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通常運転。
異世界生活たぶん30日目。
31日目だっけ?
とりあえずひと月経ちました。はい。
現在の目標達成率:200%。
え? 嫁が第一目標で最終目標だから当然だよね!
いやあ爽やかな朝だなあ!
「むにゃ……」
寝ぼけてころころと転がる嫁を愛でつつ、こっそりとステータス確認。
なんだかんだティナのステータスってしっかり確認してなかったんだよね。
遠目で見る分には挙動不審にならないとは思うんだけど、目の前でステータス覗くのって勇気いるし。
大体は確認してあって予想通りだったんだが、blessの項目に新たなものが増えていた。
Bless:武神の加護・創生神の祝福
創生神って俺のBlessにもついていたから、おそらく結婚によってついたもんだと思う。
祝福って文字通り祝福なんだろうなぁ。
ちなみにBlessの数は人によって違うし、ついていない人も多いので神様が気まぐれにくっつけてるって感じのようだ。
武神に関しては親父さんやダグさんもついていたので、家系的なモノとも考えられる。
まあ神様使いっぱしりさせるような世界だし、案外近くで見守ってるのかもしれないね。
恐らく俺を転生させてくれた神が創生神なんだろう。
ちなみにステータス的には俺の方がかなり高い。
元々のステータスの上がり方がおかしいため、途中から狩りを殆ど同じにしていたのでレベル差が減ってステータスが追い越してしまったのだ。
技術的にはティナの方が強いんだろうけどね。
俺、対外的には魔法使いのはずなのに筋力からなにから全部ステータス上回ってるってどうなのって感じは……する。
ぽり、と頭をかく。
「鍛えるべき、だよなぁ……」
住居についてからと考えていたが、どうやら首都までは急がずにのんびり行くらしいし、同行者はティナの伯父さんだから信頼できる。
親父さんは病み上がりだったから言いだせなかったが、どうみても戦闘面むっちゃくちゃ強そうなダグさんであれば、俺の修行ぐらい簡単につけてくれそうである。
逃げ足には自信があるが(考えたとおりに身体を動かせるので結構楽勝)、戦闘にはぶっちゃけ自信がない。
ここはひとつティナが寝ているところでさっくり行くべきだろうと俺は結論付け、空中に視線をさまよわせた。
……。
どうやら予想通りというか、中庭で素振りをしているようだ。
少しだけ遠巻きに何人かいるっぽいが、こちらもついてきている冒険者かな?
恐らく朝鍛錬であろう。
予想に違わない行動をしてくれる御仁である……。
ということで槍を持ってレッツ突撃。
「おうサレス、はえーな?」
「ダグさん程じゃないですよ」
結構夜遅くまで起きていたのは同じはずなのに、ダグさんは見た目通り体力もあるのかぴんぴんしている。
これが酒をがぶ飲みしていた人の翌日の姿であろうか……。
ちなみに朝鍛錬は予想通りであったのだが、彼は木剣とかそういったものは使っていなかった。
うん。
そりゃ皆距離取るよね!
どうしてこの狭い中庭でそのでっかい戦斧を振り回せるかなぁ!?
一撃でも当たったら即死するよ!?
「サレスも鍛錬か?」
「えーとまあ。実は、その……」
「うん?」
基本的に魔法使いであるため、接近戦等は不得意である事。
基本的にティナとペアであるため、中衛として槍の心得はあるが誰かに師事したことはないこと。
そのため、身を守るために槍の腕を少しでも上げたいのだが、誰かに習えないか、と。
一応力はあるから斧を習ってもいいんだが、ティナが双剣使いなのでペアとして動くのは微妙である。
その点槍なら中衛でも2列での後衛でも可能だ。
勿論魔法を使っての補助をしながら牽制も出来る。
あと武器のレベルの中では一番高いので槍を伸ばすのが無難じゃないかという俺の結論であった。
「槍、なぁ?」
「ええ。誰か使ってないですかね?」
AからDランクの冒険者が数人いるならば、誰かしら槍ぐらい使えそうなもんだが……。
ダグさんの反応は非常に薄かった。
なんでや。
「ついてきてるヤツにはいねぇなぁ」
「え、そうなんですか? 護衛武器としては結構有用だと思うんですけど」
「まぁな。有用は有用なんだが、この国じゃあソロの人間が多い分槍は人気ねーんだわ」
「へ?」
槍って使ってみて分かったけど、結構万能武器だよ?
まさかの不人気とかめっちゃ予想外なんだけど。
「意外か?」
「えっと、はい」
「まぁそうだろうなぁ。この国の特色とも言えっからなぁ」
鍛錬は一時中断して話を訊いてみると、まさかの獣人がいるから説が浮上した。
曰く。
獣人は基本的に素早く、動きを捉えるのが難しい。
その対処と言えば。
剣―素早く振って切りつける。
短剣―懐に来たところを切りつける
斧―範囲を攻撃して近寄らせない。
そのため、槍みたいに一点をつく上攻撃する位置が身より遠いのは人気がないってことらしい。
おいおい。
魔物相手はどこ行った!?
「魔物相手やPTでは人気あるんだがなー。そういう奴は連れてきてねーんだわ」
「へ?」
「ソロで反抗心強い奴ばっかりなんだよなー」
訊いてみればなるほどという事情だった。
護衛兼、ソロの奴らの面倒を見るって事だったようだ。
個人個人では強いが、どうしても協調性が薄い冒険者を中心に連れてきているらしい。
それって俺らの身は無事なんですかね!?
「まー、俺が護衛対象と離れることはねーし。もし隣国の奴らと迎合するヤツがいるなら早めに対処しねーとだからなぁ……?」
「……」
にやぁ、と笑った顔が……怖い。
そ、そうっすか……。
全部織り込み済みで連れてきてるのか……訊かなきゃよかった……。
色々黒いな!? 冒険者ギルド!
まぁダグさんがギルド最大武力であるがゆえに、逆らわせない自信があるのかもしれないけど!
「ま、今日は身体動かすことだけしといたらどうだ? ほぼ素人なんだろ?」
「あ、はい。一応使えるつもりですけどお願いします……」
ということでダグさん素手VS俺槍で訓練を付けてもらえることになった。
魔法はなしで。
使ってもいいと言われたが、俺って聖属性だしそもそも人相手に攻撃魔法とか怖くて使えない……。
なので型は出来なかったがある程度の魔物の捌き方に関しては魔物の振りをしてもらえることで会得できたのであった。
途中からなんか周りの冒険者ずが動きを止めてた気がするんだけど何があったのかな。
ダグさんがなんか満足そうに槍に拳を当ててたのが気になって仕方ありません……。
壊さないでよ? 俺、金ないんだから……。