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おお冒険者よ、死んでしまうとは情けない。
って言うべきかな、これ?
「サレス、大丈夫だったのです?」
「ん? 余裕余裕」
朝起きて、いつの間にか戻ってきていた俺を見てティナが心配そうに声をかけてきた。
他の人間が若干どんびいてる気はするが、別にどうということもないので無視をしている。
ゴレムさんがさらに微妙そうな顔をしているが、相手がどういう人間かも知っているゆえに俺の行動を咎めるのも筋が違うと思っているらしく、結果を聞いてきたのみだ。
成功したよ、としか返していないが。
ちなみに仮にも凄腕冒険者ずを倒すために倍で来たのかな、と思っていたので俺らと同じ人数のオークをぶつけてみたのだが、ぶっちゃけやりすぎたったらしい。
らしい、というのは戦い自体を見ていないからである。
とりあえず敵意自体はなくなったので策自体は多分成功している。
全員逃げれたかどうかまでは追えていないが、連れて行ったオーク自体は3人ほど減った上で森に戻っていたので死闘は繰り広げたのではないかと思われる。
むしろオークを人数分集める方が大変だったよね。
後は襲撃された跡を確認せずに野宿する場所を出発するだけである。
確認? しないよ?
冤罪ふっかけられても嫌だしね。
一応生き残られた時を考えて顔は隠して横を走り抜けた上で布をぶつけてきた(血が付いた後の布はすぐに回収した)が、まぁ常習犯のアイツなら誰にやられたかぐらいは気付いているだろう。
逃げ足だけはあるのか、あの冒険者自体は街へ戻っているのは確認できた。
ついてきていた人間が『誰』かを俺は知らないので、他の人間に関しては『敵意が消えた』としか感じ取れていないけど。
なお、盗賊に襲われるかなと森の方は警戒していたが、オークが固まってうろついていたせいか森からの盗賊は来なかった。
なので普通に出発して関所まで移動するだけである。
なるべく人が動いていない時間に街をすり抜けたいので、朝早くから起きて全員移動である。
「しっかし……よくそんなこと考え付いたなあお前」
「俺が考え付いたんじゃないですよ? 俺はやってくるだろうことを先にやり返しただけです。相手の人数的に正面突破も変、近づかれてもろくなことになりそうにない、となると接触を最低限にするのが鉄則なんでじゃあやられる前にやればよくね? です」
「あっ、はい……」
自分一人で迎撃することも考えたのだが、どの程度の魔法を使えば相手を殺さないかとか真面目にわかる気がしない。
直接じゃなくても血を噴いてるところ見るだけでも卒倒しそうな気がしたので、考えに考えた結果ともいえるだろう。
まあ、うん。
戦闘の痕を確認しに行かないのも、ぶっちゃけ逃げである。
自分がしでかしたことを目の前で見たら、きっと動けなくなるのだろう。
思ったより簡単に乗り越えるかもしれないけど、そんなのはその場になってみないとわからないので冒険する気にはなれなかった。
ちなみに全員なんとか俺を止めようとしていたのだが、じゃあなんかほかに案有る? ときいたら全員が黙ってしまったのでそのまま作戦を遂行した。
他にいい案があればのったんだけどね。俺もこれ以外考え付かなかったんだから仕方ない。
俺もやられてなかったら自分がやれないなら魔物にやらせばいいじゃない、とはならなかったと思う。
だから因果応報だろ、ということで許してもらいたい。
守られる筈の俺が率先していくのはどうなの? というのはあったんだけど、直接戦う気はないしすぐ逃げることを約束してこちらも許してもらった。
ティナは最後まで不安そうにしてたけどね。
あともう一個テイムを使ってけしかける、というのも考えたのだがテイム後の魔物がどうなるかわからなかったので封印した。
テイム能力があることが分かって拘束とかそっちの方が笑えないしね。
この能力については隣国に行った後に考えたいと思う。
「じゃ、行きますかー」
ということで早朝です。
全力で街横をすり抜けて関門まで行きます。
早目に野宿して全員で早めに寝たので動きはきびきびしているし、思ったよりも早い。
アイツが戻っているので別の嫌がらせをされる可能性はあったけど、その前に抜けてしまおう作戦である。
なお、俺は鑑定眼を精いっぱい使ってこうしました。
見張りがいそうな位置を全力でスルー。
うん、普通は街道に沿って何人か設置するよね、知ってた。
なので街の傍には寄らずに街道を避けて進行です。
荷車は確かに邪魔なんだけど、元々宿場町を作るくらいの大きな平野でそれほど草は生えていなかったので普通に押して行けたのは助かった。
「なんつーか……」
「?」
「やってることは邪道な気もするが、それが問題あるかっていうと別に問題ないな……」
「俺、平和主義ですし」
「「「どこが!?」」」
本来MPKと言ったら恥ずべき行為であるわけだが、そもそも最初やってきたのは相手っていう不具合である。
いやね、少し微妙かなって言う気持ちは確かに俺にもあるんだけど、それ以上に『お前がその気持ち味わえよ』という気持ちの方が強いんだと思う。
だから俺は後ろは振り返らないことにした。
「この調子でいけば、関門までは夕方につきそうだな」
「追ってこなければいいですけどねー」
「多分追いついて来れんだろう。街道にももう戻ってるし、一人二人の斥候なら倒したところで関門まで走り抜ければなんとかなる」
まあ、鑑定眼起動のために現実は振り返るんだけどな!
何度も振り返りつつ確認してるが、貴族は冒険者を含め動いている気配はない。
どういう事になったかは想像つかないが、護衛を削って追いかけて来るとかそういう事はないようだ。
追いかけてきたところで関門自体までたどり着けばいいって親父さんにも言われてるし、街へ入らなかったことで相手が詰んだって思いたい。
これ以上のごたごたはめんどくさいし。
フラグは終わったのか、俺たちは無事関門につき。
そしてギルドのお迎えと合流したのであった。
到着国辺終了。
次話より多種国家に入ります&ストック切れ。
のんびり不定期更新になります。




