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野宿には少し早かったが、元々練度は高い冒険者ズなので指示をすれば野宿の支度はあっという間に整った。

宿場町近いのになんでこんなところで野宿?

というのは通りがかった商隊に思われたかもしれないが、行先の宿場町は多分埋まってるはずなんで後で納得してもらえることだろう。


別に逃避行である事は間違いないんだから、評判とかどうでもいいんだけどね。

ちなみに関門に関してはお互いの国の人間が両方配置されているらしいので、関門に関しては通り抜けは問題ないと親父さんにお墨つきをもらっているので安心だ。

というか、関門までは隣国のギルドの人間が迎えに来てくれるらしい。

笑えるほどのVIP待遇である。


幸い街道に関してはちょうど森の切れ目の広場っぽい場所であったため、野宿は森を背にする形で行われた。

視界は良好で、盗賊は俺が早めに察知できる。

そうして数時間すごした時、ソレは動き出した。


「あー……来ちゃうっぽいなぁ」

「?」


スープ類を作るだけの質素な夕食が終わった後、俺は監視していた相手が動いたことに気づいた。

といっても動いたのは貴族じゃない。

貴族配下の冒険者の方である。


うん、お気づきの方も多いだろう。

ゴレムさんも立派にフラグ回収しやがりました。

まあ、あの冒険者、俺に恨みあるって言えばあるだろうしね……手を組んでても不思議はないよね……。

元々裏で繋がっていた可能性もあるかもね、馬鹿な貴族がそんなにいても嫌だし最初から一つって思う方が精神衛生上もいいと思う。


「来るって誰がだ?」

「んー……俺を狙ってたヤツ? の配下っぽいのが来ると思う。人数はえーと……10? 15……ぐらいかな」


敵意のある人間は、やはり貴族の護衛も入っていたのだろう。

半減した数でも結構な人数がこちらに向かっていることが俺には伝わってきた。

っていうかまあ、メッセージがこう出てます。


――4㎞先には貴方を狙っている人間が14人いるようだ。


半分以下なのは、やっぱ護衛の方が多かったってことかなあ。

相変わらず人間表記なので、盗賊って事ではないみたい。

俺の鑑定眼さん時々変な表示するから何とも言えないけど。


「問答無用で来るかな?」

「この見晴らしのいい場所でか??」

「……」


普通に考えて、街道から外れてるのに寄ってくる人間とか警戒対象である。

盗賊と間違われて攻撃されても文句は言えないレベルであるが、逆に相手が貴族となると……駄目な感じがするな、それ。

強引に無礼うちにするアレかな?


「うーん……一応、こっちから攻撃したらなんか抗議される気はするんだけど」

「まぁそりゃそうだな。ただ、一応ギルドの記録に殺人は載らないと思うぞ? 正当防衛になるはずだ」

「え、そうなの?」

「まぁな。この記録自体は神の領域だからな」


でもそれじゃあ冤罪なんてものもならないんじゃ?

と思ったが、そこはそれ、穴というものがあるらしい。

つまり攻撃した側が「正当防衛だ」と思っていれば載らないと考えられているらしいのだ。

それゆえに、勝手に正当防衛と思い込み攻撃したと糾弾することは可能らしい。


そして相手が貴族であれば、殺人の意思があったかなどの表記を提示する義務がない。

もしくは誤魔化されたり民事っぽい感じで判決がうやむやになる、なんてことがあるらしい。

まぁ、納得できるな。

表記自体は神様が司ってても、判決その他を人間が言い渡すのであればごまかしは確かに効くだろう。


「じゃあ襲撃自体が時間稼ぎの可能性もあるかなー」

「時間稼ぎ?」

「要はティナを拘束できればいいと思ってるんじゃないかな、って。何らかの形で足止め出来たらいいし、最低でも俺が死んだらティナはこの国を出れないから俺が狙われてるのかなって思う」


ティナをさらったりするとその分、余罪がつく。

ギルドのごまかしがきかないのであれば、その手段をどうにかしようとするのは考え付くだろう。

あー……もしかして、それであの冒険者が俺を攻撃しに来るのかな?

別の理由で俺が死んでいればギルドの追及も誤魔化せてティナを拘束できるとか考えていそう。


まあ、それを許す気なんて全くないけど。


「ねぇねぇゴレムさん」

「ん?」

「正当防衛って、相手の敵意を俺が感じてて攻撃したなら、殺人表記にならないってことであってる?」

「まぁ、そうだな」

「じゃあ、今現在進行形で敵意を感じてる俺が、あっちを攻撃したって正当防衛になるよね?」

「!?」


ざわ、と周りの護衛冒険者がざわめくが、俺はそれを無視した。


うん。大丈夫。

ここぞという時に使おうと思って、練習した経験が俺の中にはあるのだ。

勿論日本人らしく、殺人に忌憚がある俺は、積極的に殺人しようという気はしていない。

ということで、やることはこれである。



やられたら やりかえせ。




「じゃあ俺ちょっと前方の森の入って、オークを相手にけしかけてくるね!」

「「「はぁ!?」」」




大丈夫、俺には見えている。

俺の走る速度に相手がついて来れないだろう事も、相手が来るだろう方向の森の中をちょっと入ったところに数体オークがいるであろうことも、おびき寄せるには仲間の血の匂いがあれば十分であることも。

アイツはきっと忘れているに違いないだろうけど、俺は逃げ足だけならちょっとしたものなのだ。モンスターであれば避けておびき寄せるくらい、やれないはずがない。

一度やられたことは俺は忘れん。

いつかやり返してやろうと思ってちゃんと調べてあったとかそういう根暗な内容は内緒だけどな!!!


「お、おいサレス……様?」


ハーフェンがドン引きするのが見えたが、俺はにっこり笑うことで誤魔化した。


「あ、ここ風上なんであんまり動かないでくれな? こっちに来させたくないしさ」



勿論野宿の場所自体も確信犯でーす。

俺、平原で襲われたよねー。



結論:やられるまえにやれ。

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