1
(転生したら何が欲しい?)
妄想の中で考えたことはそれなりにある。
まずはチートらしく、相手のことがわかる能力が欲しい。――鑑定眼。
当然自分も強くならなきゃいけないので、手っ取り早く強化したい。――成長補正。
怪我をした時や仲間のサポートをする能力は必須だろう。――聖属性魔法。
モフモフは正義だ!――テイム。
とりあえず強くなりきるまで邪魔はされたくない。――隠蔽。
そこまで想ったところで、ふわりと身体が浮く感触がした。
(欲があるのかないのかわからないね)
十分欲があるような気がするけれど、その"声"はそう言って笑った。
じゃあいってらっしゃい。
そんな声に、俺はひとつだけ頷いた。
☆
――――で。
草原である。
「なんだここ……」
と定番に呟いてみるが、これはもしかしなくてもあれじゃないでしょうか。
転生っぽい。
すごく定番っぽい。
とりあえず自分の能力が知りたいのだがどうやったらわかるのだろう。
ぐるり、と見回せば見えたのは小さなリュックサック。
どう見ても自分のっぽいので拾い上げ、中を探ってみると小さなカードが入っていた。
「……? なんだこれ」
普通リュックサックと言えば、野営道具とか食糧とかあるだろう。
まさかのカード一枚。
お金っぽいものすらない鞄に首を傾げつつ、カードをじっと見つめると表面に文字が浮き上がってきた。
「おー。ハイテク?」
-Status Open-
どうやら英語だったので、触ってみる。
そうするとカードが少しだけ大きくなって、サイズ的にはノートぐらいになった。
そうしてだらだらとステータスが表示される。
「サイズ変幻自在~♪」
面白い。
ちなみに内容は以下の通り。
Name -カズヤ・オトナシ- (音無一也)
Age 17
Lv 1
Job -nothing-
Status -閉-
Skill
聖属性魔法 Lv1
テイム Lv1
Unique Skill
鑑定眼
成長補正
隠蔽
Bless
創生神の親愛
「ほほう」
なんというか、ほぼ希望通りの気がする。
名前はそのまんまで年齢もそのまんま。顔は見えてないけど手足の色は変わってないし、名前が変わってないからおそらくそのまま。
スキルにはレベルがあるが、ユニークスキルにはレベルがない。ユニークはどちらかというとパッシブスキルっぽいのかな?
ステータスは閉じてある表示だが、クリックしたらなんか細かく書いてあった。
ほぼ1なので省略。あ、Intだけ30ぐらいあってMPも3桁あった。HPは2桁でしかも前半。もやしっこなめんな。
とりあえず確認してもどの数値が平均なのかはわからないので見なかったことにする。
弱すぎるかもしれないので見ない方がきっと精神的には良い。
後持ち物っぽい欄があったんで確認したら旅人の服。剥ぎ取りの短剣。って書いてあった。
そういえば今着てるのなんか貫頭衣みたいなすげぇ質素な服だわ。ズボン履いてるから気にはならないけど防御力は皆無。
短剣はきっとその名の通り剥ぎ取り用なんだろう。
なんていうか本当に初心者ってスタイルですねわかります。
「とりあえず攻撃手段っぽいのは―――……魔法、だけ、か?」
まぁ剣を振り回せと言われても出来るわけないんだけど。俺剣道経験ないし。
一応合気道は使えるので最悪体術で倒すとか出来ないかなー…危ないか。
出来る気がしない。やっぱ魔法で倒そう。
ところで聖属性魔法に攻撃ってあるの?
「使えるのはヒール(小)とホーリーボール(小)、みたいだな」
まんまです。
とりあえずサーチアンドデストローイしてレベル上げが無難なきがします。
で、結局現在地はいったいどこなのだろう。
「金はないわけだしー…とりあえず目の前に街道が見えるから、道を歩きつつ金目になりそうなものを攻撃だな、うん」
だてにチート転生ものは読んでいない。
とりあえずはウサギとか、食べ物になりそうなものを倒しつつ進もう。
そう決心して俺は道を歩き始めた。