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閑散としている昼間のギルドによって、オーク分のクエストは清算した。

ぶっちゃけオークすら相手にならなかったので他のランクの低い敵のクエストはやるまでもなさそうということで、ティナちゃんが手持ちのカードで精算したり、常駐依頼なので受けるまでもなかったものはやらないことにして一息ついた。

まあ、昨日の周りの雰囲気だとそもそもまともなクエストになるかも怪しいし。


その後はギルドで時間を潰す必要もなかったのでティナちゃんは家に戻り、俺はとりあえず街の中を散策することにした。

オークの清算はなかなかの金額で財布も潤ったし、ぶっちゃけ隣国に行くとなると野営の準備とか食料の確保などが必要になる。

勿論ある程度カード化することで荷物は減らせるのだが、何分カード化すると物量が減るので多用すると食料がものすごく割高になる。

ということで俺はのんびりと持ち歩ける程度の携帯食や、日持ちしそうなものを見て回ることにしたのだった。


ちなみに親父さんはいつでもどこでも動けるように食料は持っているそうな。

カード化ってその辺が便利だよね。

魔物を倒した時以外のカード化には専用のスキルと職業が必要だそうで、誰もが出来る訳じゃないってところもポイントだそうな。

ちなみに俺に物品のカード化スキルはありません。

魔物退治に関しては神様が優遇してるって事で正しいんだろうなたぶん。


そんな風に本当にのんびり店巡りをしていると、大通りの広場で声を掛けられた。


「ねぇ、そこの貴方」

「はい?」


休憩がてらベンチに座っていたのは俺一人。

目の前に立たれて声を掛けられたので相手は俺に間違いはないのだが、何故声を掛けられたのかわからず困惑する。


「ちょっと聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「はあ」


ストレートに伸びた髪は、光に反射してつやつやしている。

ちょっと勝気気味に吊りあがった眼差しは、好きな人は好きそうな感じの割合美人タイプの女性だ。

背格好は冒険者という感じで、ティナちゃんもつけている軽鎧に近い服装。

無駄に反らされて主張されている胸はなんなんだろうとは思うものの、おかしいってほどの恰好ではない。

だが、俺は声を掛けられる理由が思いつかないのでなんとなく引き気味に対応する。


「貴方、ティナと一緒にいた人よね?」

「ティナちゃんの知り合い?」

「ええ」


にっこりと笑って横に腰かけられる。

座っていいとか言ってないんだけど、そもそも訊くつもりすらないなこの子。

というかこの手の女性はなんか見た覚えがあるぞ。

あれだな、すごく自分に自信があって自分のことは何でも言うこと聞いてくれるとか思ってるタイプの人だ。


「ソロしかしないティナが男の人とペアを組んだって聞いて、ちょっと話を訊いてみたくなったの」

「はあ……」

「あ、私、ティナと同じランクの冒険者なの。よろしくね、期待の新人さん?」

「期待とか言われても特に何もしてないけど」

「あら、ギルドでは有名よ? あのティナを口説き落とした、って」

「……」


個人保護法はどこいったんでしょうね。

っていうかそれ、何の期待をされてる新人なんだよ…。


「みた感じ、強そうじゃないわねー」

「……」

「やっぱりあれ? 手っ取り早く強くなるために組んだって事かしら?」


自分に自信があるのか、上目づかいで見られても俺には困惑しかない。

うーん、スタイルはまあ、好みの方なんだけども。

というかあれだな、人と獣人の違いはあれどわりとティナちゃんと似たような感じのタイプではあるな。

性格が違いすぎて俺の好みからは外れているが、容姿だけなら割合好きなタイプだと思う。

容姿だけならね……。


なんでこの子、ぐいぐいと上半身寄せてくるんだろうか。

これでもかと胸を主張して何を聞きたいんだろうねー……ほんとにねー……。

もうなんかこの時点で嫌な予感しかしない。


「それとも貴方、ティナと組めるほど強いの?」

「さあ?」


何故か半歩寄ってこられるので、半歩ずれる。

強さ聞いて、それからどうするんだろうね。

もうほんと嫌な予感しかしないよ。


「ええ? どっちよ」

「どっちでもいいだろ?」

「あら、よくないわよ。貴方はどっちだろうと思って、みんな興味津々なんだから」


どっち……?

ってなんの二択だよ?

後みんなって誰のことですかね。


「弱いなら、あの子を誑かしてるんでしょ?」

「たぶら……」

「強いなら、あの身体が好みなんだろうと思って」

「……」


身体が好みって突然何言ってんだろうこの人。

宇宙人だろうか。

あ、異世界人だった。


「え、ちょっと、どこ行くのよ!?」

「……」


なんでか思い込んでるらしき女性を前に、俺は喋るのをあきらめた。

そのまま無言で放置し、足早に通りを抜けていく。

慌てたような声は追いかけて来るが、そもそも歩くのが遅いのかあっという間に声は聞こえなくなった。


「なんだあれ……」


なんていうか、うん。

この国そういえば人至上主義なんだったっけ?

ギルドでティナちゃんに声かけてたやつらはそんな雰囲気じゃなかったけど、あの女性を見る限りあの対応はおかしくないのかなって感じがした。

まあ、あの女が単純に思い込みの激しいだけの変な人って可能性もなくはないが、言いたいことは要はアレだろ。

弱いなら寄生してる。

強いなら妥協してる。


ティナちゃんが獣人だから。


「……」


本当にくそだな、この国。

街にはいろんな人がいるし、いろんな考え方があるのはわかってるけど、あれが普通の可能性があるだけでもうダメだろ。

明らかに俺を誑かす気満々で声かけてきてる時点でなんか別の意図すら見えて来るし、逃げる必要なくても俺隣国逃げたいわ。

明日、親父さんに相談しよ……。




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