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一通りの鍛錬を終えたところでティナがひょっこりと顔を出した。

鍛錬を一緒にするのかな? と思ったけど、時間も遅いし武器一つ持ってきていない。

それどころかちょっと歩くのも辛そうである。


回復魔法はかけたんだけどなぁ?

とはいえ、ティナが気絶した後に疲労度回復を考えてかけただけなので具体的に痛い場所を想像して治したわけでもない。

ので、まだどこか痛いのかもしれない。


……どことは言わないけどね!


ダグさんも顔を出したティナにどことなくニヨニヨしているが、特に声はかけてこなかったのでありがたく切り上げさせてもらうことにする。

汗臭いので水かお湯を浴びようと思い自室に帰ると、しっかりと風呂が用意されていた。


「ふふ。私も入ろうと思って」

「なるほど」


ということで朝からいちゃつきました。

詳細? 秘密!





ということで出発である。

なお、どこか痛いところがないかは確認してちゃんと治させていただきました。

どうも腰が痛かったらしい。

なんでだろうね? ベッドが柔らかすぎたからかもしれないね(棒)。


「か~っ。新婚は、いいねぇ!」

「伯父様……」


親父くさいことを言いつつ、べったりくっつく俺らの横をニヨニヨと進むダグさん。

さらにその隣では爽やかさを保ちつつ、どこか疲れた表情のニックが歩いていた。

そういえばこの人鍛錬にはいなかったような気がする。

どこにいたんだろうね?


残りの冒険者ずはさぞ俺を舐め切っているだろうと見回してみたが、態度は普通だった。

一緒に鍛錬をしたのが良かったのであろうか。

低ランク冒険者なので何かしら嫌な目で見られる覚悟はしていたのだが、一日経った現在ではなんか普通の護衛と化していた。


……なんでだろう?


謎ではあるが、観光に出発である。

観光。

そう、しょっぱな首都への道から外れる進路であった。


「……首都あっちでは?」

「おう。まずはこの国で一番のメインスポットから案内が必要だと思ってな!」


会話が噛み合っていない。

つまりどこへ行くんだってばよ?


「ティナはどこへ行くのかわかる?」

「勿論なのです。隣国へ行く道から脇にそれるこの道は、一つの場所にしか通じてないのです」

「ほえ?」


まさかの行き止まりへ行くパターン?

首をかしげるとニックが口を挟んできた。


「行き止まりではないっすよ。もう一つの道はその場所から首都に伸びていて、道中にもいろんな観光名所があるいわば迂回路みたいなものっす。まあ、俺らが通ってきた道とは違ってしまうから掃除した意味は……とは思うんすけどね……」

「……」


つまり?

先ほど通りすぎた道はダグさんたちが通ってきた首都への道で、直行。

今進んでる道はある場所を通って首都へ行く道で、ぐるっと回る迂回路ってことか?

って掃除した意味ほとんどないじゃん!!!

どうしてそうなった!!!


「いやあ、思ったより戦力があるみたいだからこっちをメインにしたほうが楽しいだろうと思ってな!」

「……」

「サレス、諦めるっす。今日ギルマスがうっかり決めたことっすが、すでに決定事項っぽいっす」


ニックが疲れているのはどうやら、ギルマスを止められなかったことによるものらしい。

ごめんね! 夜の疲れかとかちょっと思ってごめんね!

で、どこへ行くんだってばよ?


「それはもちろん……」


溜めるダグさんに、息を飲む一同。

いや、君たち全員しってるよね?

分かんないの俺だけだよね?

そんな俺の内心のツッコミを無視して、ダグさんは高らかに宣言したのであった。



「ダンジョンだ!!!」



え、ダンジョンってあのダンジョン?





「ということでここが国内最大ダンジョン、『腕試しダンジョン』だ」

「う、腕試し?」

「おう。ダンジョンの種類は主に2種類分かれる。人が死ぬダンジョンか、人を試すダンジョンか、だ」

「……」

「まぁ試すダンジョンの方でも死ぬ奴ぁ死ぬんだがな! 要は内部に致死系の罠があるかないかで区別されてんだ。ここは最大級の大きさを誇るが致死系の罠は殆どないため、観光地としても有名なダンジョンにあたる。低層を見て回るツアーなんかも貴族相手にやってるぞ」


流れる様な説明はさすがギルドマスターってところだろうか。

っていうかどうやらこのダンジョン、普通に冒険者ギルドが管理してるものらしい。

中には危険すぎて一般人には封鎖されており、高レベル冒険者が間引きするダンジョンも存在するとか。

まあ、俺にはきっと縁のない話だけど。


「殆どないってことは、あるにはあるんですか?」

「最下層に近づけばあるぞ。ただ、そこまで潜るとなると相当な熟練者でないと対処が難しい。どうしても見たいっていうなら連れていってやってもいいが」

「いや行かないです! 俺まだ初級冒険者なんで!!!」

「お? そうなのか? てっきり中級くらいにはなってるかと思ったが」


あ、どうだろう?

そういえばしばらく自分のステータスは確認してないな。

でもとりあえずそんなスリルは求めてないので丁寧にお断りさせていただいた。


「行かないのです?」

「い、いかないよ?」


しょんぼりしているティナには悪いが、ダグさんに任せた観光とか何を呼び寄せるかわかったもんじゃない。

俺とティナだけで対処できるレベルの階層でのんびりするのがいいと思うんだ。

どこに行こうとダグさんはついてくるわけだし、そのダグさんがソロで潜れるほど強かろうとも俺が足手まといになるのは目に見えてるしね。

身の程を知るのは大切だと思うんだ!

だからそんな切なそうな目で見ないで!


「あたり前っすよ。ギルマス、一応彼らを首都に連れていって状況が把握出来るまでは危ないことはしないって言ったばっかりじゃないッスか。よりによって目撃者が少なそうな階層に連れていくとかあほっすか」

「……ちっ」

「あ、なるほどなのです!」


ニックのフォローによりティナの機嫌が治る。

俺はそれに畳みかける様に提案をすることに決めた。


「まあ、入らないわけじゃないから大丈夫だよ」

「! はいなのです~」


戦闘狂なのはわかってるからね。

デートが戦闘でも俺は嫁のためならダンジョンに入りましょう。

強くなるのはいいことだしねー。




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