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ギルドまで走ると、すぐダグさんに遭遇できた。

というか向こうが走ってきていたので、合流は簡単だったのだ。


「お!? 無事か、サレス!」

「無事じゃないです!!!」


ダグさんも慌てているということは、やはりあの女冒険者に何かあるに違いない。

そう思って暗に遭遇したことを伝えると、ダグさんは難しい顔をした。


「むぅ。とりあえずギルドに戻るぞ。厄介なことになった」

「私はなにがなんだかなのですが」

「話は後だ」


ニックのことが気がかりだったのでその旨を伝えたが、ダグさんは特に問題ないと返事をよこした。


「アイツがまぁ餌食になったところで自分で何とかするだろうから気にするな」

「……」



冒険者は自己責任。

俺は彼の冥福を祈ることにした。





ギルドの一室に入って一息。

少し待っていると、このギルドの補佐官らしき男性がお茶を運んできてくれた。

心なしか冷たい目で見られている気がするのだが何でだろう……。


「さて、ティナ。何があったか教えてくれ。無事じゃないって何があった?」

「昔から私を目の敵にしてる女冒険者が突然現れて、サレスを『だーりん』とか呼んできやがったのです」

「それで?」

「『同じ嫁』とか、明らかにサレスの嫁になってますみたいな発言してきたので否定しようと思ったのですが、サレスに止められてギルドへ走ったのです。それだけなのです」

「ふむ」


なんかますます補佐官らしき男の視線が痛い。

なんだろうなこれ。

ダグさんの調子は変わりないのだが。


「サレスは何で応答せずに逃げたんだ?」

「勘、ですかね」

「「勘?」」


頷く。

相手に俺を嵌める気があるなら、応答は一切してはダメだと思ったのだ。

言葉をどう取られるかわかったもんじゃない。

それに、あの女は気になる台詞を言っていたのだ。


「『あんな熱い目で私を見てくれてたのに』」

「? なんだその台詞」

「あのくそ女の台詞なのです。これがどうしたのですサレス」

「いや、コレ、あの女の中では『真実』なんじゃないかと思ってさ。俺はそんな目で見た覚えは一切ないけど、あの女本気でそう言ってたから。あ、コレ理論通じない上に裁判とかなったらダメなヤツだと思ったから言葉を交わすこと自体を避けるべきと思った」

「「……」」


親父さんとの話し合いで少し出てきたんだけど、この世界の裁判っていくらでも誤魔化しようがあるんだよな。

判定が本人の意思が見えるってことで、それを逆手に取るものならいくらでもあるのだ。

例えば俺がどんなに嫌がっても、あの女の中でどうなってるかって話だから。


ふと顔を上げると、補佐官の視線が少し和らいでいた。

ダグさんが俺の言葉に納得したように先を聞いてくる。


「ちなみにその冒険者とサレスが会ったのは何回だ?」

「1回ですね。なんか近づいてきて不愉快なこと言われたんで、そのまま置き去りにして帰りましたけど、それがどうしてああなったのか俺の方が訊きたいです」


俺が応えると、補佐官がダグさんの隣に座ってきた。

ダグさんの目線により、質問相手が彼に変わる。


「1回ですか。腕を触ったり、手を触ったりは?」

「一切ありません。むしろ寄ってくるのが気持ち悪くて避けたぐらいですね」

「接触はゼロ。近寄ってきたのは相手から。それまでに彼女を見かけたことは?」

「覚える限りではありませんが、向こうは俺を見つけていたと思います。ティナとのことを訊かれたので、少なくともティナとふたりでいるときを見られていたんだと思います」

「なるほど」

「あ。俺がベンチに座っていたので、その横には座られました。すぐに離れましたが、それが彼女の中でどうなってるかはわかりません。後……」

「あと?」


ちら、とティナを見る。

ティナは何かを気づいたようにあ、と声を漏らした。


「……その時の俺は、ギルドの監視がついていまして。俺のその対応について、『仲がよさそうだった』『いちゃついていた』みたいにティナに報告されたことがあります」

「それは……厄介ですね」

「どこの馬鹿だ。その内容でそんな報告しやがったのは」


ああ、やっぱり厄介なのか。

ハーフェンはこっちに連れてきておくべきだったかなぁ。アイツ、向こうの国で拘束されてるんじゃね?


