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異世界生活45日目。

ようやく次の街についたその日、俺はダグさんとティナと三人で作戦会議を始めていた。

周りには誰もいない。

ようやく腹を割って話せるって事だ。


「で、俺のハーレム嫌いで何が起こるのか教えてもらえますか」

「直球だな……」

「あんだけ微妙な顔するならわかります。ティナ一筋であることは、親戚であるダグさんなら喜びこそすれ嫌がる事じゃありません。でも、手放しに喜べない理由はあるんでしょう?」

「ああ……」


ダンジョンのある街でもギルドへ何度か足を運んでいたが、今日はダグさん一人で行くと言い張ったため俺たちは留守番していた。

だが、そもそもその態度がおかしいというのはわかる。

俺たちは冒険者ギルドの人間に護衛されて首都まで送られているというのに守られている俺本人がギルドに顔を出せないって言うのはおかしな話だろう。

そこからも、何か複雑な話になっていることは想像できる。


「ユニークスキル持ちかもしれないってのがばれたって言ったろ?」

「はい。でも誤魔化せる程度のことしかしてないと思うんですが」

「まぁな。だが、お前の容姿とかで別の疑いがあがってな。そのため、ギルドだけじゃなく貴族どもがこぞって押しかけようとしてるんだわ」

「俺の、容姿?」


言うまでもないことだが、俺の容姿は平々凡々である。

黒髪黒目の、いかにもな日本人。

確かに顔のつくりは少し違う感じがあるが、この世界で黒髪は結構見かけたので色彩が問題あるわけではない。

だが、やはり顔のつくりである疑惑がついたらしい。


曰く。


「『創生神の親愛』もちじゃないか、とな」

「ぶっ」

「……その反応だと、当たりか」


不意打ち過ぎて反応してしまった。

はい、持ってます。

やっぱこの祝福、転移者専用とかなのか。


「……ちなみに親愛があると何か問題が?」

「親愛持ちは高確率でユニークスキルを持っているからな。3つも4つも持っているケースも少なくないし、少しでも能力の優位を持ちたい貴族にばれたら即貴族の婿コースだ」

「何それメンドクサイ。絶対嫌だ」

「子種だけでもとか腐るほど来るぞ?」

「断固拒否します」


えっちだけとか死ねばいいと思うよ。

健全な男なので彼女がいなければデート位、とは思わんでもないが何が悲しくて種馬にならないとならんのだ。

そもそも俺の意思を無視する流れは大っ嫌いだ。


俺は念入りに守護が見えないように隠ぺいしようかと思ったが、ティナと結婚したことで武神の祝福がついているのでそちらは見えるようにしておいた。

首都に入ったら鑑定持ちがいるかもしれないしな。

ユニークスキルは全隠蔽、魔法は回復を使ってしまうことを考えて聖のみ表示、後は……後から考えよう。

ステータスの隠蔽も更新した方がいいだろうな。ある程度戦う可能性があるし。


「そもそも親愛持ちってどういう存在なんです?」

「この国の建国者が持っていたと言われるBlessでな。たいそうお盛んだったということで、世界のいたるところで隔世遺伝で出ることが珍しくない。サレスも恐らくその一人なんだろうな」


いえ、転移者です。

とは言わず、ふむふむと話を訊く。

どう考えてもコレ、建国者は俺と同じ転移者だったんだろうなぁ。

そしてガチでハーレム作った上、いたるところで種ばらまいて今でも隔世遺伝で祝福がぽろっと出ることがある、と。

で、見つかった親愛持ちは大体スキルが優遇されてるので必死で取り込もうとするってことな。

理解した。

転移者と即ばれないだけましだと思おう。


「親愛持ちはあっという間に強くなるのも特徴でな。サレスの場合、まったく頭角を現していなかったから戦闘系のスキルではないのはばれてるぞ。で、貴族の思惑を器用に避けていることから危険察知系であるということもばれ、そういう能力こそ欲しいという貴族がこぞって……」

「迷惑です」

「……来ようとしたところをうちの副ギルマスがぶった切った。うちのギルド員に阿呆なことをするな、と。で、サレスの希望を聞かれたので全拒否って伝えておいたんだが、今日その結果が訊けた」


どうやら俺の返事を待たず、貴族の誘いはダグさんが断ってくれていたらしい。

まあ、聞かれても返事は同じだからいいんだけどね。

俺の返事を聞いて微妙な顔をしていたのは、俺の意思を聞かずに返事をしていたからだったのかな?

別にそんな感じで俺の意思を尊重してるなら気にしないのに、変なところで律義な人である。


「結果とは?」

「俺がサレスの意思を改ざんしてるんじゃないかとかそういう疑惑っぽいのが持ち上がってるらしい」

「はぁ?」

「まあ、聞かずに返事したのは確かだからなー。貴族になるのは嫌だっつってたから勝手に返事したんだが……」

「別にそれでいいんですけど。なんでダグさんに疑惑なんです? 来たらむしろ俺ぶっ飛ばしますよ?」


女は殴れない?

そんなことはない。

どう考えても横恋慕するために出てきた女とか女性扱いしたいとも思わない。

っていうか隣国からもそんなのが来てたでしょ! なんで同じことしてんの!

そう呟いたら、それは副ギルマスも突っ込んでたな、とダグさんが言った。何気に有能なんじゃないだろうか、その副ギルマスさん。


「ちなみにギルドにはすでに何人かお貴族様がいた」

「俺、この町出るまで宿から出ません。むしろ部屋からも出ません。給仕が買収されないようにしてもらえますか?

「……買収……」

「するでしょ。その流れ」


夜イチャイチャしてるところに乱入してくる貴族女性とか何の地雷だよ。

高級宿だから給仕の人たちは徹底してると思うんだけど、貴族相手だと買収とか脅しとかいくらでも考えられるよね。

痴女とか勘弁してほしいです。

夜は幸せに寝たいよ!!


「もう一度ギルドに行って抗議してくる……」

「いえ、もうここで一緒に泊まって下さい」

「はぁ?」

「貴族女性がこの部屋に入った段階でアウトでしょそれ……。ティナがいても一夫多妻の法則だと無理だろうし、もう一人いてくれる方がよっぽどいいと思うんでお願いします」

「なるほど」


ということでニックも呼んで一泊することになった。

俺の斬新な対策に『確かにそれだと単純に乱入されたってことになるからいいっすね』と言いつつドアの前で見張りをすることまで手伝ってくれた。

ニックさんマジイケメン。


でも、給仕を無意識に口説くイケメンは滅べばいいと思う。




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