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もっふもふはじまるよー☆
中てられたモフモフ欲をティナの頭を撫でることで堪能しつつ、俺たちは観光に繰り出した。
領主弟はこの領の警備も担っているそうで、危ない処はもちろん観光名所も詳しかった。
先ほどの情けない姿はどこへやら、きりっとしながら澱みなく説明を重ねていく様子は確かにカッコいい。
イケメン滅べ。
そしてこの領の特色を色々聞いていたのだが、一つ良いことが聴けた。
「テイマーがいるんですか? この街」
「ああ。相性の問題があるから狼種ならば狼、猫種ならば猫型魔獣など制限はあるものの、複数いるぞ。ある種の獣人の特殊能力ともいえるだろうな。まあ特殊魔獣をカードからテイムするような凄腕なテイマーはいないが、ある程度の調教が終わると普通に譲り渡すこともできるんで、商人の護衛としては一定の需要がある」
すみません、目の前にいます。
でもなんかその話すごく聞きたいなぁ俺!
自分でテイムしてなくても狼飼えるとか魅力的過ぎるんだけど!!
「カードからテイムするテイマーってすごいんですか?」
「そりゃそうだろう。この国でも1人……いや、子供にも受け継がれたと聞いたから、二人かな? そのくらいしかいないが、カードの種類によっては戦力が1人で国を滅ぼせるほどになるだろうからな」
はいアウト―!
俺のスキル、ユニークスキルだよ?
ぶっちゃけきっとどのカードでもテイムできるよ?
あかんヤツだね! 知ってた!
「へーすごいですねー。でも俺は、自分でも狼が飼えるかもって方に惹かれます」
「狼の護衛が欲しいのか?」
「ええ。テイムしなくてもいう事聞く狼とか萌えます」
「もえ?」
「ああ、こう、心が燃えるってことですよ」
服従的な意味で?
とか横でミルさんが呟いているがそれは違う。
興味があるって事でここは一つお願いします!
「サレスはモフモフしたものが好きなのですよ」
「もふもふ?」
「はいなのです。……でも、お昼に尻尾は触ったらダメなのです……」
いちいち片言で返す領主弟がかわいいんだけど、そこ突っ込んだらアウトだなこれ……。
まあ、尻尾を触るなんてと頬を染める友人ミルさんもちょっとダメな感じだ。
あ、尻尾って普通に付け根のほうとか性感帯です。
夫なので触るけどね!
何かあると巻き付いてくるけどね!
無意識に巻き付けてくるティナかわいい。さすが俺の嫁。
「うーん、しかし問題が一つあってな」
「問題とは?」
「使役できる魔獣はカードからと決まっているのは知っているだろう?」
「そうなんですか?」
カードからテイムできるのはちらっと聞いた覚えはあるけど、詳しいことは一切聞いていない。
なのでオウム返しに尋ねると、あまり詳しいことを知っている人が少ないのか気にしていないように領主弟が説明してくれる。
「そうなんだ。カード化することによって親情報とかリセットがかかった状態でないと、テイムをするのは難しいからな」
「へええぇ……」
「ってわけで、ギルドからカードを購入した上でテイム調教、販売となるんだがカード自体が高いんでなかなか手に入らない」
「ふむふむ」
「だからカード実物がないと、高額になるんだ。その上、近隣の領土からはなかなか入ってこなくてな……」
それ経済制裁じゃないの?
と思いつつ、今は品薄のためカード実物を持ってくる人間のみへの事業になっているのだとか。
なるほどなるほど。
カードのドロップ率は低いらしいから仕方ないって面もあるのかな。
「カードって、狼種ならなんでもいけるんです?」
「どういうことだ?」
「隣国の草原にでて来るウルフのカードなら手持ちにあるんですけど」
「! 属性は?」
「確か火、かな? Eランクの一般的なウルフです」
最初の一枚こそ売ったものの、もう一枚テイム用に残しておいたんだよね。
あと使わないけどゴブリンのカードとか、人には言えないけど乱獲したときに落ちたオークのカードとかもなくはないよ。
全部鞄のそこに埋めてるけどね!!!
「それなら初期種だから、問題なく調教できるわよー」
「おおお……」
というかぶっちゃけ、テイム能力あるからテイムされてるよー、って風体さえ取れれば俺が何とかできちゃう気もするんだよね。
譲り受けるときにどういう扱いになるかはわからんけど。
なので詳しい話を訊いてみると、テイムした後その情報を首輪に移し、首輪の命令権限を相手に譲渡するようだ。
んー、奴隷制度みたいなのを思い浮かべるけど、それよりはもっと軽い感じみたい。
そもそも狼種をテイムすること自体が高額なのでそれほどひどい扱いをする人間はいないとのこと。
まぁそりゃそうだ。4万Jとかで売れたもんな、ウルフ。
「4万? 安すぎる」
「……安いの?」
宿代からすると妥当な金額に見えていたので後で聞いてみたところ、そもそもここまで売りに来ることが少ないためにここで買うと高額らしいです。ざっと3倍ほど。
絶対足元見られてる。
ギルドを介してるはずじゃあ? ダグさんに確かめたいところだな、これ。
話を戻して、テイム料金を確認した処カードがあるなら処理と国家申請費を含めて5万程で済むってことだった。
ううむ。
結構っていうか、かなり、高い。
高いが狼……狼……。
「サレス、欲しいのです?」
「うん。危機察知は狼強そうだし、人間より狼の方がこう……旅のお供としては良いなあと思って」
変な女性が来るのも防げるしなぁ。
PTはもうペアで永遠固定でいいと思う。
そこに索敵・警戒できそうな狼がいるならいるに越したことはないと思う。
何よりモフモフですし。
もふもふ……。
「……興味があるなら見学しに行くか?」
「是非に!」
ということで俺らは、テイマーに会いに行くことになりました。
わーい!