「もう隣国に帰ってると思います。途中まで護衛として連れてきていたんで……」

「ディグに連絡入れる。その冒険者が率先して隣国の思惑に乗ろうとするんじゃなきゃ恐らく大丈夫だとは思うが……」


それは、微妙なところだなぁ……。

一応護衛は悪くない判定でハンコ押しちゃってるし、下手すると『俺と仲の良いハーフェンが太鼓判推した』みたいな話になるんじゃね?


「……微妙なんだな?」

「ティナのことが好きだったんでそんな報告だったんですよねそいつ……」

「「……」」


これで結婚が無効になると、ティナは強制送還を食らう可能性があるんだろうか。

でもそれだとハーフェンがそんな報告する義務がないんだよなぁ。ティナ自身の不利益になることを言うとは思えないし、どういう流れになるんだろ?


「ところでダグさん、俺結局彼女がしようとしてることは把握してないんですが、何があったんですか?」

「あ? なんだ今更」

「俺たち聞いてないですよ。なんかろくでもない思惑であの女冒険者が俺のところにやってきたんだろうって事は馬鹿でもわかりますが」


俺の台詞に反応したのは補佐官の方だった。


「なるほど、本当に冤罪のようですね」

「冤罪?」

「ええ、貴族と結婚しているのに獣人と重婚したと、向こうの奴らが言って来たのですよ」

「「はぁ!?」」

「向こうの国は一夫多妻でありますが、貴族と獣人の婚姻は認めていませんからね。もし、あなたが貴族と結婚していて隣国籍であるならばこの国に来ていることが違法になり、ティナさんとの結婚も無効になり二人とも強制送還になります」


マジかー……。

まさかのアクロバットな奪還方法が来たよ。

どんだけダークな方向に走りたいのあの国!?


「とはいえ」

「?」

「隣国の思惑なんてばれっばれですからね。今王族と連絡とって抗議している最中になります。その途中に件の女冒険者がこの町に入ったと情報が入りまして、これはまずいとダグラスさんに走ってもらったところだったんです」

「ちなみにどうまずかったのかお聞きしていいですか?」

「貴方があの女の言い分を肯定した時点で結婚が成立する可能性がありました。成立してしまえば順番なんて関係ありません。貴族籍に一回入ってしまうと国に記載が乗りますから……」


……。

あぶな、かった……!?

危なかったよな!?

まさかの鑑定眼が超有能過ぎた件!? ユニークスキルの有用性半端ねぇ!!


「……念のため、ギルドカード確認していいですか」

「いいですよ」


俺はこっそりとギルドカードを取り出す。

見るのは個人情報欄だ。

婚姻者の名前にはティナの名前があり、その他の記載は特に……特に……。

ん?


「あれ?」

「何かありましたか!?」

「いえ、なんか変な称号がついてて」

「?」


ちなみにギルドカードと見せかけて、俺はギルドカードサイズに変更した神様にもらったステータスカードを実は見ていたりする。

これだとかけられた魔法とか倒した敵とか実は乗ってるってこの前気づいたんだよね。

ギルドカードは狩に行ってないから更新してないし、念のためと思って詳細を見ようと思ったんだが……。

なんか称号に、『一途な旦那様』ってついてる。

いや間違っちゃいないけど、何故ついたんだこれ?


「称号?」

「あ、なんでもないです。とりあえず婚姻関係に記載されてるのはティナだけです」

「それなら安心ですね」


こっそり詳細を確認してみると、どうやら魅了耐性がついているっぽかった。


――『一途な旦那様』

誘惑に耐え、嫁一筋だとつく称号。

習得条件:魅了魔法に10回抵抗する。


「!?」


習得条件が不穏すぎて逆にビビった。

何それ!?

俺は一体いつ魅了なんてかけられてたんだよー!?!?!




テンプレが あらわれた!

どうする?


→たちむかう

→にげる


サレスは様子見している……。

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