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それからの展開は早かった。

元々隣国へいく気満々だった俺と、できれば早めに隣国へ娘を送り届けたかった親父が暴走した結果、結婚の約束をした翌日には結婚していた。

何を言われているのかわからないと思うが俺もわからない。

俺が人族ゆえに結婚自体の許可は速攻でおり、ティナが帰ることについてはティナが巻き込まれた陰謀を盾にギルドがごり押したんだそうな。

まあ、俺がEランクだったのも逆に良い方向に働いたらしい。

逆にランク高い人間と結婚になっていたら難癖つけられたかもなと言っていた親父さんのドヤ顔がなんか少しだけうざかった。


そんなわけで俺は、あれから3日後である今日この国を出る。

展開早いな!?

端折る日数すらなかったよ!!

ということで異世界生活26日目、朝である。


ちなみに二日分が空いているのはギルドの暗躍期間です。

あとあわよくば自分も帰ろうとした親父さんをギルドが引き留めていた時間ともいう。

何でも契約上やっぱり確実な不備がないと帰れないんだそうだ。

事実病み上がりなわけで、そこは通してやれよなーとは思うものの、娘に目線を行かせないためにもと割とすぐ折れたらしい。


まあ、親父さん的にティナがいなければなんとでもなるって事なんだろうと思う。

その気になれば本当に街潰せそうだもんねこの人……。


そんなわけで俺はギルドに手配された護衛PTと一緒に、隣国へ渡る事となった。

なったのはいいんだが、なんか視線がすごく痛い。

特に一人の男からのジト目が酷すぎる。


「サレス? どうしたので……どうしたの?」

「ん? いや、俺まだ初心者だから護衛の人たちの顔と名前が一致しないんで見てただけだよ。紹介してくれる?」

「了解! ……なのです。あ」

「いや、無理に直さなくていいから」


敬語はなしで、と言ったがために直そうとして失敗しているティナがかわいい。

ほんわかと和んでいると、びしぃ! と何故か俺とティナの間に手が割り込んできた。

何すんだよ。


「オレはハーフェン! Bランク冒険者だ!!!」


そのままどや顔で俺とティナを分断されても反応に困る。

なんなの?

敵意丸出しなんだけど、ティナに敵意がある人間を親父さんが選ぶとは思えない。

なのに俺は睨まれている。

そのココロは?


「えーと、ハーフェンはこの前父に蹴っ飛ばされてた冒険者なのです」

「ああ、はい」

「そんな!? ティナさんそれは言わないお約束でしょう!?」

「おやくそく? なのです?」


ティナが首をかしげているが、俺にはその説明だけでとてもよくわかりました。

つまりコイツはあれですね。

俺とあの変な女のことを悪意ある伝達でかき回してくれた冒険者。

すなわち、ティナに横恋慕するバカってことだな!


うん。しめる。


「……サレス? 笑顔が怖いのです!?」

「ん? すぐ終わるから向こう向いてていいよ、ティナ」


俺とティナを分断した手をがしりと掴み、さあどうしようかなと思案しているとティナは慌てて止めてきた。


「こ、こう見えてもハーフェンはそれなりに腕が立つ冒険者なので、出来れば穏便にしてほしいと言っていたのです」

「誰が?」

「父が」

「ちっ」


その間ハーフェンは手を振り回そうとしていたが勿論俺が手を放すわけもない。

親父さんの意図を汲んで舌打ちして手を放してやると、何故かハーフェンは茫然と俺と手を交互に見ていた。

何その反応。

ランク低くても筋力で勝つことはあると思うよ?

まあ、俺の場合はステータス詐欺だけど。


「ハーフェン、サレスはえーっと、こう見えても実力は結構あるのですよ?」

「へ?」

「だから仲間割れはめっ、なのですよ?」

「ティナさん……」

「サレスも手出しはめっ、なのです。数は力なのです」


仲間割れというか、一方的な悪意だった気がするんだけどまぁいいか。

ティナちゃんの態度、どうみてもこいつの好意に気づいてないし。

というか好意じゃなくて欲としか見られてないと思ってんだろうなあうちの嫁は。

親父さんがティナを好きすぎて悪意を吹き込んだ、とまで言っていたというのにこの反応。

頭数としか考えてないとかなんといっていいかわからないほど不憫な扱いである。


ぷぷっ。ざまぁ。


「……ッ!」

「まーお・れ・の・よ・め・が? そう言うなら仕方ないなー」


嫁がの部分に力を入れてにっこり笑ってやると、明らかに殺気だってこちらを睨んでくるハーフェン。

うん。通じないなー?

