出ることにした。

ほらやっぱり、自分たちでどんなのか見てみたいし。

虐殺はちょっとモフモフだから難しいかなーと思いつつも、俺は素直に狩りに行くことにしたのだった。


ダグさんからしばらくこの街にいるからギルド長代行をすると聞いたのは昨日である。

一体何があったんだろうね?

俺にはわからないなー(棒)


さすがギルド長だな、とリドさんが盛大に尻尾を振っていた覚えしかない。

領主様の代わりに領主弟を連れて行ったらしいのだが、そこで行われたのはよほど恐ろしいことだったようだ。

普通は恐れるのだろうが、俺たちがダグさんの連れということを知っている街の皆すらキラキラとこちらを見てきてたからな。

脳筋たちの心の琴線に触れるような何かがあったらしいです……怖いね。


ということで森の中である。


「どうしてこうなった……」

「いっぱいなのです?」


目の前にはハイウルフ。

ハイウルフ。

ハイウルフ。

ハイウルフの団体様が一列に並んでいる。

その数、ぶっちゃけ二桁。

壮観というか恐ろしい光景であるが、俺たちが困惑したのには訳がある。


狼全員尻尾振って並んでる。

どうしてこうなった……。


そもそもの始まりは、森の中を鑑定したことに由来する。

その時には普通に表示されていたのだ。この森にはハイウルフが数百体います、と。

森自体がでかいのもあるがいすぎだろう。

そう思い、ふと俺は思いついてふるいにかけたのだ。


カード落としそうな奴、と。


そしたら表示ががくんと減り、近くの表示だけになったので近づくことにした。

そこで俺は気付くべきだったのだ。

何故近くしか表示されなかったのか、ということを!!


先制攻撃をするのがベターなのだが、森の中で全容が見えないのはあれなので広い開けた場所で待ち伏せした俺たち。

最初に現れた一匹は、現れてから尻尾を振り始め近寄ってきた。

走る事すらない。

どうみても遊んでレベルの反応で困惑していたら、目の前でストップした。


そのあとはエンドレスである。

きゅんきゅん鳴く仲間に呼ばれたのか、並ぶこと10数匹。

壮観である。


「あー……こりゃ、スキルのせいかなー……」

「スキル? なのです?」

「うん。俺、テイムスキルあるから」


いい機会だと思い話してみると、ティナの目がまんまるになった。

いっぱいスキルがある事は寝物語に話してはいたが、テイムはまだ使う予定がなかったので詳細は話していなかったのだ。

ティナは少し思案していたが、諦めたのかぐるりと狼を見回した。


「敵意が無いので、多分サレスを頂点と認めたってことかと」

「……やっぱり?」


そもそも何故近くばかり表示されたのか。

俺の気配を悟って服従した、って考えるのが妥当だよなあこれ……。

鑑定眼がどんな機能で相手を見てるか知らないけど、少なくともユニークスキルであることは確かだし。

カードを落としそうなヤツと限定したところで何か作用したと考えられる。


「これ、どうしよう?」

「とりあえず選んでみればよいのでは?」

「そーだな」


待ってるって事は選ばれるのも待ってるんだよな……。

そう思いぐるっと見てみると、ちょっと大きめなヤツが目に入った。


鑑定。

おう……ユニーク個体ではないが、こいつだけレベル高い。

年齢は2歳と大人になってそれほどでもないっぽいけど、ステータスがユニーク個体とかなのかな?

大きさ的に二人乗りも出来そうだし、こいつがいい気がする。


何よりモフモフしたら埋もれそうな大きさが良い!!

ということで狼君、君に決めた!


「じゃ、お前で」

「くーん!」

「!!!!」


選んでみると、近寄ってきて尻尾で来い来いされた。

素直にぽふっとしてみると、肌に当たるのは滑らかな肌触り。

こいつ……出来る……!

水浴びしかしないのか若干獣くさいが、それでもそのもふもふっぷりは圧巻。

なにより全身埋まるくらいもふもふである。


「おお……いい感じ」

「サレス、顔が溶けてるのです」

「いや、気持ちいい」


他の狼ズが悔しそうにこちらを見ているが、俺はコイツに決めたので振り返らない。

ぶっちゃけ即テイムしたいレベルであるが、とりあえずどうしようかな。

カードドロップさせてテイムする予定が、前段階を全部吹っ飛ばしたかんじしかしない。


とりあえずどうしようと顔を見つめてみると、何故かハイウルフは輪郭が薄くなり、そしてカードとしてポトリと落ちた。

え、自分でカード化出来るんだ!?

予想外だよ!?


カード情報を確かめてみると、微妙に変なマークがついていた。

曰く。


「テイム済……」

「サレス……」


カードなのにすでにテイム済み!!

明らかに何かふっ飛ばしているが捨てていく選択肢がないので拾って帰ることにした。

そのほかの狼がやっぱり切なそうにこちらを見ていたが、一匹だけいればいいので心を鬼にして帰る。

だが、一匹だけ大きい狼が残ってしまった。


「悪いけどテイムする気はないよ?」

「きゅーん……」


とびかかって来そうなので警戒しつつ、ティナへトドメを刺せるように配置を伝える。

ティナは何故か警戒する俺に首をかしげていたが、素直に構えてくれた。

いや、理由はもちろんあるんだけど。


しばらくにらみ合っていたが、狼は諦めたように帰っていく。

ようやくホッとしていると、ティナが首を傾げたまま聞いてきた。


「2匹ぐらいテイムすれば良かったのでは??」

「いや、ないな」

「ええ?」


だってあの狼、微妙に赤かったんだもん。

何で赤いのか調べてみたら恐ろしい回答が来たので選ばなかったんだ。


「あれ雌だし」

「?」

「俺モフモフ好きだけど狼を恋人にする気はないよ……」

「…………」


ティナが生暖かい目で見てきたが、俺のせいじゃないんで勘弁してください……。

好かれるのはいいんだけど、知能が高いって弊害があるのね。

まさか恋人モードで迫って来るとは……テイムスキルってもふもふにモテるのかなぁ?

たまーにならいっぱいの狼の中へもふっとしたい気はするけど、あの大きさの狼をぞろぞろ連れ歩くのは現実的じゃないから一匹で十分だろう。


ちなみに選んだ狼はちょっとおバカみたいで強い=おとーさん! みたいな認識っぽかったので良しとした。

なにより雄なのでリーダーには逆らわなさそうだったからね!



ということで帰還だ!

なんか狩りというには恐ろしい結果だったけど忘れよう!


テイムスキルを使うともれなく魔物が知能的になります(棒)

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