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「いっやぁ、すごかったっす。近年まれに見る魅了魔法具だらけだったっす」

「それでなぜ無事なのかそっちの方が気になる……」

「俺魅了効かないっすよー」


ギルドから宿屋に帰ると、女冒険者を違う宿に送り届けてきたというニックに遭遇した。

相変わらずの変わりない調子に逆に吃驚するが、いつものことらしい。

本当にあくの強い人が多いね!?


「あの勘違い女をそのまま宿に送れる手腕も怖いけどな」

「えー、何言ってるんすか。普通に送っただけっすよ?」


ちなみに道中延々と俺とのなれそめを聞かされたらしいが、一体何を話していたんだろう……。

なれそめと言えるほどの時間を話してすらいねーよ?


「なーんかどうも、彼女自身も魔法にかかってるっぽかったっすけどねー」

「それダメなヤツじゃない?」

「もしかしたら魔法じゃなくて何らかの思い込みを増長するようなことをされてるのかもしれないっすけどね。ちらっと聞いてた限り、ものすごい曖昧な台詞が多かったっすよ。『好きになってくれたみたいだ』とか『私の唇が好きみたいで』とか。キスとかしたんすかって聞いたら『照れ屋でまだ手も繋いでくれてない』とか言ってました。結婚したらしいのにそれってどういう事っすかね」


なんだろうその『モノは言い様です』オンパレード。

逆に吃驚するわ!

まぁ、あれだよな。貴族教育の賜物ってやつなんじゃないかな……。

そんな無駄な方面で威力を発揮しなくてもいいんじゃないかとは思うが。


「というか、あれと長時間接触してて大丈夫なのか?」

「んー。言質は取らせてないと思うっすけど、念のため俺は違う宿に泊まる事にするっす。じゃ、そゆことで」


ということで宿に置いていた荷物を持ってニックは別の宿へ移動していった。

その間、ほんの数分。

ついでに俺とニアミスしたことは秘密っすよ~と言いながら去って行った。

なんだかんだAランク冒険者って言われるだけあるよな、ニック。

確かにあの機転の良さならダグさんの補佐につくのも頷ける。


「つーことで、この町を出るぞ」

「え?」

「ニックは囮だ。この宿を突き止められていない保証はないし、同じ街で夜を過ごすのは危ない」

「でもそれ逆に危なくないです? 追いかけてこられたら『一緒に旅した』とか言われそうな気も」

「それも大丈夫だ。この町はダンジョンのある街だからな。門が閉まる直前に抜ければ、門が開くことはない。後はあの女が街の中にいるかだけ確認しておけばいい」


とことん接触をしない方向で話が決まったらしい。

俺が感じた直感と、話を総合したところ時間をかけるのはまずいって事になったんだろうな。

俺も納得し、ティナとダグさんと3人で出かける準備をする。


だが。

俺はふとした瞬間に気づいた。

そういえば俺、あの女の位置を調べようと思えば調べれるんじゃね? と。

そして実行してみた。

……。


「ダグさん」

「あ?」

「出るの、やめましょう」

「ああ?」

「あの女、門の付近で張ってる」

「「……」」


分かる俺もどうかと思うけど。

段々ホラーな気がしてきたよ?





「どうも内通者がいるようだな」


結局。

門で張ってるなら違う門からこっそり出ようという話になり俺たちは門前までやってきた。

ちなみに戻る道の方の門である。

そりゃ、首都へ行く道への門で張っておきますよね知ってた。


で、やって来るなり不穏なことを呟くダグさん。

どうも俺たちを見て慌てたように去っていく気配を感じたようだ。


「つまり? 俺たちがこっちの門から出ることも考えて見張ってた、と?」

「そうだろうな。どうすっかねぇ」

「向こうが出たならとどまって、止まるようならギリギリに出ればいいんじゃないです?」

「……」


何か信じられないような顔をしてこちらを見てくるダグさん。

いやだな、俺だってこの能力を見せる相手は選ぶよ?

俺たちはたまたまあの女冒険者と違った行動をとるだけであって、それ以上でもそれ以下でもないに決まってる。


「……反則的やすぎないか、その能力は」

「ディグさんから聞いてないんですか?」

「ギルドの奴らからの引継ぎで、勘は良いことは聞いていたが……ディグからは恐らくユニーク持ちだ、という事しか聞いてないぞ。それにしたって一人の人間を完全に位置把握できる能力はやばい。王族には知られん方がいいな」

「言われずともばらしませんよ。――最も、知られたところで俺は王族に協力する気も毛頭ありませんけどね」


ユニークスキル持ちが優遇されるのは聞いたが、どちらにせよ俺は権力に汲みする気は全くない。

俺が現在大事なのはティナ一人だし、王族に利用される立場なんてまっぴらごめんである。

贅沢とか興味ないしな。


「しかし偶然が続きすぎるのも良くないからな……」

「そうですねぇ。じゃあ、一旦門を出て違う門から町に入り直しましょうか」

「は?」

「まだきっと見張ってる人間がいるでしょ? でるでしょ? 追いかけてきたあの女もそれ聞いて出るでしょ? 俺たちは街中でゆっくりすればいいんじゃないですかね」

「……」


何も相手がどう出るかを考えておく必要はない。

時間としては外周をぐるりとするくらいの時間はまだ残っている。

俺自身があの女冒険者の位置を把握していれば恐らく完璧だ。なぜならダグさんが追跡者に気づかないわけがないから。

もし追いかけてくる奴がいるなら捕獲しつつ街へ戻ればいいのだ。

さすがに何人も俺たちの監視をしているとは思えない。

ここはあの国ではないし、ギルドが警戒している中で手足として動かせる人間が何人もいるとは思えないからだ。


「……サレスを敵に回したくねぇなぁ?」

「そうですか?」

「まあ、それ以上の案も思いつかねーから行くぞ」


まぁぶっちゃけ、見張ってる人間が誰かとか人数が全部表示されてるだけなんだけどね!

検索条件を隣国にやとわれてる人間で検索したらヒットしたのは5人だったんだ。

俺への敵意に関してはあと数人いるっぽかったけど、ものすごくゆるい警戒というかピンクっぽい感じだったので恐らくティナを奥さんにしてることに対しての嫉妬程度のモノで、今回は関係ないと判断した。

ということで門全部じゃなくて、人気のない西門は見張りがいないことも知っている。

ここから出てすぐの門が西だから逆に都合がいいよね! 


「お勤めご苦労さん」

「はっ」


本来なら門を出たり入ったりすると呼び止められるようだが、そこはダグさんである。

冒険者ギルドから不審者対応を任されていると説明し、難なく出て、そしてギリギリの時間にもかかわらずすんなり入ってしまった。

というかまあ、ダンジョンの街でダグさんに文句言う人とかいるわけなかった。

そもそもギルマスって時点でギルドカードが豪華だし、逆らうわけがないのである。


ということで俺たちは街中に戻って寝ることにした。

場所?

ギルドとは関係ない高級宿でしっぽりでした。

高級宿の方がプライドが高いのでこういう時には向いてるんだってさ。



えへへ。




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