ティナの態度、明らかに俺の方が強いからいじめるなって言ってたもんね!

俺が手を出すよりよっぽどティナちゃんの言動の方がトドメさしてたよね!

その方が面白いからティナにはあえて気を付ける様には教えはしないけどね。ぷぷっ。


「おーいサレスさんとやら、あんまいじめてやるなよ?」

「あれ、ゴレムさん?」

「よっす」


顔を真っ赤にしているハーフェンの肩に手を置き、なだめる様にひょっこり顔を出した男には見覚えがあった。

あのMPK騒動で話しかけてきた上級冒険者(仮)のゴレムさんである。

というかこの人は見た目だけでもわかるくらいには強いので、これ結構な護衛揃えてきたんだな親父さん。

まぁ、あの人が娘の安全に手を抜くとも思っていないが。


「意外なところで再会しましたね?」

「俺としちゃまだ再会したくはなかったんだがなー。まあお姫さんの安全はギルドの最優先事項だから仕方ない」

「ん? ってことは、もしかしてあの話まだ解決してないんですか?」


あのMPK野郎が捕まったからこそ次の仕事にこちらへ回されたのかと思ったのだがどうも違うらしかった。

というか仕事途中の人間まで護衛にひっぱってくるって親父さん気合入れ過ぎだろ。

ゴレムさんの口ぶりからすると、そうおかしなことでもないような雰囲気ではあるが。


「あー…そのな? うん。お姫さんの相手がお前って聞いてな?」

「?」

「一応安全確保のために回されたっていうやつだったりする……」

「……」


何ですと?


「俺、関係ないですよね……?」

「いや、そのなぁ。……大きな声じゃ言えないんだけどな。被害者、増えたんだわ」

「!?」

「お前が予測してた通り、被害届け出してた冒険者が、な?」

「はっ? 大事じゃないですか……!」


ティナの時と言い、ギルド後手に回りすぎじゃねー!?

ティナの安全確保のためだけの人数と思いきや、俺の護衛まではいってるとか聞いてない。

超聞いてないし!


「ばっ……声がでけぇよ。デリケートな問題なんだからもうちょい声抑えろって!」

「んなこと言われても……懸念事項増やしてどうするんですか。ほんと勘弁してくださいよ」

「あー、うん。なんかなー、すごい根の深い話でなー……?」


言いよどむゴレムさんに、俺の脳裏に嫌なものがまたかすめた。

あんだけずさんな手口なのに捕まらないどころか口封じに動けちゃうってそれって……。

なんか後ろ盾いるだろ……。


「また貴族絡みですか……」

「! よくわかったな!?」


いや、分からん方がおかしいだろ!?

この国の貴族は本当にろくなことしてないね!?

どうせ逃げる手助けをする代わりに、貴族のいいなりに冒険者をはめたり冒険者の情報売ってるとか言う小悪党とかなんじゃないの?

そう思い口に出すと、ゴレムさんは何故かコクコクと首を縦に振っている。


「結構捕まえる寸前まで行ってたのに行方不明になってな。そのあとの足取りが綺麗に消え過ぎってことでギルド内部でも問題になってるんだわ。で、そのあとに証言者が被害にあったもんだから、被害にあった奴を中心に護衛しつつ捕まえられるヤツが見回りしてんだよ」


うん。テンプレだね!

ギルド内部にも裏切者がいるんじゃないかな!


「でも、このメンバー結構豪勢ですよね?」

「あ? ああ、元々の案件自体がでかいからな」

「主犯一人でこの人数を襲うんですか?」


大人数というほどではないが、頭数としては二ケタ近い。

ティナの荷物も特に服以外は持ち出すものはないらしく、荷馬車も小ぶりで全員が食料だけ自分で確保しているような軽快さだ。

速度重視で大人数ではない分確かに襲いやすくはあるが、倍以上は用意しないと手練れ含むこの人数は襲えないと思う。

一番守られなきゃいけないティナがそもそも一番強そうだし。


「まあ行き過ぎな量だとは思うんだが念のためだとさ」

「なるほど」


それくらい親父さんが重要な人物である、とギルド内で告知する意味もあるのかもしれないな。

俺はそう思ってこの話を終わらせることにした。



……フラグが立ってるとか思ってない。

思ってないから!!!





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